使いやすさと低価格が魅力のAIチャットボット「Tebot」や企業内知識応答AI「ShareMind」を主力製品にAIシステム開発ベンダーとして注目される株式会社アノテテ様。
今回は代表取締役の岸本さんにお話を伺い、アノテテ様の事業と「Tebot」の魅力、そして多くの社員がAIを使いこなし「営業の雑務工数0」等の業務効率化を実現したアノテテ様のAI活用の秘密にRadineer生成AI事業担当の加藤が迫ります。
異色のキャリアからアノテテ設立へ
左:Radineer加藤、右:アノテテ岸本さん
加藤:
まず最初に岸本様ご自身のご経歴や、株式会社アノテテ設立に至った具体的な経緯や背景についてお伺いしてもよろしいでしょうか?
岸本さん:
はい。実はキャリアの最初はAIとかまったく関係なくて(笑)。
大学卒業後、内定していた会社があったんですけど、ひょんなことから海外で飲食店の立ち上げを手伝ってました。
そこで約1年半から2年弱ほど、立ち上げの手伝いをしていまして、自分で看板やFacebookの画像など、デザイン系のクリエイティブな作業を、分からないなりにも独学で行っていましたね。
日本に帰国した際、どうしようかと考え、web系のクリエイティブを学べる社会人向けの学校に半年ほど入りまして、そこで声をかけていただいた弊社の親会社であるGPオンライン(Web制作会社)に入社しました。
加藤:
本当にAIと無縁過ぎて驚きました(笑)
GPオンライン様はweb系とのことでしたが、AIに少し近づいたとはいえ、まだまだAIとは縁遠いですよね。
そこからどのようにしてアノテテ様の設立に?
岸本さん:
GPオンラインではプログラマーではなく数年は営業のプランナーで働いていたんですけれども、新規事業の立ち上げの話を会社から貰いました。
丁度その頃にGPT-2等のビジネス転用できるレベルの生成AIが登場したことと、AIソフトウェアの研究と開発を行うアイメソフト様と元々ご縁があったので、社内ベンチャーという形でAI事業に取り組んでいこうとなったのがアノテテ設立の経緯になります。
「Tebot」について深堀り!
加藤:
アノテテ様は元々フルスクラッチでのAI開発や導入支援を行っていたかと思うのですが、改めて「Tebot」等の自社製品を作ろうとなった背景はどのようなものがあるのでしょうか?
岸本さん:
最初はスクラッチ開発といっても、AIモデル自体を作るよりは、ビッグテックのAPIを使って使いやすいUIやシステムを構築するのが基本でした。
ただ、これだけだとAI技術があまり広まらないと感じ、もっと使いやすく提供できる方法はないかと考え、お安いチャットボットである「Tebot」や、企業内知識応答AIの「ShareMind」のようなフロントエンド製品を揃えました。
そこで興味を持って「もっと高度なことをしていきたい」となったお客様に関しては受託の提案もさせてもらうみたいな、弊社をもっと知ってもらうためのきっかけとして製品を作っていったという感じですね。
加藤:
世間的なAI浸透とある種のマーケティング戦略の一環が背景だったんですね。
続いて、「Tebot」の強みについても教えていただいてもよろしいでしょうか。
岸本さん:
一番分かりやすい強みは、相場のAIチャットボットの半額程度で導入できる価格設定です。
また、親会社がWeb制作会社であるため、UIの使いやすさも強みで、多くのお客様からも良い評価をいただいています。
安くて使いやすい点が表面的な違いとして分かりやすいかと思います。
岸本さん:
また、最近はすべて生成AIの回答に任せるチャットボットが多いんですが、弊社設定された回答をマッチングさせる認識型AIも使用するハイブリッドなシステムになっていることも強みです。
生成AIの回答の不確かさに不安を感じられる企業様がいらっしゃるんですが、そのような企業様にも対応できるようになってます。
加藤:
なぜ、これほど高度なシステムを相場の半額で実現できたのでしょうか?
