2026年の地価と国の方針:転入・空き家・ふるさと納税で読む

2026-10-14 時点の公表資料とこのサイトのデータから書いています。

2026年1月1日時点の地価公示では、市区町村ごとの前年比の中央値は +0.12% でした。上がる街と下がる街の差は大きく、転入超過か転出超過か、空き家率の高低で分けると中央値に差が出ます。国の方針にも、子育て・空き家の活用・税の偏在に関わる項目が並びます。

データが示すこと

市区町村の中央値は +0.12%、街ごとの差は大きい

地価公示(国が鑑定で示す標準的な土地の価格)の地点は25,565、地点のある市区町村は1,527です。市区町村ごとの前年比の中央値は +0.12% で、上がった市区町村は802、下がったのは687でした(当サイトで計算)。地価公示の地点が5つ以上ある市区町村で比べると、上昇の上位は台東区 +18.16%、文京区 +15.71%、品川区 +14.76% など東京都区部と大阪市の区が中心です。同じ条件で下落の上位には石川県七尾市 −4.18%、宮城県気仙沼市 −3.82% が並びます。 データを見る

転入超過の市区町村は、転出超過より地価の伸びの中央値が高い

地価公示の地点が5つ以上ある1,010市区町村で比べました。転入超過(転入が転出より多い)の400市区町村では前年比の中央値が +3.07%、転出超過の608市区町村では +0.12% でした(転入と転出が同数の2市区町村を除く。当サイトで計算)。転入超過の市区町村のうち地価が下がったのは35にとどまります。これは相関で、転入が地価を押し上げたという因果は、このデータからは分かりません。 データを見る

空き家率20%以上の市区町村は、10%未満より地価前年比の中央値が低い。別荘地には上がる例もある

地価公示の地点が5つ以上ある市区町村で比べると、前年比の中央値は、空き家率20%以上の145市区町村で −0.71%、10%未満の206市区町村で +3.21% でした(当サイトで計算)。注意点として、住宅・土地統計調査の空き家には別荘などの「二次的住宅」が含まれます。空き家率の最上位は軽井沢町 70.38%、那須町 61.73%、熱海市 53.35% と別荘地が並び、軽井沢町の地価は +12.49% と上がっています。空き家率が高いことを、そのまま街の衰えと読むことはできません。 データを見る

ふるさと納税の受入額は伸びが鈍化。東京23区はすべて流出が上回る

市区町村の受入額の合計は令和7年度で13,088.2億円です(都道府県分を含む総務省の全国計1兆3,314億円とは範囲が違います)。前年度比の伸びは2024年度の +13.7% から2025年度は +4.5% に縮みました(当サイトで計算)。東京23区は、23区すべてで住民税の控除額が受入額を上回り、差し引きの合計は −1,031.8億円でした(当サイトで計算)。受入額と控除額は対象期間も範囲もそろっておらず、差し引きは自治体の損得そのものではありません。 データを見る

子ども医療費の助成は「18歳まで」がほぼ標準に

通院の助成を18歳年度末以上まで行っている市区町村は1,585(91.1%)です。そのうち所得制限も一部自己負担も無いのは1,217で、調査に行のある1,740市区町村に対して69.9%、18歳年度末以上の1,585に対しては76.8%です(令和7年4月1日時点の国の調査から当サイトで計算)。一方、通院の助成が15歳年度末以下で終わる市区町村は155あり、横浜市・川崎市・仙台市・京都市・広島市といった政令市も含まれます。 データを見る

国が進めていること

骨太の方針2026:地域経済・空き家・税の偏在

地域未来戦略を進め、地域未来交付金を拡充するとしています。国土づくりでは「二地域居住も活用した地域生活圏」を掲げ、防災等に役立つ空き家対策と所有者不明土地等対策を一体で進めます。住宅ローンの金利リスクの普及啓発にも触れています。地方の財政では「偏在性の小さい地方税体系の構築」を明記しました。なお、ふるさと納税という語は本文に見当たりません。

出典:内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2026」(2026-07-21)

地域未来戦略:産業クラスターを3つの計画で支える

2026年度を初年度とする5か年の戦略で、強い地域経済の構築に重点を置きます。「戦略産業クラスター計画」「地域産業クラスター計画」「地場産業成長プラン」の3類型の計画で進めます。当サイトで読んだのは閣議決定を伝える通知で、戦略本文の数値目標や交付金の規模は確かめていません。

出典:内閣官房・内閣府「地域未来戦略の閣議決定について(通知)」(2026-07-21)

住生活基本計画:既存住宅を「市場を通じて」生かす

計画期間は令和8〜17年度です。単身世帯や相続住宅の増加を前提に、既存の住宅・住宅地を市場を通じて最大限に活用するとしています。成果指標には、既存住宅取引とリフォームの市場規模を16.9兆円(2023)から20兆円(2035)へ、住宅需要の高い地域での空家等活用促進区域を4区域(2024)から100区域(2035)へ、子育て世帯の優先入居等を進めるUR団地を100団地・10万戸へ、などがあります。

出典:国土交通省「住生活基本計画(全国計画)」(2026-03-27)

改正空家法:管理不全空家は固定資産税の特例が外れ得る

「空家等活用促進区域」では接道や用途の規制を合理化できます。市区町村長は「空家等管理活用支援法人」を指定できます。放置すれば危険になりそうな「管理不全空家」には指導・勧告ができ、勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が解除されます。

出典:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)」(2023-12-13)

