国の空き家対策:勧告で固定資産税の特例が外れる。相続空き家は3,000万円控除

要するに
空き家の所有者は市区町村の勧告を受ける前に動くべきで、特例が外れると土地の固定資産税は仮の条件の計算で上限4.2倍になる。
- 勧告で税の特例が外れる。勧告後の1月1日時点で勧告が続くと、課税標準が6分の1になる住宅用地特例の対象外になる。
- 管理不全空家も対象になった。2023年12月13日施行の改正で、特定空家になる前の段階から指導・勧告ができる。
- 売るなら期限がある。相続空き家の3,000万円控除は2027年12月31日までの譲渡が対象で、延長はまだ決まっていない。
国の空き家対策は空家法が土台で、所有者に指導・勧告・命令・代執行をするのは市区町村です。2023年12月13日施行の改正で「管理不全空家」も勧告の対象になりました。勧告が1月1日時点で続くと、土地の住宅用地特例(課税標準6分の1)の対象外になるため、勧告を受ける前に手を打つことが大切です。
目次 空き家は900万戸を超え、対策の実務は市区町村が担う管理不全空家も勧告の対象になり、勧告で税の特例が外れる特例が外れると、仮の条件で土地の固定資産税は上限4.2倍になる相続空き家の3,000万円控除は、2027年12月31日までの譲渡が対象空き家率の上位は別荘地で、放置空き家の多さとは別の数字一般の所有者向けの補助は市区町村を通じて受ける。勧告の前に窓口で確かめたい確かめることよくある質問出典
空き家は900万戸を超え、対策の実務は市区町村が担う
空き家は増え続けています。総務省の住宅・土地統計調査では、2023年10月1日時点の空き家は900万2千戸で、総住宅数に占める割合は13.8%と過去最高でした。賃貸・売却用や別荘などを除く空き家は385万6千戸です。
国の対策の土台は、2014年11月に公布された空家法(平成26年法律第127号)です。国は基本指針を定め、情報提供や財政面で支えます。所有者への指導や代執行などの措置を行うのは市区町村長です。
2023年6月14日に改正法が公布され、12月13日に施行されました。改正の柱は、活用の拡大(空家等活用促進区域・空家等管理活用支援法人)、管理の確保(管理不全空家への指導・勧告)、特定空家の除却等の円滑化(緊急代執行など)の3つです。
一般の所有者から見ると、相談も補助も、窓口は市区町村になります。
管理不全空家も勧告の対象になり、勧告で税の特例が外れる
特定空家は、空家法第2条第2項が定める状態にある空き家です。そのまま放置すれば倒壊など著しく保安上危険となるおそれがある、著しく衛生上有害となるおそれがある、適切な管理が行われず著しく景観を損なっている、周辺の生活環境の保全のために放置が不適切である、のいずれかです。
管理不全空家は、2023年の改正で新しく設けられました。適切に管理されず、そのまま放置すれば特定空家になるおそれがある空き家です(同法第13条)。
どちらも、勧告を受けると税の扱いが変わります。勧告を受けた空き家の敷地は、固定資産税の住宅用地特例の対象から外されます(地方税法第349条の3の2)。固定資産税は毎年1月1日(賦課期日)時点の状況で課税されるため、勧告後に迎える1月1日時点で勧告が続いていれば、その年度分から特例の対象外になります。
特定空家は、勧告に従わないと命令、さらに代執行へと進みます。
- 指導管理不全空家に、管理の指針に沿った措置を指導(13条1項)
- 勧告特定空家になるおそれが大きいとき勧告(13条2項)。勧告後の1月1日に続いていれば住宅用地特例の対象外
- 助言・指導特定空家に、除却・修繕などを助言・指導(22条1項)
- 勧告猶予期限を付けて勧告(22条2項)。住宅用地特例の対象外になる
- 命令正当な理由なく従わないとき命令(22条3項)。違反は50万円以下の過料
- 代執行命令を履行しないとき市区町村が除却など(22条9項)。費用は所有者の負担
| 段階 | 対象 | 内容 | 所有者への影響 |
|---|---|---|---|
| 指導 | 管理不全空家 | 管理の指針に沿った措置をとるよう指導(第13条第1項) | この段階では税の特例は外れない |
| 勧告 | 管理不全空家 | 改善されず特定空家になるおそれが大きいとき、修繕などの具体的な措置を勧告(第13条第2項) | 勧告後の1月1日時点で勧告が続いていれば、その年度分から住宅用地特例の対象外 |