岸本さん:
一番は、広告費を他社と比べて全然使っていないためです。
また、アイメソフト様のようなパートナーに入っていただいているため、初期構築費が抑えられている部分があります。
さらに、全て自己資本で事業を行っているため、お客様が一番手に取りやすい価格設定ができています。
自社内で開発と販売が完結できていることが、価格を抑えられる理由です。
加藤:
「Tebot」を導入された企業様の成功事例や、お客様が特に価値を感じられている点を教えていただけますか?
岸本さん:
もちろん、先程申し上げたAIチャットボットとしての使いやすさと安さには好評をいただいているんですが、それだけでなくマーケティング分析にも使えるという点を評価してくださる企業様は多いです。
チャットボットに期待されることとして、お問い合わせ数や電話応対数の削減、業務の自動化・効率化がありますが、これらは当たり前に達成される部分です。
それだけでなくチャットボットを設置することで、お客様の要望、疑問、不安といった生の声が自動的に溜まっていきます。
アンケートやソーシャルリスニングと比べてノイズが少なく、自社サイトに興味がある人の本当の悩み事が集まります。
これを経営やマーケティングのインサイトデータとして活用できることがかなり嬉しいと。
加藤:
収集したデータも見やすく出力できたりするんですか?
岸本さん:
はい、全てのデータを出力可能です。
現状AIで答えられない質問とかも把握できます。
加藤:
めちゃくちゃ便利ですね!
すごいなあ(笑)
岸本さん:
ぜひRadineerさんでも導入の検討をお願いします(笑)
「営業の雑務工数ほぼ0」。アノテテが実践する驚きの社内AI活用
加藤:
AI開発の最前線を走るアノテテ様では、社内での生成AI活用も推進されているのでしょうか?
岸本さん:
そうですね。AIをはじめ、ITツールの活用は全職種で推進しています。
加藤:
全職種ですか!
差し支えなければ、具体的にどのように活用して、どんな効率化が実現できたか、教えていただけますか?
岸本さん:
例えば、広報活動の一環であるブログ運営では、記事の設計や本文のドラフト作成にAIを活用しています。
概要は人間が作りますが、設計やドラフトはAIに任せ、それに対して人間が手直ししてオリジナルの情報を加えています。
この仕組みにしてから、ブログ運営に必要な工数が分かりやすく半分になりました。
以前は2名体制だったのが1名でできるようになり、削減したリソースはX(旧Twitter)などの他の業務に回しています。
岸本さん:
また、まだ試験中ですが、システムのテストもAIで自動化できています。
例えば、「Tebot」のリリーステストでは、AIにテスト項目を作らせ、UI操作やプログラムのテストを一度行わせます。
それを人間がダブルチェック、トリプルチェックすることで、バグが少なく抜け漏れのないリリースが可能です。
プログラム上のバグ精査は人間よりもAIの方が精度が高いですね。テスト工数も現状で半分くらい削減できる見込みです。
岸本さん:
営業に関しても、AIと直接絡むというよりITツール(CRMなど)の活用ですが、ワークフローを組んで営業の雑務がほぼゼロになりました。
資料請求への自動サンクスメールや商談後のメール連絡などを自動化していまして、これにより、営業担当は人対人の商談に注力できるようになりました。
資料請求発生時の対応スピードも上がるため、商談化の確率も上がっています。
インタビュアー:
雑務がほぼゼロはすごいですね。
AIにしろITツールにしろアノテテ様ほど活用されてる企業様って少ないのかな、なんて考えたんですけど、社内でAI活用を浸透させたコツとかってあったりするんでしょうか?
岸本さん:
弊社の場合は、結構自然な流れで導入が進んでいきましたね。
情報収集や新しいもの好きな「アンバサダー」のような人材を立てて定期的に情報を共有していく方法をユニット単位で取っていました。
現在も弊社では毎日の朝礼で新技術の共有をしていますね。
大規模組織でも同様に、ユニットごとにアンバサダーを置いて成功体験を積み、それを他のユニットに広げるのが有効です。まずは小規模、例えば個人レベルから始めて、社内報などで露出していくのが良いかと思います。
アノテテが考えるスムーズな「AI導入」の考え方
加藤:
企業がAIを導入するためには、「AIが変なことを言わないか」ですとか、著作権等の倫理的なリスクへの懸念によって導入の足が遠のいているような企業様は多くいらっしゃいます。
実際のクライアント様に「Tebot」等のAI導入をする際に、リスクを警戒している企業様ともお話しする機会があるかと思いますが、アノテテ様ではどのようにご指導をされているのでしょうか?
