プロンプトエンジニアリングは、ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)を使う際に必要となるスキルのことを指します。
ChatGPTを使う人が世界的に広がりつつある今、このスキルを持っている人材が必要とされています。
そこで今回は、プロンプトエンジニアリングについて詳しく解説していきます。役割やその重要性、そして注意点なども紹介するのでぜひ参考にしてください。
プロンプトエンジニアリングとは
プロンプトエンジニアリング(Prompt Engineering)は、OpenAIの言語モデルであるGPT(Generative Pre-trained Transformer)を使用して、ユーザーの意図や要求に対して適切な応答を生成するためのプロンプト(指示文)の設計や調整を行うプロセスです。
GPTは大量のテキストデータを学習して生成された言語モデルであり、一般的な文章の生成や質問応答などのタスクに使用することができます。
しかし、GPTは具体的な指示や制約がない場合には多様な応答を生成する傾向があります。
プロンプトエンジニアリングでは、ユーザーが期待する応答を得るために、適切なプロンプトの設計や修正を行います。
これは、ユーザーが与えるテキストの形式や内容、モデルへの指示の方法などを調整することで行われます。
例えば、ユーザーが「宇宙について教えてください」という質問をした場合、単にこの質問をそのままモデルに投入すると、ランダムな宇宙に関する情報が生成される可能性があります。
しかし、プロンプトエンジニアリングを行うと、「宇宙について教えてください」という質問に対する的確な説明や情報を生成するような指示文を作成することができます。
プロンプトエンジニアリングは、ユーザーが望む応答を容易に生成するための手法として、GPTの利用者や開発者の間で広く採用されています。
大規模言語モデルとは
大規模言語モデルは、膨大な量のテキストデータを用いて訓練された、自然言語処理(NLP)のタスクにおける高度な言語理解と生成能力を持つモデルです。
これらのモデルは、従来の手法よりもはるかに大規模なデータセットと計算リソースを使用して訓練され、多様な文脈や表現を理解し、自然な文章を生成することが可能です。
大規模言語モデルの代表的な例としては、OpenAIのGPT(Generative Pre-trained Transformer)シリーズやGoogleのBERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)があります。
これらのモデルは、事前訓練と呼ばれるプロセスを通じて、大量のテキストデータを学習しています。
その後、特定のタスクやドメインにおいてファインチューニングが行われ、具体的な任意のタスクに対して利用されます。
大規模言語モデルは、機械翻訳、質問応答、文章生成、要約、感情分析などのさまざまな自然言語処理タスクで幅広く活用されています。
人間の文章に近い表現を生成し、高度な言語理解を提供することが特徴であり、自然言語処理の分野において重要な技術の一つとなっています。
プロンプトエンジニアリングの役割と重要性
プロンプトエンジニアリングには以下のような役割と重要性があります。
応答の制御
GPTなどの言語モデルは非常に柔軟でクリエイティブな応答を生成する傾向があります。
しかし、特定のドメインやコンテキストに沿った具体的で適切な応答を得るためには、適切なプロンプトの設計が必要です。
プロンプトエンジニアリングは、ユーザーの意図に合致する応答を生成するために、モデルに具体的な指示や制約を与えることができます。
応答の品質向上
プロンプトエンジニアリングによって、ユーザーが望む形式や内容の応答を生成する確率が高まります。
適切なプロンプトを使用することで、冗長な回答や不適切な情報を排除し、正確で適切な情報を提供することができます。
これにより、ユーザーエクスペリエンスが向上し、情報の信頼性や有用性が高まります。
モデルの制御と調整
プロンプトエンジニアリングは、モデルの振る舞いを制御し調整する手段としても利用されます。モデルの出力を制限したり、特定の文体やトーンで応答を生成させたりすることが可能です。
また、特定の情報源やデータに基づいて応答を生成させることもできます。
センシティブなトピックの取り扱い
GPTは一般的な文章生成のために訓練されており、時にはセンシティブなトピックや機密情報に関連する応答を生成することがあります。
プロンプトエンジニアリングは、倫理的な観点からも重要であり、センシティブなトピックに対して適切な制約を与えることができます。
プロンプトエンジニアリングは、言語モデルの応答の品質とコントロールを向上させるための重要な手法です。
プロンプトエンジニアリングで ChatGPT を最大限に活用する方法
具体的で明確な質問や指示を与える