| 助言・指導 | 特定空家 | 除却・修繕・立木の伐採などの措置をとるよう助言・指導(第22条第1項。建物の除却を求められるのは、そのまま放置すれば著しく保安上危険または著しく衛生上有害となるおそれがある特定空家に限られ、景観や生活環境の面だけが問題の特定空家には除却は求められない) | この段階では税の特例は外れない |
| 勧告 | 特定空家 | 改善されないとき、猶予期限を付けて措置を勧告(第22条第2項) | 勧告後の1月1日時点で勧告が続いていれば、その年度分から住宅用地特例の対象外 |
| 命令 | 特定空家 | 正当な理由なく勧告に従わないとき、猶予期限を付けて命令。事前に意見書を出す機会がある(第22条第3項・第4項) | 命令に違反すると50万円以下の過料(第30条)。命令は標識などで公示される |
| 代執行 | 特定空家 | 命令を履行しないとき、市区町村が行政代執行法に従い除却などを行う(第22条第9項) | 費用は所有者の負担 |
| 略式代執行・緊急代執行 | 特定空家 | 所有者が分からないとき(第10項)、災害など緊急で命令の手続きを経るいとまがないとき(第11項)に市区町村が措置 | 費用は所有者の負担 |
出典: 空家等対策の推進に関する特別措置法(e-Gov法令検索)、地方税法第349条の3の2、国土交通省「空家法改正の概要」
特例が外れると、仮の条件で土地の固定資産税は上限4.2倍になる
住宅が建っている土地は、固定資産税が軽くなっています。課税標準は、住宅1戸あたり200平方メートル以下の部分(小規模住宅用地)で評価額の6分の1、それを超える部分で3分の1です。特例の対象になる土地は原則として家屋の床面積の10倍までで(地方税法第349条の3の2)、標準税率は1.4%です(同法第350条)。
仮の条件として、土地の評価額1,200万円・面積200平方メートル以下・税率1.4%で計算します。特例ありの税額は年2万8,000円です。評価額にそのまま1.4%をかけると年16万8,000円で、6倍になります。
ただし、上限は6倍ではありません。特例が外れた土地は住宅用地以外の宅地(商業地等)と同じ扱いになり、課税標準は評価額の70%が上限です(総務省「固定資産税の概要」)。この上限で計算すると年11万7,600円で、特例ありの4.2倍です。
実際の税額は負担調整措置などで変わるため、市区町村の資産税課(東京23区は都税事務所)で確かめてください。
| ケース | 課税標準の式 | 課税標準 | 年税額 | 特例ありとの比 |
|---|---|---|---|---|
| 特例あり(小規模住宅用地) | 1,200万円 × 1/6 | 200万円 | 2万8,000円 | 1.0倍 |
| 特例なし(単純計算) | 1,200万円 × 1 | 1,200万円 | 16万8,000円 | 6.0倍 |
| 特例なし(商業地等と同じ上限70%) | 1,200万円 × 70% | 840万円 | 11万7,600円 | 4.2倍 |
年税額 = 課税標準 × 1.4%。土地のみで、建物の固定資産税と都市計画税は含みません。上の3行は仮の条件による単純な比較です。3行目は課税標準が評価額の70%になった場合の額です。特例が外れた後の実際の課税標準は、前年度の課税標準の扱いや負担調整措置などで決まるため、この額と同じになるとは限りません。実際の税額は市区町村の資産税課で確かめてください。
相続空き家の3,000万円控除は、2027年12月31日までの譲渡が対象
相続した空き家を売るなら、税の特例があります。親などが一人で住んでいた家を相続し、空き家のまま売る場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できます(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例)。2024年1月1日以後の譲渡で、家と敷地を相続した相続人が3人以上の場合は、1人あたり最高2,000万円です。
期限は決まっています。対象は2016年4月1日から2027年12月31日までの譲渡です(国税庁、令和8年4月1日現在の法令等)。
延長はまだ決まっていません。国土交通省は令和9年度税制改正要望で、2028年1月1日から2031年12月31日までの4年間の延長などを求めていますが、2026年10月14日時点では要望の段階です。
受けるには確定申告が必要です。添付書類の一つ「被相続人居住用家屋等確認書」は、家のある市区町村長から交付を受けます。
- 相続亡くなった人が一人で住んでいた1981年5月31日以前建築の家と敷地を相続
- 使わずに置く相続から売るまで、事業・貸付け・居住に使わない
