432万社のデータで読む 骨太2026・取適法・インボイスと会社の今
2026-10-14 時点の公表資料とこのサイトのデータから書いています。
国は骨太方針2026で、中堅・中小企業の賃上げと稼ぐ力を前に出しています。当サイトのデータでは、社会保険の被保険者数(従業員数とは同じではありません)が分かる2,762,827社のうち70.5%が被保険者1〜10人で、補助金や公共調達の公表記録がある会社は一部です。取適法(改正下請法)とインボイスの経過措置の見直しも重なる今、数字と方針を出典つきで並べます。
データが示すこと
被保険者数が分かる法人の7割は1〜10人
当サイトは国税庁の法人番号から4,323,639社を収録しています。このうち社会保険の被保険者数(日本年金機構の公表値をgBizINFO経由で2026-08-06に取得)がある法人は2,762,827社で、被保険者1〜10人は1,948,440社、2,762,827社を分母にすると70.5%です(当サイトで計算)。規模の区分が付いた2,391,491社を分母にすると81.5%になり、分母で値が変わります。被保険者数は従業員数と同じではなく、被保険者数の無い約156万社(当サイトで計算)の規模はこのデータでは分かりません。 データを見る
直近90日の新設は32,630社(2026-10-14取得時点)
/houjin/new の表示では、2026-07-16〜2026-10-13の90日間に32,630社が新設されました。数え方は登記の日ではなく、法人番号が公表された日です。公表のあった58日の平均は1日563社でした。同じ時刻に取得したトップ頁では32,474社と表示されており、ずれの理由は確かめていません(未検証)。 データを見る
新設は東京に集まるが、地方にも差がある
トップ頁の地図集計では、東京都の新設は11,030社で、同じ頁の新設全体32,474社の約34%でした(当サイトで計算)。既存の法人のうち東京都が占める割合は24.2%(2026-07-03集計、当サイトで計算)で、集計の時点と期間が違う数字どうしである点に注意が要ります。既存1万社あたりの新設は東京105.3、沖縄95.0、滋賀83.7、福岡81.0と高く、山形36.3、秋田36.8は低めです。 データを見る
補助金・公共調達の公表記録がある会社は一部
gBizINFO(経済産業省が運営する法人情報サイト)から2026-08-06に取得した記録上、補助金の交付記録がある会社は131,760社で、全収録法人の3.0%です。公共調達の受注記録がある会社は23,571社で、0.55%です(割合は当サイトで計算)。gBizINFOが全ての補助金・調達を載せているかは確かめていないため、「記録上」の数字として読んでください。 データを見る
gBizINFOに掲載された落札額の推移
gBizINFOに掲載された公共調達の落札額は、2015年の2,111.4億円から2024年の14,414.2億円へ増えています。2025年は13,760.9億円、2026年は8月6日までの途中値で11,397.6億円です。年ごとの収録範囲が同じかは確かめていないため、この推移だけで官公需全体の規模の変化は判断できません。 データを見る
国が進めていること
賃上げと中堅・中小企業の変革を後押し
骨太方針2026は、2029年度までに実質賃金で年1%程度の上昇を定着させること、最低賃金を遅くとも2030年代前半に全国平均1,500円とすることを掲げます。「強い中堅・中小企業」が主役となって地域経済を引っ張る、という位置付けです。省力化投資促進プランの実行・拡充や、都道府県・市町村による生産性向上支援の後押しも書かれています。
出典:内閣府(経済財政諮問会議)「経済財政運営と改革の基本方針2026」(2026-07-21)
官公需の価格の決め方を2027年度末までに見直す
同じ骨太方針2026は、官公需(国や自治体の発注)について、実勢価格を踏まえた予定価格の作成や、最低制限価格制度などの導入・適用を2027年度末までに100%実施するとしています。進み具合の見える化と、地方公共団体への伴走支援も挙げています。
出典:内閣府(経済財政諮問会議)「経済財政運営と改革の基本方針2026(本文)」(2026-07-21)
スタートアップは10万社を将来目標に
スタートアップ育成5か年計画を強めたパッケージで、スケールアップ、ディープテック、地域のスタートアップの3本柱を掲げます。概要版では、スタートアップ数は約16,100から約25,000に増え、将来の目標は10万社です。創業時の手続の集約、自治体による随意契約(4号随契)の活用、M&Aガイダンスの策定なども並びます。
出典:内閣官房(日本成長戦略本部 スタートアップ政策推進分科会)「スタートアップ総力創出パッケージ(概要)」(2026-05-20)
下請法が取適法に。手形払いは禁止
中小受託取引適正化法(取適法)が2026年1月1日に施行されました。協議に応じない一方的な代金決定の禁止、手形払いの禁止、振込手数料を受託側に負担させることの禁止が入りました。資本金の基準に当たらなくても、従業員数(製造委託等は300人、役務提供委託等は100人)で対象になる場合があります。2026年度の勧告は10月9日現在で16件です。
出典:公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)特設頁・令和8年度勧告一覧」(2026-01-01)
免税事業者からの仕入れ控除は2026年10月から70%
令和8年度税制改正で、インボイス制度の経過措置が見直されました。免税事業者などからの仕入れの控除割合は、2026年10月から2年間70%、2028年10月から2年間50%、2030年10月から1年間30%、2031年10月以降は0%です。あわせて、1つの免税事業者などからの仕入れの合計額(税込み)がその年または事業年度で1億円(改正前は10億円)を超える場合、超えた部分は控除できなくなりました。この1億円の制限は2026年10月1日以後に開始する課税期間から適用されるため、いつから当てはまるかは自社の課税期間によって違います。自社への当てはめは税理士など専門家に確かめてください。
