海外不動産の税制改正 国外中古建物の特例と8つの制度を表で整理

要するに
令和3年分から、個人が簡便法で償却した国外の中古建物では、赤字のうち償却費に当たる部分を給与などと相殺できず、この償却の赤字を節税の前提にすることはできません。
- 償却費に当たる赤字は「生じなかったもの」とみなされます。仮の例Aでは、通算できる額が800万円から0円になりました。
- 持っているだけで届け出の義務があります。12月31日の国外財産が5,000万円を超える居住者(非永住者を除く)は、翌年6月30日までに国外財産調書を出します。
- 海外の口座情報は国に届いています。国税庁は令和6事務年度に、日本居住者の口座情報を約275万件受け取りました。
海外不動産を持つ個人に直接関わる税制改正の代表が、令和2年度改正で作られた「国外中古建物の特例」(租税特別措置法41条の4の3)です。令和3年分から、簡便法などで短い耐用年数にした国外の中古建物では、赤字のうち償却費に当たる部分を給与などと相殺できません。償却の赤字による節税を前提にした提案は、この特例に照らして確かめる必要があります。
目次 海外不動産に関わる税の制度は、平成26年ごろから段階的に増えた国外中古建物の特例で、償却費に当たる赤字は「生じなかったもの」になる計算例:築25年の例では、通算できる額が800万円から0円になる国外財産が5,000万円を超えれば、持っているだけで調書を出す義務がある移住・相続・二重課税では、出国税・相続の10年ルール・外国税額控除が関わる令和9年分から、極めて高い所得への負担は1億6,500万円超・30%になる国外財産調書の提出は1年で9.8%増え、国税庁は海外の口座情報を調書と突き合わせている確かめることよくある質問出典
海外不動産に関わる税の制度は、平成26年ごろから段階的に増えた
海外不動産に関わる税の制度は、一度に変わったのではなく、平成26年ごろから段階的に増えてきました。
大きく分けると4つです。①海外の建物の償却で税を減らす使い方を制限したもの、②海外の財産を国が把握する仕組み、③移住・相続・二重課税の扱い、④高い所得への負担、です。
国外中古建物の特例は、令和2年度の税制改正で作られ、令和3年分の所得税から適用されています(国税庁「令和2年度 所得税の改正のあらまし」)。改正の年度と適用の年分がずれるため、記事によって年が違って見えることがあります。
| 時期 | 何が変わったか | 根拠 |
|---|---|---|
| 平成26年1月1日以後に出す調書から | 国外財産調書が始まる(12月31日の国外財産が5,000万円超の居住者) | 国外送金等調書法5条(平成24年度改正) |
| 平成27年7月1日以後 | 出国税(国外転出時課税)が始まる | 所得税法60条の2・60条の3(平成27年度改正) |
| 平成28年1月1日以後に出す調書から | 財産債務調書が始まる | 国外送金等調書法6条の2(平成27年度改正) |
| 平成29年1月1日以後 | CRS:金融機関で口座を開くときなどに、居住地国の届出書を出す | 実特法10条の5以下(平成27年度改正) |
| 平成30年以後 | CRS:金融機関の報告が始まる | 同上 |
| 令和3年分以後 | 国外中古建物の特例:償却費に当たる赤字を相殺できない | 租税特別措置法41条の4の3(令和2年度改正) |
| 令和5年分以後 | 2つの調書の期限が翌年6月30日に。財産債務調書に財産10億円以上の居住者を追加 | 令和4年度改正(令和4年法律第4号) |
| 令和7年分以後 | 極めて高い所得への負担(3億3,000万円超・22.5%) | 租税特別措置法41条の19(令和5年法律第3号) |
| 令和8年から | CRSの報告制度の見直しを施行(令和9年以後は改正後の制度で報告・交換) | 令和6年度改正(国税庁 CRSコーナー) |
| 令和9年分以後 | 極めて高い所得への負担を1億6,500万円超・30%に | 令和8年法律第12号(2026-03-31公布) |
出典: 国税庁タックスアンサー・パンフレット、e-Gov 法令検索、財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」(いずれも2026-10-14取得)。
国外中古建物の特例で、償却費に当たる赤字は「生じなかったもの」になる