- 耐震改修か取壊し耐震基準を満たす家を売るか、取り壊して土地を売る(買主が翌年2月15日までに行う場合も対象)
- 売る相続から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ2027年12月31日まで。代金1億円以下
- 確認書と確定申告市区町村長の「被相続人居住用家屋等確認書」などを添えて確定申告
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| 取得のしかた | 売る人が、亡くなった人の家屋と敷地の両方を相続か遺贈で取得していること(家屋だけ・敷地だけを取得した人は対象外) |
| 家 | 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築、区分所有建物の登記がない、相続の直前に亡くなった人以外が住んでいなかった |
| 使い方 | 相続から売るまで、事業・貸付け・居住に使っていない(家を取り壊して土地を売る場合は、取り壊しから売るまで、建物や構築物の敷地にも使っていない) |
| 売り方 | 耐震基準を満たす家を売る、または家を取り壊して土地を売る。2024年1月1日以後の譲渡は、売った翌年の2月15日までに買主が耐震改修または取壊しをした場合も対象 |
| 売る期限 | 相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで(かつ2027年12月31日までの譲渡) |
| 売却代金 | 1億円以下。他の相続人が売った分や、相続の時から売却後3年を経過する日の属する年の12月31日までに分けて売った分も合わせて判定(合計が1億円を超えると修正申告が必要) |
| 買主 | 親子・夫婦など特別の関係がある人ではない |
| 手続き | 確定申告。市区町村の「被相続人居住用家屋等確認書」などを添付 |
老人ホームなどに入所していた場合の扱いなど細かな要件があります。出典: 国税庁タックスアンサーNo.3306。個別の判断は税務署か税理士に確かめてください。
空き家率の上位は別荘地で、放置空き家の多さとは別の数字
地価データバンクでは、総務省の令和5年住宅・土地統計調査から市区町村ごとの空き家率(空き家数÷総住宅数)を載せています。数字のある1,283市区町村の中央値は13.98%で、20%以上が221、30%以上が37でした(当サイトで計算)。
上位には別荘地が並びます。長野県軽井沢町が70.38%、栃木県那須町が61.73%、静岡県熱海市が53.35%、山梨県北杜市が46.06%、和歌山県白浜町が43.21%でした。
住宅・土地統計調査の空き家には別荘などの二次的住宅が含まれるため、空き家率が高いことを、そのまま放置空き家が多いと読むことはできません。
空き家率が高い市区町村ほど、地価の伸びは小さめです。地価公示の地点が5つ以上ある市区町村では、空き家率20%以上の145市区町村の地価前年比の中央値が-0.71%、10%未満の206市区町村は+3.21%でした(当サイトで計算)。これは相関で、空き家が地価を下げたという因果はこのデータからは分かりません。
一般の所有者向けの補助は市区町村を通じて受ける。勧告の前に窓口で確かめたい
一般の所有者は、国の補助を国に直接申請するわけではありません。国土交通省の空き家対策総合支援事業(令和8年度当初予算59億円の内数、事業期間は令和8〜12年度)は、市区町村が空家等対策計画に基づいて行う除却・活用の取組を国が支える仕組みです。
例外は、NPOや民間事業者などのモデル的な取組です。国土交通省は「空き家対策モデル事業」で、こうした取組を直接支援しており、令和8年度の採択対象を2026年7月8日に公表しました。
所有者が解体や改修をする場合の補助は、市区町村が補助制度を設けていることが前提です。制度の有無・対象・上限額は市区町村ごとに違います。同じ内容は社会資本整備総合交付金の空き家再生等推進事業でも支援されます。
市区町村長は、NPO法人や社団法人などを空家等管理活用支援法人に指定でき、所有者の相談に乗る役割があります。
空き家を持っている人は、勧告を受ける前に、市区町村の空き家担当の窓口で補助制度と支援法人の指定の有無を確かめておくことが最初の一歩です。
| 事業 | 国 | 地方公共団体 | 所有者 |
|---|---|---|---|
| 除却(特定空家等の除却など) | 2/5 | 2/5 | 1/5 |
| 活用(地域コミュニティのために10年以上活用する改修) | 1/3 | 1/3 | 1/3 |