岸本さん:
AIの活用は「リテラシー」の向上にかかっています。
なので、リスク云々を考える前にまずは、ChatGPTでも何でも良いので「使ってみてください」というお話をしています。
AI活用したいと言われるお客様でも、ChatGPTを触ったことがない方はまだまだ多いです。
中には「(活用はしたいけど)何に使ったらいいか分からない、何を質問したらいいか分からない」とおっしゃる方もいます。
そういう方には、「AIに何を質問したら良いか聞いてみてください」とアドバイスしています。
まずは触ってみるというマインドセットが重要です。
このマインドセットを持った上でセキュリティ面ではAIは責任を取ってくれない、という抽象的な理解をして、責任の所在をどうするかを考えていくことがリスクの回避につながると思っています。
まあ企業規模によってアプローチは変わるとは思いますが。
小規模企業はまず使ってみて、便利な使い方とリスクを自分で学ぶのが良いと思います。
大規模企業に関しては、大変だとは思いますが、ガイドラインを定めてしっかり社員教育から始めるべきだと思います。
加藤:
なるほど。
AIについてまずは触って、理解を含めて、その上でリスクについて考えて、各企業に適した対策を練っていく…確かにこれなら安全性を担保しながら導入もスムーズにできるイメージは湧きますね。
岸本さん:
あと言いたいのが、よくリスクとして挙げられるAIのハルシネーション(AIが事実と異なる内容を回答する現象)ってあるじゃないですか。
実はあれってAIの短所ではなくて、むしろAIの長所だと思うんです。
AIの最も良い使い方は、正解がない「クリエイティブ」な分野です。アイデア出しとかその辺ですね。
ハルシネーションも、「AIの創造性の一環」と捉えていただければ、より良く向き合えると思います。
人間も嘘をつけるからこそ創造性がある、それと同じだと考えてもらえたら最高ですね。
加藤:
なるほど!その発想は私にはなかったです。
「ハルシネーションはAIの創造性の一環」。
目から鱗が落ちました。(笑)
「すべての企業がAIを活用する世界」を目指すアノテテの展望
加藤:
アノテテ様が4月に発表されたプレスリリースで「日本での普及は他国に比べて大きく遅れて」いるとのご意見を拝見しました。
最後にアノテテ様としては具体的にどのようなアプローチでAIを浸透させていくのか、今後の展望を伺わせてください。
岸本さん:
そうですね。
AIは、どの企業にとっても避けて通れない技術になってきています。
早めにAIを導入することで、AIを使いこなす経験が蓄積され、「どのようにデータを準備すればよいか」「AIがどこまでできるのか」といったノウハウが身につきます。
しかし、「AIは難しい」「導入に費用がかかる」というイメージが強いのも事実です。
そのため弊社では、AIの導入や活用をもっと手軽にできるよう、できるだけハードルを下げたサービスを提供しています。
この転換期を乗り越えるには、企業が自社のデータを整備し、社員全員がAI活用の方法を身につけることが重要です。
アノテテがどのような企業様でも簡単に使えるサービスを提供し、日本企業のAI活用をサポートしていければと思います。
「AI活用は難しい」「コストが高い」――こうしたイメージを覆すのが、アノテテ様の「Tebot」をはじめとした製品と、社員一人ひとりが日常業務のなかで積極的にAIを活用する企業文化です。
「まずは使ってみる」ことから始め、小さな成功体験を重ねながら、社内に自然な形でAIを浸透させる。このアプローチこそが、AI時代を生き抜く鍵になるでしょう。
「どんな企業もAIを活用する世界」の実現を目指すアノテテの今後の展開にますます期待が高まります。
株式会社アノテテ様:https://anotete.co.jp/
岸本さんのX:https://x.com/anotetewataru