皆さんこんにちは。
年々進化する情報社会で、すっかり有名になった技術の一つに「VR」があることは、言うまでもないでしょう。
今回はそのVRの医療分野での活用事例をいくつか紹介、解説していこうと思います。
ジョンソン・エンド・ジョンソン:名医が手術しているシーンをそのすぐ隣に立って体験できるVRトレーニング
これまで、医療従事者の教育において名医の手術現場の見学は大きな役割をなしてきました。
しかし、手術室の許容スペースにはやはり限りがあり手術の邪魔になっては元も子もないのでなかなか大人数の見学は難しい状況でした。
そこで、ジョンソン・エンド・ジョンソンは手術室に360°カメラを導入することでVR空間に名医の手術シーンを再現した医療研修VRを開発しました。
このVRによって実際に手術室にいなくても遠隔地でその手術室にいるかのような臨場感のある見学が行え、より効率的で効果的な医療研修が行えることが期待されています。
スタンフォード大学研究チーム:VRによる共感力強化で自閉症・学習障害の児童を支援
VRの様々な状況を再現できる能力に注目し、人々の共感力強化に役立つということの証明にスタンフォード大学研究チームが取り組んでいます。
VRでホームレスの人の状況を設定し100人超の被験者がその状況を体験しました。
そして体験から2週間後、4週間後、8週間後の共感レベルについて調査を行い、被験者たちは強い共感を示しました。
この研究からVRによってさまざまな状況や人々の疑似体験をすることで共感を得て、優しい共感の社会を目指すことができるといいます。
またこの共感力強化が期待されるVRを利用することで自閉症や学習障害の児童の脳のスキル強化の研究がなされています。
この研究は認知科学に基づきバーチャル環境での大きな感覚や感情の変化によって得られる脳の学習効果をバーチャル環境外でも持続させることが可能と考えられています。
ニューヨーク州のHoward Gurr医師:摂食障害の治療にVR導入
VRは現実に近い状況だけでなく現実を超越した状況の設定、体験も可能です。
ニューヨーク州のHoward Gurr医師は、摂食障害患者への食事に対する拒絶、不安のイメージの改善に取り組んでいる中、仮想現実に着目しました。
VRで摂食障害を克服、9割以上で効果 プログラム化する企業も
VR空間内でまず、ビーチなどの落ち着いた環境でリラックスを促し、その後に飲食店などの患者が不安やパニックになる環境に連れていき、イメージの払拭、改善に取り組んでいます。
このVRの導入前は患者に言葉で自分から飲食店など不安を感じる場所のイメージを促さなければならず、言葉だけでは難しい部分がありましたが、VRの導入によりより鮮明なイメージを手に入れることができ、またそのことがすべてオフィスなどの手軽な場所で行えるようになります。
実際にはない状況のVRイメージなので最初は現実を超越していてもだんだんと現実に近づける作業が必要でありそうすることで患者に正しい自信を促す効果を出しています。
この治療で9割の患者は効果を実感し、自己評価やモチベーションの向上につながっています。
バーゼル大学 SpectoVive:VR外科シミュレーター
VRでは、実際そこにはない物体をあるように見せることができます。
バーゼル大学の研究ではいわゆる人体模型を空間に作り出し、手術のシュミレーションができるVR外科シミュレーター『SpectoVive』を開発しています。
Surgeons Can Now Prep for Surgery in VR
このシュミレーターの特徴はVRであることを生かした自由な解剖ができる点です。
回転や移動、拡大、縮小だけでなく好きな部分を切断したりX線、CTスキャンなどもすぐに行えます。
このシュミレーターで大人数でも具体的で明瞭な手術の計画が立てられるようになっています。
Limbix:メンタルヘルスの治療(VRセラピー)
VRはメンタルヘルスの分野でも注目されており、アメリカ、カリフォルニアのLimbixという会社ではうつ病や不安障害、依存症などの精神疾患の治療にVRを導入しています。
このVR治療では不安障害を例にとると患者の不安をレベル化し、そのレベルにあったシチュエーションをVR空間で体験し、その状況における不安や、感情の起伏をセルフマネジメントする能力を養っていくなどの治療がなされています。
やはり利点は必要なものがVRゴーグルのみであることや昨今の世の中では心の問題が多くニーズが増えていることでVRのメンタルヘルス分野への導入に期待が高まっています。
デューク大学:VRを利用したリハビリシステム
二度と歩けるようにはならない、といわれた患者がそうでない未来を証明する時代が来ているようです。
デューク大学の研究グループは神経科学に基づき、脊髄損傷、脳卒中などを抱えるの患者が機動性、強さ、自立を取り戻すことができるようにVR空間で足を動かすための脳の働きを練習し、その動きを視覚化することによって実際にロボットの足を動かすことができるようになったり、さらには自身の足を動かせるようになった例もあるといいます。
また、長い間ベットの上や車いすでの生活を余儀なくされている患者などは、次第に歩行の仕方、足の動かし方を忘れるのでリハビリにとても時間がかかるところをベットで動けない状態からVR歩行訓練を行うことで感覚を保持し、リハビリにかかる時間を大幅に減らすことができるといいます。
ヘンリー・ロー:長期入院の子供向けVRゲーム
VRはゴーグルをかけるだけで別の空間にいるような臨場感が味わえますので長い間病院で過ごさなければならない子供などに開放的な経験を味わわせる方法としてVRゲームに注目した人物がいます。
開発者のヘンリーは自身の子供時代のリンパ腫を患った経験からこの発想をしました。
ヘンリーとその相棒のジャニスはFarmooo(ファームー)というVR空間で牧場を運営するVRゲームを開発しました。
このゲーム内の空間はとにかく広く開放感にあふれており病院ではなかなか味わえない経験であり、開発者の化学療法を受けている子供たちの気を紛らわせ、心に感動を与えたいという思いが詰まっています。
まとめ
たくさんの事例に共通して言える利点はやはりVRの「携帯性」であるでしょう。大がかりな装置や重機などを必要とせずVRゴーグルとデータを格納している保存媒体があればいつでもどこでも利用することができます。
今後VR業界がさらに盛り上がってコスト面の問題がより軽くなっていけば様々な分野にVR技術が導入され活用される未来が現実化していくことでしょう。