中古の建物は、残りの使用可能期間を見積もるのが難しいときは、法定の耐用年数より短い年数で償却できます(簡便法。事業に使うための資本的支出(修繕費は含まない)が取得価額の50%を超える場合などは使えません)。たとえば木造の住宅は法定22年ですが、22年を過ぎた中古なら4年で償却できます。この短い年数で海外の中古建物を償却し、大きな赤字を出して給与などの所得と相殺する使い方が、特例で制限されました。
対象は、赤字全体ではなく、そのうち国外中古建物の償却費に当たる部分です。国税庁は、この部分は国内の不動産の所得との相殺(所得内の通算)も、ほかの所得との損益通算もできないと説明しています(タックスアンサー No.1391)。
簡便法で耐用年数を決めた建物は、必ず特例の対象です。
一方、耐用年数を「見積法」(使用できる期間を見積もる方法)で決め、その期間が適当であることを、その国の法令の耐用年数や不動産鑑定士の見積もりなどの書類で確かめられる建物は、対象から外れます(租税特別措置法施行規則18条の24の2)。この場合は書類を確定申告書に添付します。見積法でも書類で確かめられなければ対象です。当てはまるかどうかは税理士に確かめてください。
- 国外の中古建物を貸す個人が取得した国外の中古建物から不動産所得がある(令和3年分以後)
- 耐用年数の決め方簡便法なら対象。見積法で期間が適当と書類で確かめられれば対象外
- 赤字の一部をないものとみなす赤字のうち償却費に当たる部分(赤字と償却費の小さい方)は「生じなかったもの」とする
- 通算・繰越しできないその部分は給与など他の所得と損益通算できず、翌年以後にも繰り越せない
- 売るとき譲渡所得の取得費の計算で、ないものとみなした赤字の合計を償却費の累積から差し引く
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 令和3年以後の各年に、国外中古建物から不動産所得がある個人 |
| 国外中古建物とは | 個人が使っていた、または法人が事業に使っていた国外の建物を個人が取得し、貸し付けているもので、耐用年数を簡便法で決めているもの、または見積法で決め、その期間が適当であることを書類で確かめられないもの |
| 金額の基準 | 国外の不動産所得の赤字のうち、国外中古建物の償却費に当たる部分。建物ごとに、償却費が赤字より大きければ赤字の全額、償却費が赤字以下なら償却費の額(租税特別措置法施行令26条の6の3)。ただし、ほかの国外不動産に黒字があるときは先にその黒字と通算するため、生じなかったとみなす額は通算後の国外不動産所得の赤字の範囲に限られます(国税庁の計算付表)。金額の上限・下限の定めはない |
| どうなるか | その部分は「生じなかったもの」とみなされ、給与など他の所得と損益通算できず、翌年以後への繰越しもできない |
| 売ったとき | 譲渡所得の取得費を計算するとき、償却費の累積額から、生じなかったとみなされた赤字の合計を差し引く(取得費がその分大きくなる)。措法41条の4の3第3項 |
| 開始日 | 令和3年分以後 |
| 根拠条文 | 租税特別措置法41条の4の3、同施行令26条の6の3、同施行規則18条の24の2 |
出典: e-Gov 法令検索(租税特別措置法・同施行令・同施行規則、2026-10-14取得)、国税庁 タックスアンサー No.1391、国税庁「令和2年度 所得税の改正のあらまし」。条文の対象は個人です。法人が持つ場合の扱いは税理士に確かめてください。
計算例:築25年の例では、通算できる額が800万円から0円になる
仮の条件を置いて計算します。実在の物件ではありません。建物の取得価額は4,000万円(土地は別)、木造の住宅(法定耐用年数22年)、定額法、1年を通して貸した年、借入金はなし、ほかに国外の不動産は持っていない、とします。
耐用年数は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令3条1項2号の簡便法で決めます。法定耐用年数をすべて過ぎた建物は「法定×20%」、一部を過ぎた建物は「(法定−経過年数)+経過年数×20%」で、1年未満は切り捨て、その年数が2年に満たないときは2年とします(同号、国税庁 タックスアンサー No.5404)。償却率は同省令の別表第八(定額法)によります。
例Aは、通算できる額が800万円から0円になります。赤字800万円の全部が償却費の範囲に入るためです。