ふるさと納税の運用通知:ポイント禁止・費用の公表・活用基準

寄附に伴って経済的利益を提供する者を通じた募集は、令和7年10月1日以降禁止で、違反すると指定取消しの対象になり得ます。1支払先あたり100万円以上の支払いは、支払先・金額・目的を自治体のサイトで公表します。令和8年の指定対象期間(2026年10月1日〜2027年9月30日)は、寄附金活用可能額が寄附金の100分の52.5以上であることが求められます。

出典:総務省「ふるさと納税制度の適正な運用について(総税市第108号)」(2026-09-25)

地価公示(令和8年):子育て環境と転入が上昇要因の一つ

全国の住宅地は +2.1%、商業地は +4.3%、全用途は +2.8% でした。住宅地の上昇要因として、子育てしやすい環境が整い転入者が多い地域を挙げています。ほかにリゾート地域、半導体工場が進出した地域、物流施設用地も挙げています。能登半島地震の被災地は下落が続いていますが、下落幅は縮んだとしています。

出典:国土交通省「令和8年地価公示」(2026-03-17)

データから言えること

国の資料と市区町村の数字が、同じ方向を指している

地価公示は住宅地の上昇要因に「子育て」と「転入」を挙げています。当サイトの市区町村データでも、転入超過の市区町村は前年比の中央値が +3.07% で、転出超過の +0.12% を上回りました(当サイトで計算)。どちらも相関の観察で、因果を示すものではありません。

子ども医療費の通院助成は、9割の市区町村が18歳年度末以上まで(推測を含む)

通院の助成は91.1%の市区町村が18歳年度末以上まで広げています。対象年齢だけでは差がつきにくい一方、所得制限や一部自己負担の有無には市区町村ごとの違いが残っています。比べるときは、対象年齢と合わせてこの2つも確かめると違いが見えます。単年の調査なので、普及が進んだ経過はこのデータからは分かりません。

空き家の政策は、既存住宅を市場で生かす仕組みが並ぶ

住生活基本計画は既存住宅取引とリフォームの市場規模の目標を置き、成果指標には「住宅需要の高い地域」での空家等活用促進区域の数(4区域から100区域へ)が入っています。改正空家法は活用促進区域や支援法人の仕組みを作り、管理不全空家の固定資産税の特例の解除も定めました。政策の重心が時期によってどう変わったかは、当サイトでは比べていません。当サイトの集計(空き家率10%未満の市区町村は20%以上より地価前年比の中央値が高い)は二群の比較で、政策がどの地域を対象にしているかを示すものではありません。

ふるさと納税は、伸びの鈍化とルールの強化が重なっている

市区町村分の受入額の伸びは +13.7% から +4.5% に縮みました(当サイトで計算)。同じ時期に、ポイント付与の禁止、100万円以上の支払いの公表、寄附金活用基準(100分の52.5以上)が示されています。これらのルールが伸びの鈍化の原因かどうかは、このデータからは分かりません。

地価が上がる都市部と、税の偏在の議論(推測を含む)

東京23区は地価前年比の中央値が +12.75% で、23区すべてでふるさと納税の控除額が受入額を上回っています(当サイトで計算)。骨太の方針2026は偏在性の小さい地方税体系を掲げていますが、ふるさと納税の見直しには触れていません。今後の税制改正で論点になる可能性はあるとみられますが(推測)、具体的な方向は確かめられていません。

どう動くか

個人

  • 住む街を選ぶときは、地価だけでなく、転入超過・空き家率・家賃・子ども医療費の条件を同じ市区町村で並べて見ます。
  • 子育て世帯は、医療費の助成の対象年齢だけでなく、所得制限と一部自己負担の有無も確かめます。
  • 実家や相続した空き家は、管理不全空家として勧告を受ける前に、市区町村の空き家相談窓口に相談します。税の扱いは税理士などの専門家に確かめます。
  • ふるさと納税は、ポイントではなく返礼品の中身と寄附金の使い道で選び、住んでいる自治体の差し引きも一度見ておきます。
  • 住宅ローンを組むときは、金利が上がった場合の返済額を、金融機関の公表資料をもとに自分で試算しておきます。

企業

  • 地方に工場や拠点を置く企業は、立地先の自治体が地域未来戦略の産業クラスター計画や地場産業成長プランを作っているかを確かめます。
  • ふるさと納税の返礼品事業者や支援事業者は、割安さを強調する表現を避け、100万円以上の支払いが公表される前提で委託料の内訳を説明できるようにします。
  • 既存住宅の流通・リフォーム・空き家の管理に関わる企業は、空家等活用促進区域や支援法人の指定など、自治体側の動きを先に追います。
  • 人事・総務は、転勤者や採用候補者に、住む街ごとの子ども医療費・家賃・空き家の違いを出典つきで伝えます。

読むときの注意

  • 地価公示は鑑定による標準的な価格で、実際の取引価格ではありません。上がった・下がった理由は、このデータからは分かりません。
  • 市区町村ごとの前年比の中央値(+0.12%)は、国土交通省が公表する全国の変動率(全用途 +2.8% など)とは集計のしかたが違い、そのまま比べられません。
  • ふるさと納税の受入額と控除額は、対象期間も範囲もそろっていません。普通交付税の交付団体では控除による減収の75%が交付税の算定に反映されるため、差し引きは自治体の損得そのものではありません。
  • 当サイトの数字は市区町村分です。総務省の全国計(受入額1兆3,314億円など)は都道府県分を含むため、そのまま比べられません。
  • 地域未来戦略の本文(数値目標・交付金の規模・対象地域)は確かめていません。読んだのは閣議決定を伝える通知だけです。
  • このコラムは公表資料の整理で、個別の投資・購入・借り入れ・申請の助言ではありません。

出典