市区町村が自ら実施する場合は、除却が国2/5・市区町村3/5、活用が国1/2・市区町村1/2。代執行等の場合は国1/2・市区町村1/2。出典: 国土交通省「空き家対策総合支援事業(R8概要資料)」
確かめること
- 家のある市区町村の空き家担当の窓口に電話し、その家が管理不全空家・特定空家として指導を受けていないか、除却や改修の補助制度があるか、空家等管理活用支援法人の指定があるかを聞く。
- 固定資産税の課税明細書で、土地に住宅用地の特例が適用されているかと評価額を確かめる。分からなければ市区町村の資産税担当課(東京23区は都税事務所)に聞く。
- 相続した家を売る予定なら、登記事項証明書で建築日(1981年5月31日以前か)を確かめ、相続開始日から売却期限(3年を経過する日の属する年の12月31日)を計算しておく。
- 3,000万円控除を使う場合は、売る前に市区町村で「被相続人居住用家屋等確認書」の申請方法を確かめ、申告は税務署か税理士に相談する。
- 地価データバンクで自分の市区町村のページを開き、空き家率・家賃・地価の前年比を近くの市区町村と比べる。
よくある質問
- 特定空家と管理不全空家の違いは何ですか?
- 特定空家は、倒壊のおそれなど周辺に著しい悪影響を及ぼす状態の空き家です。管理不全空家は、そのまま放置すれば特定空家になるおそれがある空き家で、2023年12月13日施行の改正で設けられました。どちらも市区町村長の勧告を受け、その後の1月1日時点で勧告が続いていると、その年度分から土地の固定資産税の住宅用地特例の対象外になります。
- 空き家の固定資産税は6倍になりますか?
- 評価額にそのまま税率をかける単純計算では、200平方メートル以下の部分で6倍です。ただし特例が外れた土地は住宅用地以外の宅地と同じ扱いになり、課税標準は評価額の70%が上限です。仮の条件では、この上限で特例ありの4.2倍でした。実際の税額は負担調整措置などで変わるため、市区町村の資産税課で確かめてください。
- 命令に従わないとどうなりますか?
- 特定空家の所有者が市区町村長の命令に違反すると、50万円以下の過料の対象です(空家法第30条)。命令を履行しないときは、市区町村が代執行で除却などを行い、費用は所有者の負担になります。
- 相続空き家の3,000万円控除はいつまでですか?
- 2027年12月31日までの譲渡が対象です(国税庁、令和8年4月1日現在の法令等)。あわせて、相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。延長は国土交通省が要望している段階で、決まっていません。
- 解体費用の補助はどこに申請しますか?
- 家のある市区町村です。国の空き家対策総合支援事業は市区町村の取組を支える仕組みで、一般の所有者向けの補助は市区町村が制度を設けている場合に使えます。対象や上限額は市区町村ごとに違います。
読むときの注意
- 固定資産税の計算例は仮の条件による試算です。税額は市区町村の税率、評価額の見直し、負担調整措置で変わります。
- 税の特例や補助の対象になるかは、税務署・税理士・市区町村の窓口で個別に確かめてください。
- 当サイトの空き家率には別荘などの二次的住宅が含まれます。
- このページは公表資料の整理で、個別の投資・購入・借り入れ・申請の助言ではありません。
出典
- 空家等対策の推進に関する特別措置法(e-Gov法令検索)
- 国土交通省 空家法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について
- 国土交通省 空家法改正の概要
- 国土交通省 空家等対策特別措置法関連情報
- 国土交通省 空き家対策総合支援事業(R8概要資料)
- 国土交通省 空き家再生等推進事業(R8概要資料)
- 地方税法(e-Gov法令検索)
- 総務省 固定資産税の概要
- 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
- 国土交通省 令和9年度 税制改正要望(相続空き家の特別控除)
- 総務省統計局 令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果
- 地価データバンク(当サイト。空き家率は令和5年住宅・土地統計調査から計算)
- 国土交通省 令和8年度「空き家対策モデル事業」の採択対象を決定(2026-07-08)
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