例Bは、通算できる額が550万円から150万円に減ります。赤字550万円のうち償却費400万円の部分だけが消え、償却費を超える150万円は通算できます。
| 項目 | 例A:築25年 | 例B:築15年 |
|---|---|---|
| 耐用年数(簡便法) | 22年×20%=4.4年→4年 | (22−15)+15×20%=10年 |
| 償却率(定額法) | 0.250 | 0.100 |
| 償却費(4,000万円×償却率) | 1,000万円 | 400万円 |
| 家賃収入 | 300万円 | 300万円 |
| 償却費以外の経費(管理費・修繕費など) | 100万円 | 450万円 |
| 不動産所得 | −800万円 | −550万円 |
| 生じなかったとみなす額(赤字と償却費の小さい方) | 800万円 | 400万円 |
| 損益通算できる額:特例の前(令和2年分まで) | 800万円 | 550万円 |
| 損益通算できる額:特例の後(令和3年分から) | 0円 | 150万円 |
計算: 生じなかったとみなす額 = 赤字と償却費の小さい方(租税特別措置法施行令26条の6の3第1項)。当サイトで python により検算。売った年・初年度の月割り・土地の借入金の利子・青色申告の控除は入れていません。実際の申告は税理士に確かめてください。
- 売ったときの例(例Aを2年持って売った場合。売った年の償却は省略):償却費の累積は2,000万円、生じなかったとみなした赤字の合計は1,600万円です。建物の取得費は、特例がなければ4,000万円−2,000万円=2,000万円、特例を受けた場合は4,000万円−(2,000万円−1,600万円)=3,600万円になります。
国外財産が5,000万円を超えれば、持っているだけで調書を出す義務がある
海外の不動産は、国税庁の説明では「不動産の所在」で国外財産かどうかを判定します(タックスアンサー No.4138)。海外の建物や土地を持つ人は、合計額によって国外財産調書を出す義務があります。
CRS(共通報告基準)は、各国の税務当局が金融口座の情報を交換する仕組みです。不動産そのものは対象ではありませんが、家賃や売却代金が入る海外の口座は対象になりえます(推測)。
国税庁は、令和6事務年度に日本居住者の口座情報を約275万件、101か国・地域から受け取ったと公表しています。
- 12月31日の国外財産海外の不動産・預金・有価証券などを時価または見積価額で評価する
- 円に換算外貨は12月31日の為替相場で円に換算する
- 5,000万円超か居住者(非永住者を除く)で合計が5,000万円を超えれば提出の義務
- 翌年6月30日までに提出国外財産調書に国外財産調書合計表を添付する(令和5年分以後)
- 加算税の軽減・加重期限内に出し記載があれば申告漏れの加算税を5%軽減。出さない・記載がない場合は5%加重
| 制度 | 項目 | 内容 |
|---|---|---|
| 国外財産調書 | 対象者 | 居住者(非永住者を除く)で、12月31日の国外財産の合計が5,000万円を超える人 |
| 国外財産調書 | 金額の基準 | 12月31日時点の国外財産の価額の合計が5,000万円超(時価または見積価額。外貨は同日の為替相場で円に換算) |
| 国外財産調書 | 期限 | 翌年6月30日まで(令和5年分以後)。国外財産調書合計表を添付 |
| 国外財産調書 | 罰則 | 期限内に出し記載がある財産の申告漏れは、過少申告加算税などを5%軽減。出さない・記載がない場合は5%加重。税務調査で国外財産の関係書類の提示・提出を求められて期限までに出さないと、期限内に出した人も5%の軽減を受けられず、加重の対象になる人は加重が10%になります(本人の責めに帰すべき事由がない場合を除く)。偽りの記載や正当な理由のない期限内の不提出は、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(不提出は情状により免除あり) |
| 国外財産調書 | 開始日 | 平成26年1月1日以後に出す調書から |
| 国外財産調書 | 根拠条文 | 国外送金等調書法2条・5条・6条・10条ほか |
| 財産債務調書 | 対象者 | ①確定申告をする必要がある人(または一定の還付申告ができる人)で、所得(退職所得を除く)の合計が2,000万円超、かつ12月31日の財産が3億円以上または有価証券などが1億円以上の人 ②12月31日の財産が10億円以上の居住者(②は確定申告の要否にかかわらず対象) |