具体的で明確な質問や指示を与えることは、ChatGPTの応答の品質を向上させる重要な要素です。
具体的な質問や指示は、モデルに対して明確なタスクや情報の要求を伝えるために必要です。
たとえば、”今日の天気を教えてください”や”最新の映画のレビューを教えてください”のような具体的な質問や指示を使うことで、モデルは的確な回答を生成する傾向があります。
また、特定の情報を求める場合には、予算や特徴に関する具体的な指示を与えることも重要です。
具体的で明確な質問や指示は、モデルに適切な情報を提供し、ユーザーの要求に合致するような応答を生成するために不可欠です。
応答の形式を指定する
応答の形式を指定することは、ChatGPTが生成する応答のスタイルやトーンを制御する手法です。
たとえば、「簡潔に答えてください」と指示することで、簡潔な回答を促すことができます。
また、「詳しく説明してください」と指示することで、より詳細な情報を含んだ回答を得ることができます。
応答の形式を指定することにより、モデルの出力を特定のスタイルやトーンに合わせることができ、ユーザーの要求や好みに適した応答を生成することができます。
応答の長さを制御する
応答の長さを制御することは、ChatGPTが生成する応答の文の数やトークン数を調整する手法です。
応答の長さを制御することで、情報の過剰な提供や冗長な回答を避けることができます。
最大トークン数や文の数などの制約を設定することで、モデルの出力を短くしたり、特定の範囲内に収めることができます。
たとえば、「最大で3つの文で回答してください」と指示することで、短くまとまった回答を得ることができます。
追加情報や文脈の提供
追加情報や文脈の提供は、ChatGPTに対して必要な情報を与えることで、より正確な応答を促す手法です。モデルには十分な文脈や背景情報が与えられないと、適切な回答を生成するのが難しい場合があります。
追加情報や文脈の提供は、ユーザーが求める情報や要件を明確に伝える手段です。
たとえば、特定の製品やサービスに関する情報を求める場合には、ブランドやモデル名、利用目的などの具体的な情報を与えることで、より的確な回答を得ることができます。
文脈の提供は、前提条件や関連する事実、前回の会話の要点などを明示することです。そのため、モデルは文脈を考慮して適切な応答を生成することができます。
プロンプトの反復と調整
プロンプトの反復と調整は、ChatGPTの応答の品質を改善するために繰り返し行うプロセスです。最初のプロンプトで望ましい結果が得られなかったり、意図しない応答が生成された場合には、プロンプトを修正して再試行します。
プロンプトの反復と調整にはいくつかのアプローチがあります。
例えば、質問の明確化や指示の具体化、文脈の追加、要件の明確化など、プロンプトをより効果的に調整することができます。
反復的なプロンプトの調整によって、モデルの振る舞いや出力の品質を改善することができます。
試行錯誤を通じて、より適切なプロンプトを見つけ出し、ユーザーの要求に合致する応答を得ることが目指されます。
重要なのは、プロンプトの反復と調整を継続的に行うことで、より良い結果を得ることができるということです。
プロンプト初級編
zero-shot prompting
zero-shot promptingとは、いきなり質問を投げる形のプロンプトのことを指します。
そのため事前情報を与えないで返答を求める形でコミュニケーションが続きます。
例えば、「翻訳してください」という指示を含むプロンプト文を与えることで、モデルに翻訳タスクを実行させることができます。
通常の場合、翻訳モデルをトレーニングするには、膨大な量の翻訳データが必要ですが、ゼロショット・プロンプティングでは、「英語の文章をフランス語に翻訳してください」というような指示を含むプロンプト文を与えるだけで、モデルに翻訳を実行させることができます。
ただし、ゼロショット・プロンプティングは完全な予測を保証するものではありません。調整や試行錯誤が必要な場合があります。また、新しいタスクに対しては性能が低下する可能性もあります。
ゼロショット・プロンプティングは、柔軟性と効率性を持ちながら、多様なタスクに対応するための手法として活用されています。
few-shot prompting
Few-shot prompting(フューショット・プロンプティング)は、ごく少数の例やデータを使用して、新しいタスクに対してモデルを学習および調整する手法です。
この方法をとることで、モデルは新しいタスクに対して高品質な応答を生成する能力を獲得します。
例えば、フューショット・プロンプティングでは、数個の例文を用意してモデルに提示し、そのパターンに基づいて応答を生成するよう指示します。
例えば、感情分析タスクでは、「この文章はポジティブですか?ネガティブですか?」というような例文を数個用意し、モデルにそのパターンに従って他の文章を分析するように求めます。