出典:国税庁「インボイス制度の見直し(経過措置)。日付は控除割合の切り替え日」(2026-10-01(経過措置の切り替え日。ページに更新日の記載なし))
法人の登記情報を行政がデータで共有
法人ベース・レジストリの提供が2026年3月24日に始まりました。約500万件の商業・法人登記の情報を、法人番号をキーに行政機関がデータで使えるようにする仕組みです。登記事項証明書の添付の省略や、申請項目の自動入力などが想定されています。頁では、まずは行政機関向けとされています。
出典:デジタル庁「法人ベース・レジストリ」(2026-03-24)
データから言えること
方針は手厚いが、公表記録で国のお金とつながる会社は一部
骨太方針2026は省力化投資や官公需の価格転嫁を前に出しています。一方、gBizINFOの記録上、補助金の交付記録がある会社は全収録法人の3.0%、公共調達の受注記録は0.55%です。申請数や不採択の数は持っていないため、なぜ少ないかはこのデータからは言えません。
受注実績のある会社には、単価を見直す根拠が増える(推測を含む)
官公需で実勢価格を踏まえた予定価格づくりが2027年度末までに求められます。gBizINFOに公共調達の受注記録がある23,571社にとっては、労務費や材料費の上昇を見積もりに反映しやすくなる局面とみられます(推測)。実際に単価がどう変わるかは、このデータでは測っていません。
小さな受託側には、取適法とインボイスが同時に来る可能性(推測を含む)
被保険者数が分かる法人の70.5%は被保険者1〜10人です。ただし、このうち受託取引をしている会社や免税事業者がどれだけあるかは、このデータでは分かりません。小規模な受託側で免税事業者の会社には、取適法で価格協議を求めやすくなる一方、インボイスの控除割合の縮小で取引先から課税事業者への転換を求められる圧力も強まるとみられます(推測)。取適法の2026年度の勧告16件(10月9日現在)のうち11件は「不当な経済上の利益の提供要請」です。
地域の新設の差は、地域スタートアップ施策の対象と重なる(推測を含む)
既存1万社あたりの新設は東京105.3に対し、山形36.3、秋田36.8です。スタートアップ総力創出パッケージの地域の柱や、骨太方針2026のローカル・ゼブラ企業の支援は、この差に向けた施策と読めます(推測)。
公的な会社データは行政の中で先に整う(推測を含む)
法人ベース・レジストリはまず行政機関向けで、民間への提供予定は頁に書かれていません。当面は、法人番号で公的な記録を束ねた民間のデータが、会社を調べる手段として使われ続けるとみられます(推測)。
どう動くか
個人
- 起業を考える人は、トップ頁(/houjin)の地図で既存1万社あたりの新設の多さを見て、場所を考える材料の一つにできます。
- 個人事業者でインボイスの登録をした人は、新設された「3割特例」(令和9年分・10年分、法人は対象外)が自分に当てはまるかを税理士など専門家に確かめましょう。
- 小さな会社で受託の仕事をしている人は、取適法の従業員基準で自社が新たに守られる側になっていないかを、公正取引委員会の頁で確かめましょう。
- スタートアップを始める人は、政府調達のスタートアップ比率3%目標やSBIR、自治体の4号随契など、行政を最初の顧客にする入口があることを知っておくと選択肢が広がります。
- 転職や取引先選びで会社を調べるときは、補助金・調達の記録が無いことを「実績が無い」と読まず、記録の範囲と時点を確かめましょう。
企業
- 委託する側の会社は、手形払い、振込手数料の相手負担、協議に応じない価格の据え置きをやめ、取適法に沿った取引条件に改めましょう。
- 受託する側の会社は、価格の協議を書面で求め、労務費や原材料費の上昇を示す資料をそろえておきましょう。
- 官公需に参加している会社は、実勢価格を踏まえた予定価格づくりが進むことを前提に、見積もりの根拠を整えましょう。同業の受注記録は /houjin/chotatsu で見られます。
- 免税事業者からの仕入れが多い会社は、控除割合の段階的な縮小と、自社の課税期間から当てはまる年1億円の上限を前提に、取引先と価格や登録の話を早めに始め、扱いは専門家に確かめましょう。
- 補助金を受けた会社は、交付の記録がgBizINFOに載り、取引先や金融機関から見られることもある前提で、受けた後の成果を説明できるようにしておきましょう。
読むときの注意
- 新設の件数は法人番号の公表日で数えており、登記の日とは違います。同じ時刻に取得してもトップ頁(32,474社)と /houjin/new(32,630社)で件数が違い、その理由は確かめていません(未検証)。本文の90日の件数は /houjin/new の 2026-10-14 取得時点の値です。
- 1〜10人などの規模は社会保険の被保険者数で、従業員数とは同じではありません。割合の分母は被保険者数が分かる2,762,827社で、収録法人4,323,639社全体ではありません。
- 被保険者数・補助金・公共調達の数字は gBizINFO から 2026-08-06 に取得したもので、それ以降の動きは入っていません。gBizINFO が全ての補助金・調達を載せているかは確かめていません。
- 東京の新設の割合(約34%)と既存法人の割合(24.2%)は、集計の時点と期間が違う数字です。収録している4,323,639社に閉鎖した法人が含まれるか、規模の区分が付いた会社数と被保険者数がある会社数が一致しない理由は、確かめていません。
- インボイスの年1億円の制限は2026年10月1日以後に開始する課税期間からの適用です。経済産業省・中小企業庁の文書(中小企業白書2026など)は本文を確かめられなかったため、この記事では扱っていません。
- このコラムは公表資料の整理で、個別の投資・購入・借り入れ・申請の助言ではありません。