| 財産債務調書 | 金額の基準 | 上の①②の金額。財産の価額は債務を差し引かない総額 |
| 財産債務調書 | 期限 | 翌年6月30日まで(令和5年分以後)。財産債務調書合計表を添付 |
| 財産債務調書 | 罰則 | 期限内に出し記載がある財産の所得税・相続税の申告漏れは5%軽減。出さない・記載がない場合の所得税の申告漏れは5%加重 |
| 財産債務調書 | 開始日 | 平成28年1月1日以後に出す調書から |
| 財産債務調書 | 根拠条文 | 国外送金等調書法6条の2・6条の3ほか |
| CRS | 対象者 | 外国の金融機関に口座を持つ日本の居住者(情報が外国の税務当局から国税庁に届く)。国内では、平成29年以後に金融機関で口座開設などをする人が居住地国の届出書を出す |
| CRS | 期限 | 届出書は口座開設などの際に金融機関へ。金融機関の報告は毎年、翌年4月30日まで |
| CRS | 罰則 | 届出書を出さない・偽りの記載をした場合、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(実特法13条4項3号) |
| CRS | 開始日 | 届出は平成29年1月1日以後、報告は平成30年以後 |
| CRS | 根拠条文 | 租税条約等実施特例法(実特法)10条の5〜10条の8、13条 |
出典: 国税庁 タックスアンサー No.7456・No.7457、「国外財産調書制度」のあらまし(令和8年8月)、CRSコーナー、e-Gov 法令検索(2026-10-14取得)。国外財産調書を出す人は、財産債務調書には国外財産について価額以外の事項を書かなくてよいとされています(国税庁「国外財産調書制度」のあらまし)。
移住・相続・二重課税では、出国税・相続の10年ルール・外国税額控除が関わる
海外に移り住むとき、海外の財産を相続するとき、現地でも税を払ったときに関わる制度です。
出国税の対象資産は有価証券などで、国税庁の定義に不動産は挙がっていません。ただし金融資産も持つ人は、合計で1億円以上かどうかを税理士に確かめてください。
相続税では、財産を受け取る人が海外に住んでいても、日本国籍があり亡くなった人の死亡の前10年以内に日本に住所があった場合などは、海外の不動産を含む国外財産も日本の相続税の対象です。
| 制度 | 項目 | 内容 |
|---|---|---|
| 出国税(国外転出時課税) | 対象者 | 国外に転出する時に対象資産(有価証券・匿名組合出資・未決済の信用取引やデリバティブ取引など)を1億円以上持ち、原則として転出前10年以内に日本に住所などがあった期間が5年を超える居住者。贈与・相続で非居住者に移る場合も対象 |
| 出国税(国外転出時課税) | 金額の基準 | 対象資産の価額の合計が1億円以上 |
| 出国税(国外転出時課税) | 期限 | 納税管理人を届け出た場合は転出した年分の確定申告期限まで、届け出ない場合は転出の時までに準確定申告。納税猶予は5年(延長で最長10年)、担保が必要 |
| 出国税(国外転出時課税) | 開始日 | 平成27年7月1日以後の国外転出・贈与・相続から |
| 出国税(国外転出時課税) | 根拠条文 | 所得税法60条の2・60条の3ほか |
| 相続の10年ルール | 対象者 | 相続などで財産を受け取った時に日本に住所がない人のうち、①日本国籍があり死亡の前10年以内に日本に住所があった人、②日本国籍があり10年以内に住所がなくても、亡くなった人が外国人被相続人・非居住被相続人でない場合、③日本国籍がなく、亡くなった人が外国人被相続人などでない場合。この人たちは国外財産も課税 |
| 相続の10年ルール | 期限 | 相続税は死亡を知った日の翌日から10か月以内。贈与税は翌年2月1日〜3月15日。日本に住所がない人は納税管理人と納税地を定めて申告 |
| 相続の10年ルール | 根拠条文 | 相続税法1条の3・1条の4・2条・2条の2ほか |
| 外国税額控除 | 対象者 | 外国で所得税に当たる税(外国所得税)を納める居住者 |
| 外国税額控除 | 金額の基準 | 控除できる上限 = その年の所得税額 ×(調整国外所得金額 ÷ 所得の総額)。超えた分は復興特別所得税・住民税の限度額へ。前3年以内の繰越しあり |
| 外国税額控除 | 期限 | 確定申告書に控除額を書き、「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」などを添付 |