デモの数が多ければ多いほど、適切な回答を出力する確率が高まる傾向にあります。難易度の高いタスクでは、例を5ショット、10ショットと増やして試すことが可能です。
フューショット・プロンプティングの利点は、限られたデータで新しいタスクに対してモデルを適応できることです。
そのためトレーニングデータを大量に用意する必要がなく、手軽に新しいタスクに対応できます。
ただし、フューショット・プロンプティングも完璧な予測を保証するものではありません。少数の例に基づいて学習するため、限定的な情報やパターンに頼る傾向があります。
プロンプト応用編
Chain-of-Thought Prompting
Chain-of-Thought Prompting(チェインオブソート・プロンプティング)は、プロンプトエンジニアリングの一手法であり、応答を生成するために関連する情報を段階的に提示する手法です。
この手法では、会話や文章の流れをシミュレートし、一貫性のある応答を生成することを目指します。
例えば、チェインオブソート・プロンプティングでは、最初のプロンプトで特定の質問や文脈を提示し、モデルがその情報に基づいて応答を生成します。
その後、生成された応答を次のプロンプトとしてモデルに渡し、応答の一貫性を維持しながら会話や文章の流れを続けることができます。
この手法の利点は、会話や文章の論理的な続きを持つ応答を生成できることです。
モデルに一連の情報を提供することで、より自然な対話や文章の生成が可能となります。
ただし、チェインオブソート・プロンプティングでは、前の応答の内容に基づいて次のプロンプトを生成する必要があります。
そのため、前の応答が不正確だったり、意図しない方向に進んだ場合、後続の応答も影響を受ける可能性があります。
Zero-shot CoT
Zero-shot CoT(Zero-shot Chain-of-Thought)は、プロンプトエンジニアリングの手法であり、ゼロショット(事前のトレーニングなし)で会話や文章の一貫性を持った応答を生成する手法です。
具体的には、最初のプロンプトで会話や文章の開始部分を与え、モデルに会話のコンテキストを提供します。
その後、生成された応答を次のプロンプトとしてモデルに与え、会話や文章の一貫性を維持しながら次の応答を生成します。
このように、ゼロショットで連続した会話や文章を生成することができます。
プロンプトエンジニアリングに関連する資格
G検定
G検定とは、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が実施している、「ディープラーニングの基礎知識を有しているかを認定する資格」です。
- AI・ディープラーニングについて基本的な概念や構造を知りたい方
- AIエンジニアになるための最初の一歩を踏み出したい方
- 職場でAI理解の必要性を感じ始めた方
におすすめの資格といえます。
通常年に3回程度試験が行われ、受験資格などは必要ありません。
以下のような出題内容となっているので参考にしてください。
- 人工知能(AI)とは(人工知能の定義)
- 人工知能をめぐる動向
- 人工知能分野の問題
- 機械学習の具体的手法
- ディープラーニングの概要や手法
- ディープラーニングの社会実装に向けて
- 数理・統計
未経験でもチャレンジすることはできますが、難易度は低くありません。
E資格
E資格とは、ディープラーニングの知識やスキルを有しているか認定する AI エンジニア向けの資格です。ディープラーニングの理論を理解し、機械学習やディープラーニングを実装する知識・スキルがあるという証明にも有効です。
毎年2月中旬と8月下旬の2回開催され、受験資格は必要ありません。
先ほど紹介したG検定と比較してE資格はAIエンジニアや研究者など、AIに関連する業務や研究を通じての専門知識が問われます。
合格率は7割程度と高いように見えますが、受験者のほとんどが業務などで普段からその専門的知識と経験を持っている人が前提になっています。
そのため、未経験者の人にとっては取得難易度がとても高いといわれています。
また、試験時間120分に対して問題数は100問程度出題されるため、1問あたりに割ける時間は1分程度です。出題形式は多肢選択式ですが、ハイペースで問題を解いていく必要があります。
Google Cloud Certified – Professional Data Engineer
Google Cloud Certified – Professional Data Engineerは、Google Cloud Platform(GCP)のデータエンジニアリングに関連するスキルと知識を認定する資格です。
この資格は、データエンジニアリングの専門知識や実践的なスキルを持っていることを証明するために設計されています。
- データ処理アーキテクチャの設計と実装
- データパイプラインの構築とオーケストレーション
- データ処理のモデリングと変換
