攻撃手法と防御
公表事例が「何が起きたか」を伝えるのに対し、このページは「なぜ起きるか(攻撃手法)」と「どう防ぐか(防御)」を扱います。手法は MITRE ATT&CK を底本にし、日本の公表事例で実際に多い入口の順に並べています。攻撃を再現する手順やコードは載せず、仕組み・検知・防御に絞っています。
公開アプリケーションの脆弱性悪用 T1190
日本の公表事例での入口: ソフトウェア・機器の脆弱性 / 設定・管理の不備
インターネットに面したWebサーバ・VPN・業務アプリの弱点(ソフトのバグ・一時的な不具合・設定ミス)を突いて、最初の侵入口にする。公開製品の既知脆弱性が狙われ、パッチ公開から適用までの窓が危ない。
検知の手がかり
WAF・アクセスログの異常(既知攻撃パターン、通常ない経路への多数リクエスト)。公開資産の予期しない構成変化。
防御(受入基準つき)
| 対策 | できている状態(受入基準) |
|---|---|
| 脆弱性スキャンと優先パッチ | 公開資産の一覧があり、CISA KEV掲載の未適用が0件。 |
| 不要な公開面を閉じる | ネットワーク分離・通信フィルタで、業務に不要な公開ポート・経路がない。 |
| アプリの分離・最小権限 | 侵入されても横移動できないよう権限とサンドボックスを絞る。 |
出典: MITRE ATT&CK(T1190)の記述を底本に和訳・要約。© MITRE ATT&CK。
正規アカウントの悪用 T1078
日本の公表事例での入口: ID・パスワードなど認証情報の悪用
盗んだ・漏れた既存アカウントの認証情報を使い、正規利用者に見せかけて侵入・居座り・権限昇格する。正規の入口を通るため検知が難しい。
検知の手がかり
普段と違う時間帯・場所・端末からのログイン。特権アカウントの異常操作。同一IDの同時多地点ログイン。
防御(受入基準つき)
| 対策 | できている状態(受入基準) |
|---|---|
| 多要素認証(MFA) | 全特権アカウントでMFAが有効。 |
| アカウント棚卸し | 退職者・不要権限を定期(例90日)で無効化した記録がある。 |
| 特権アカウント管理 | 特権操作が分離・記録され、後から追える。 |
出典: MITRE ATT&CK(T1078)の記述を底本に和訳・要約。© MITRE ATT&CK。
総当たり(ブルートフォース) T1110
日本の公表事例での入口: ID・パスワードなど認証情報の悪用
パスワードが不明なとき、推測・辞書・漏洩リストの使い回しで繰り返しログインを試す。入手したハッシュをオフラインで解く場合もある。1つのパスワードを多数アカウントに試すパスワードスプレーを含む。
検知の手がかり
短時間の大量ログイン失敗。1アカウントへの多IPからの試行。複数アカウントへの同一パスワード試行。
防御(受入基準つき)
| 対策 | できている状態(受入基準) |
|---|---|
| MFAと試行制限 | 失敗回数の閾値でロックし、MFAを必須にする。 |
| 強いパスワードポリシー | 漏洩パスワードとの突合で既知の弱いものを拒否する。 |
| 利用状況の監視 | 異常なログイン試行を検知・通知できる。 |
出典: MITRE ATT&CK(T1110)の記述を底本に和訳・要約。© MITRE ATT&CK。
フィッシング T1566
日本の公表事例での入口: フィッシング・電話などで聞き出された
メール等で送る電子的なソーシャルエンジニアリング。不特定多数への一斉型と、特定の個人・企業を狙うスピアフィッシングがある。リンクや添付で認証情報や端末を奪う。
検知の手がかり
外部からの不審メールの急増。偽ログインページへの誘導URL。送信ドメイン偽装(SPF/DKIM/DMARCの不整合)。
防御(受入基準つき)
| 対策 | できている状態(受入基準) |
|---|---|
| DMARC等の送信ドメイン認証 | DMARCをrejectで運用し、なりすまし受信を減らす。 |
| 添付・Webコンテンツの検査 | 添付をサンドボックスで検査し、不審Webを制限。 |
| 利用者教育 | 定期訓練を行い、開封・報告率を計測している。 |
出典: MITRE ATT&CK(T1566)の記述を底本に和訳・要約。© MITRE ATT&CK。
データ暗号化による被害(ランサムウェア) T1486
日本の公表事例での入口: 攻撃・不正アクセス(被害の最終段階。入口は別技術)
侵入後、ローカル・共有ドライブのファイルを暗号化して利用不能にし、事業や復旧を止める。身代金要求を伴うことが多い。これは被害の最終段階で、入口は脆弱性悪用や認証情報の悪用など別の技術。
検知の手がかり
短時間の大量ファイル改変・拡張子変更。バックアップの削除。端末の異常な暗号化挙動。
防御(受入基準つき)
| 対策 | できている状態(受入基準) |
|---|---|
| オフライン/世代バックアップ | ネットから切り離した世代バックアップがある。 |