| 外国税額控除 | 根拠条文 | 所得税法95条・95条の2ほか |
出典: 国税庁 タックスアンサー No.1478・No.4138・No.4205・No.4429・No.4432・No.1240、e-Gov 法令検索(2026-10-14取得)。贈与税は、贈る人と受け取る人の住所などの組み合わせで判定します(No.4432)。
令和9年分から、極めて高い所得への負担は1億6,500万円超・30%になる
令和8年度の税制改正で、極めて高い所得への負担の措置が見直されました。改正前は3億3,000万円・22.5%です。
基準所得金額から1億6,500万円を引いた額に30%をかけ、基準所得税額(この特例がないものとして計算した所得税の額。確定申告不要を選んだ所得の源泉徴収税額と復興特別所得税を含み、外国税額控除などを適用する前の額。国税庁 No.2270。令和9年分以後は防衛特別所得税の額も含めて比べる。財務省 改正法の新旧対照表)を上回る分を追加で納めます。
基準所得金額には、総所得金額のほか、土地建物等の長期・短期の譲渡所得(租税特別措置法31条・32条)や株式等の譲渡所得なども入ります(同法41条の19第2項)。海外の不動産を売った年に所得が大きくなる人は、自分が当たるかを税理士に確かめてください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 基準所得金額が基準額(令和9年分以後は1億6,500万円、令和7・8年分は3億3,000万円)を超え、かつ、その超える部分に税率(令和9年分以後30%、令和7・8年分22.5%)をかけた額が基準所得税額を上回る個人(国税庁 タックスアンサー No.2270) |
| 金額の基準 | 令和9年分以後: 1億6,500万円を超える部分×30% − 基準所得税額。令和7・8年分: 3億3,000万円を超える部分×22.5% − 基準所得税額 |
| 開始日 | 制度は令和7年分以後。見直しは令和9年分以後 |
| 根拠条文 | 租税特別措置法41条の19(令和5年法律第3号で新設、令和8年法律第12号で改正) |
出典: e-Gov 法令検索(租税特別措置法、2027-01-01施行版を含む)、財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」(2026-10-14取得)。
国外財産調書の提出は1年で9.8%増え、国税庁は海外の口座情報を調書と突き合わせている
国外財産調書の提出は増えています。令和6年分は14,544件で前年比+9.8%、財産の合計は8兆1,945億円で同+26.3%でした。そのうち建物は5,397億円(6.6%)、土地は1,686億円(2.1%)です。
令和6事務年度の実地調査では、調書の加重措置が366件に適用されました。
CRSでは、日本居住者の口座情報を約275万件、101か国・地域から受け取り、国外財産調書などと突き合わせて分析するとしています。
簡便法の償却で出した赤字で給与などの税を減らす提案は、令和3年分からの特例に照らして確かめる必要があります。
海外不動産を持つ人やこれから買う人は、耐用年数の決め方、12月31日の国外財産の合計、売るときの取得費と所得の大きさ、の3つを税理士と確かめることが必要です。
確かめること
- 居住者(非永住者を除く)の場合、去年の12月31日時点で海外の不動産・預金・有価証券などの合計が5,000万円を超えていたかを、時価と為替で計算する(超えていれば、今年の6月30日までに国外財産調書を税務署へ。相続・遺贈で取得した国外財産は、相続開始の年は金額の判定から除ける場合がある)。
- 海外の中古建物を貸している人は、確定申告書の控えで耐用年数の決め方(簡便法か、現地の法令や鑑定の書類があるか)を確かめ、税理士に特例の当てはまりを聞く。
- 売る予定がある人は、購入時からの償却費の累積額と、生じなかったとみなされた赤字の合計を年ごとに一覧にし、取得費の計算を税理士と確かめる。
- 現地で税を払っている人は、現地の納税証明や申告書の写しをそろえ、外国税額控除の明細書を出しているかを確かめる。
- 海外に移住する予定の人は、有価証券などの合計が1億円以上かを確かめ、納税管理人を誰にするかを出国前に税務署へ届け出る準備をする。
よくある質問
- 海外の中古不動産の減価償却で、いまも節税できますか?