- データストレージとデータウェアハウスの設計
- ビッグデータと機械学習の基礎知識
- データセキュリティとコンプライアンスの実践
試験は実践的なシナリオに基づいており、データパイプラインの設計や実装、データの処理と変換、データストレージ、セキュリティ、パフォーマンスの最適化など、実際のデータエンジニアリングの業務に関連するスキルが問われます。
この資格を取得することで、GCPのデータエンジニアリングにおける専門知識とスキルを証明することができます。
AWS Certified Solutions Architect – Professional
AWS Certified Solutions Architect – Professionalは、Amazon Web Services(AWS)のソリューションアーキテクトに関連する高度なスキルと知識を認定する資格です。
この資格は、AWS上での複雑なシステム設計と展開に関する専門的な知識と経験を持っていることを証明するために設計されています。
- 大規模で複雑なアプリケーションの設計と展開
- マルチレベルセキュリティとコンプライアンスの実施
- ハイパフォーマンスでスケーラブルなアプリケーションの設計
- AWSサービスの最適な選択と統合
- ハイ可用性と耐障害性の設計と実装
- データ移行とハイブリッドアーキテクチャの計画
試験は実際のシナリオに基づいており、AWS上での高度なアプリケーション設計、セキュリティ、パフォーマンス最適化、可用性の確保など、ソリューションアーキテクトの役割に関連するスキルが問われます。
AWS Certified Solutions Architect – Professional資格を取得することで、AWS上でのソリューションアーキテクトとしての専門知識とスキルを証明することができます。
また、AWSベースのアプリケーション設計や展開のプロジェクトにおいて有利になることが期待されます。
Python3エンジニア認定基礎試験
Python3エンジニア認定基礎試験は、Pythonプログラミング言語に関する基礎知識とスキルを評価するための資格試験です。
この試験は、Pythonの基本的な構文、データ型、制御フロー、関数、モジュールなどについての理解を測定します。
- 構文とデータ型: 変数、演算子、条件分岐、ループ、リスト、辞書、タプルなど、Pythonの基本的な構文とデータ型に関する知識を問われます。
- 関数とモジュール: 関数の定義と呼び出し、引数と返り値、モジュールのインポートと利用、パッケージの管理など、関数とモジュールに関する基礎的な概念と操作方法をテストします。
- ファイル操作と例外処理: ファイルの読み書き、例外処理の実装、エラーハンドリングなど、ファイル操作と例外処理に関する基本的な知識を問われます。
- オブジェクト指向プログラミング: クラスの定義とインスタンス化、継承とポリモーフィズムなど、オブジェクト指向プログラミングの基礎的な概念をテストします。
Python3エンジニア認定基礎試験は、Pythonプログラミングの基礎知識とスキルを評価するための認定資格です。
Python3エンジニア認定データ分析試験
Python3エンジニア認定データ分析試験は、Pythonを使用したデータ分析に関する知識とスキルを評価するための資格試験です。
この試験は、Pythonを使用してデータの探索、前処理、可視化、分析などを行うための基礎的な知識と実践的なスキルを測定します。
- データの読み込みと前処理: ファイルからのデータの読み込み、欠損値や異常値の処理、データの変換とクレンジングなど、データの前処理に関する基礎的な知識を問われます。
- データの探索と可視化: データセットの要約統計量の計算、データの可視化、相関関係の分析など、データの探索と可視化に関する基礎的な概念と操作方法をテストします。
- データ分析と統計モデリング: 機械学習アルゴリズムの適用、モデルのトレーニングと評価、特徴量エンジニアリング、モデルの解釈など、データ分析と統計モデリングに関する基礎的な知識を問われます。
- データの可視化と報告: グラフやダッシュボードの作成、結果の解釈と報告、洞察の可視化など、データの可視化と報告に関する基礎的なスキルをテストします。
Python3エンジニア認定データ分析試験は、Pythonを使用したデータ分析における基礎知識とスキルを評価するための認定資格です。
まとめ
プロンプトエンジニアリングについて詳しく解説していきました。
ChatGPTをはじめ、大規模言語モデルを使いこなすうえでは必須といわれるスキルなので、今後AIを使って業務を行っていきたい人はぜひ身に着けてください。
ChatGPTをはじめAIが活躍する分野や業界は今後も広がっていくことが予想されています。
新しいことに挑戦したい人も、さらにステップアップしたいという方もぜひプロンプトエンジニアリングのスキルについて勉強してみてはいかがでしょうか。