| 復旧の実地訓練 | 実際に復旧を試した記録がある(あるだけでは不十分)。 |
| 端末の挙動防御 | 大量改変や復旧妨害の挙動を検知・遮断できる。 |
出典: MITRE ATT&CK(T1486)の記述を底本に和訳・要約。© MITRE ATT&CK。
サプライチェーン侵害 T1195
日本の公表事例での入口: 部品・ツールへの不正なプログラムの混入
最終利用者に届く前の製品・配布経路を改ざんする。開発環境・更新の仕組み・依存ライブラリ・ハードウェアのどの段階でも起こりうる。
検知の手がかり
依存の予期しない変更。署名の不一致。更新配信元の異常。既知の悪性パッケージとの一致。
防御(受入基準つき)
| 対策 | できている状態(受入基準) |
|---|---|
| SBOMと依存の脆弱性突合 | 部品表(SBOM)があり、GHSA・CISA KEVと突合している。 |
| 更新の検証 | 署名・ブート完全性で改ざんされた更新を弾く。 |
| 導入ソフトの制限 | 許可されたソフト・配布元のみ導入できる。 |
出典: MITRE ATT&CK(T1195)の記述を底本に和訳・要約。© MITRE ATT&CK。
外部公開のリモート接続 T1133
日本の公表事例での入口: 設定・管理の不備(公開リモート接続)
VPN・Citrixなど外部向けのリモート接続を使って侵入・居座りする。有効な認証情報があれば正規利用に見える。設定や公開範囲の不備が狙われる。
検知の手がかり
普段と違う地理・端末からのVPN接続。無効化したはずの接続の利用。多数の認証失敗後の成功。
防御(受入基準つき)
| 対策 | できている状態(受入基準) |
|---|---|
| リモート接続のMFA | 外部リモート接続すべてにMFAを課す。 |
| 公開範囲の棚卸し | 公開ポート・接続経路を定期確認し、不要を閉じる。 |
| ネットワーク分離 | リモート到達範囲を業務上必要な区画に限定。 |
出典: MITRE ATT&CK(T1133)の記述を底本に和訳・要約。© MITRE ATT&CK。
クラウドストレージからの取得 T1530
日本の公表事例での入口: 設定・管理の不備(クラウドの公開設定)
S3・Azure Storage・Google Cloud StorageやSaaS上のデータに、公開設定ミスや弱い権限で到達し取得する。日本の公表事例でも『設定・管理の不備』は最多の入口。
検知の手がかり
バケット/ストレージの公開設定変更。普段ない大量ダウンロード。外部からの匿名アクセス。
防御(受入基準つき)
| 対策 | できている状態(受入基準) |
|---|---|
| 権限の最小化 | 公開バケット0を定期確認し、ファイル権限を絞る。 |
| 保存時暗号化 | 機微データは保存時に暗号化する。 |
| アクセスログ保全 | 誰が何に到達したか後から追える。 |
出典: MITRE ATT&CK(T1530)の記述を底本に和訳・要約。© MITRE ATT&CK。
遠隔操作ツールの悪用 T1219
日本の公表事例での入口: 偽の警告・詐欺サイトからの遠隔操作
正規の遠隔操作ソフトを悪用し、信頼された端末間に対話的な指令(C2)経路を作る。偽の警告や詐欺サイトで利用者に導入させるサポート詐欺の手口がある。
検知の手がかり
業務で使わない遠隔操作ソフトの起動・通信。外部への常時接続。利用者の操作と一致しないセッション。
防御(受入基準つき)
| 対策 | できている状態(受入基準) |
|---|---|
| 実行の許可リスト | 許可外のリモート操作ソフトの実行を遮断。 |
| 通信フィルタ | 既知のC2・遠隔操作サービスへの通信を遮断。 |
| サポート詐欺の周知 | 偽警告からの導入を利用者に周知している。 |
出典: MITRE ATT&CK(T1219)の記述を底本に和訳・要約。© MITRE ATT&CK。
認証処理の改ざん T1556
日本の公表事例での入口: ID・パスワードなど認証情報の悪用
認証の仕組み自体を書き換えて、認証情報を取得したり不正アクセスを通す。MFAの迂回や、認証サーバ・認証設定の改ざんを含む。
検知の手がかり
認証関連の設定・レジストリ・ファイルの変更。認証ログの欠落・改ざん。想定外のMFA登録。
防御(受入基準つき)
| 対策 | できている状態(受入基準) |
|---|---|
| MFA登録の変更通知 | MFA登録の追加・変更を検知・通知する。 |
| 認証設定の変更監査 | 認証関連の設定変更を記録・監視する。 |
| 特権の最小化 | 認証基盤を触れる権限を絞る。 |
出典: MITRE ATT&CK(T1556)の記述を底本に和訳・要約。© MITRE ATT&CK。
手法と緩和策の記述は MITRE ATT&CK (Enterprise) を底本にした和訳・要約です。© MITRE ATT&CK。入口の順位は当社「公表事例DB」の分類に基づく実測です。