- 個人で、簡便法などで耐用年数を決めた国外中古建物の場合、令和3年分から、赤字のうち償却費に当たる部分は給与などと相殺できません。償却費を超える赤字の部分は、ほかの制限(土地を取得するための借入金の利子に当たる部分は損益通算できない、など)に当たらなければ相殺できます。また、見積法で耐用年数を決め、その期間が適当であることを現地の法令の耐用年数などの書類で確かめられる建物は、特例の対象から外れます。自分の物件が当たるかは税理士に確かめてください。
- この特例は法人にも当てはまりますか?
- 租税特別措置法41条の4の3の条文は「個人」を対象にしています。法人が海外の建物を持つ場合は法人税の扱いになるため、顧問の税理士に確かめてください。
- 海外の不動産だけなら、国外財産調書は要りますか?
- 海外の不動産は国外財産です。12月31日の国外財産の合計が5,000万円を超える居住者(非永住者を除く)は、翌年6月30日までに出す必要があります。合計には預金や有価証券なども入ります。
- 海外の不動産も出国税の対象ですか?
- 国税庁の説明では、出国税の対象資産は有価証券・匿名組合出資・未決済の信用取引やデリバティブ取引などで、不動産は挙がっていません。ただし金融資産の合計が1億円以上なら対象になりうるため、税理士に確かめてください。
- 令和9年分からの高い所得への負担は、海外不動産を売ったときも関係しますか?
- 基準所得金額には、租税特別措置法31条・32条の土地建物等の長期・短期の譲渡所得も入ると条文で定められています。海外の不動産の売却益がどう入るかは、税理士に確かめてください。
読むときの注意
- このページは税の助言ではありません。個別の判断は税理士に、国外の制度は現地の専門家にも確かめてください。
- 計算例は仮の条件による例です。実在の物件や特定の国への投資を勧めるものではありません。
- 制度の内容は2026年10月14日に取得した法令・国税庁の説明によります。
- このページは公表資料の整理で、個別の投資・購入・借り入れ・申請の助言ではありません。
出典
- e-Gov 法令検索 租税特別措置法(41条の4の3・41条の19)
- e-Gov 法令検索 租税特別措置法施行令(26条の6の3)
- e-Gov 法令検索 租税特別措置法施行規則(18条の24の2)
- e-Gov 法令検索 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(3条・別表第一・別表第八)
- 国税庁 令和2年度 所得税の改正のあらまし
- 国税庁 タックスアンサー No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算
- 国税庁 タックスアンサー No.2100 減価償却のあらまし
- 国税庁 タックスアンサー No.7456 国外財産調書の提出義務
- 国税庁 タックスアンサー No.7457 財産債務調書の提出義務
- 国税庁 「国外財産調書制度」のあらまし
- 国税庁 CRS(共通報告基準)コーナー
- 国税庁 タックスアンサー No.1478 国外転出をする場合の譲渡所得等の特例
- 国税庁 タックスアンサー No.4138 相続人が外国に居住しているとき
- 国税庁 タックスアンサー No.4205 相続税の申告と納税
- 国税庁 タックスアンサー No.4432 受贈者が外国に居住しているとき
- 国税庁 タックスアンサー No.4429 贈与税の申告と納税
- 国税庁 タックスアンサー No.1240 居住者に係る外国税額控除
- e-Gov 法令検索 国外送金等調書法
- e-Gov 法令検索 所得税法
- e-Gov 法令検索 相続税法
- e-Gov 法令検索 租税条約等実施特例法
- 財務省 令和8年度税制改正の大綱の概要
- 国税庁 令和6年分の国外財産調書の提出状況について
- 国税庁 令和6事務年度 租税条約等に基づく情報交換事績の概要
- 国税庁 国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例の計算付表
- 国税庁 中古資産の耐用年数(簡便法の条件)
- 国税庁 タックスアンサー No.2270 特定の基準所得金額の課税の特例
- 財務省 所得税法等の一部を改正する法律 新旧対照表(租税特別措置法)
海外不動産の価格推移:主要15か国の名目・実質・円 →海外不動産データバンク トップ →アメリカの住宅価格・為替・安全情報 →ハワイの住宅価格・為替・安全情報 →出典と計算方法 →コラムの一覧 →このサイトのデータについて →