防サイバー防衛相談室公表事例の台帳

11月3日 18:39 更新

攻撃手法と防御

公表事例が「何が起きたか」を伝えるのに対し、このページは「なぜ起きるか(攻撃手法)」と「どう防ぐか(防御)」を扱います。手法は MITRE ATT&CK を底本にし、日本の公表事例で実際に多い入口の順に並べています。攻撃を再現する手順やコードは載せず、仕組み・検知・防御に絞っています。

公開アプリケーションの脆弱性悪用 T1190

日本の公表事例での入口: ソフトウェア・機器の脆弱性 / 設定・管理の不備

インターネットに面したWebサーバ・VPN・業務アプリの弱点(ソフトのバグ・一時的な不具合・設定ミス)を突いて、最初の侵入口にする。公開製品の既知脆弱性が狙われ、パッチ公開から適用までの窓が危ない。

検知の手がかり

WAF・アクセスログの異常(既知攻撃パターン、通常ない経路への多数リクエスト)。公開資産の予期しない構成変化。

防御(受入基準つき)

対策できている状態(受入基準)
脆弱性スキャンと優先パッチ公開資産の一覧があり、CISA KEV掲載の未適用が0件。
不要な公開面を閉じるネットワーク分離・通信フィルタで、業務に不要な公開ポート・経路がない。
アプリの分離・最小権限侵入されても横移動できないよう権限とサンドボックスを絞る。

出典: MITRE ATT&CK(T1190)の記述を底本に和訳・要約。© MITRE ATT&CK。

正規アカウントの悪用 T1078

日本の公表事例での入口: ID・パスワードなど認証情報の悪用

盗んだ・漏れた既存アカウントの認証情報を使い、正規利用者に見せかけて侵入・居座り・権限昇格する。正規の入口を通るため検知が難しい。

検知の手がかり

普段と違う時間帯・場所・端末からのログイン。特権アカウントの異常操作。同一IDの同時多地点ログイン。

防御(受入基準つき)

対策できている状態(受入基準)
多要素認証(MFA)全特権アカウントでMFAが有効。
アカウント棚卸し退職者・不要権限を定期(例90日)で無効化した記録がある。
特権アカウント管理特権操作が分離・記録され、後から追える。

出典: MITRE ATT&CK(T1078)の記述を底本に和訳・要約。© MITRE ATT&CK。

総当たり(ブルートフォース) T1110

日本の公表事例での入口: ID・パスワードなど認証情報の悪用

パスワードが不明なとき、推測・辞書・漏洩リストの使い回しで繰り返しログインを試す。入手したハッシュをオフラインで解く場合もある。1つのパスワードを多数アカウントに試すパスワードスプレーを含む。

検知の手がかり

短時間の大量ログイン失敗。1アカウントへの多IPからの試行。複数アカウントへの同一パスワード試行。

防御(受入基準つき)

対策できている状態(受入基準)
MFAと試行制限失敗回数の閾値でロックし、MFAを必須にする。
強いパスワードポリシー漏洩パスワードとの突合で既知の弱いものを拒否する。
利用状況の監視異常なログイン試行を検知・通知できる。

出典: MITRE ATT&CK(T1110)の記述を底本に和訳・要約。© MITRE ATT&CK。

フィッシング T1566

日本の公表事例での入口: フィッシング・電話などで聞き出された

メール等で送る電子的なソーシャルエンジニアリング。不特定多数への一斉型と、特定の個人・企業を狙うスピアフィッシングがある。リンクや添付で認証情報や端末を奪う。

検知の手がかり

外部からの不審メールの急増。偽ログインページへの誘導URL。送信ドメイン偽装(SPF/DKIM/DMARCの不整合)。

防御(受入基準つき)

対策できている状態(受入基準)
DMARC等の送信ドメイン認証DMARCをrejectで運用し、なりすまし受信を減らす。
添付・Webコンテンツの検査添付をサンドボックスで検査し、不審Webを制限。
利用者教育定期訓練を行い、開封・報告率を計測している。

出典: MITRE ATT&CK(T1566)の記述を底本に和訳・要約。© MITRE ATT&CK。

データ暗号化による被害(ランサムウェア) T1486

日本の公表事例での入口: 攻撃・不正アクセス(被害の最終段階。入口は別技術)

侵入後、ローカル・共有ドライブのファイルを暗号化して利用不能にし、事業や復旧を止める。身代金要求を伴うことが多い。これは被害の最終段階で、入口は脆弱性悪用や認証情報の悪用など別の技術。

検知の手がかり

短時間の大量ファイル改変・拡張子変更。バックアップの削除。端末の異常な暗号化挙動。

防御(受入基準つき)

対策できている状態(受入基準)
オフライン/世代バックアップネットから切り離した世代バックアップがある。
復旧の実地訓練実際に復旧を試した記録がある(あるだけでは不十分)。
端末の挙動防御大量改変や復旧妨害の挙動を検知・遮断できる。

出典: MITRE ATT&CK(T1486)の記述を底本に和訳・要約。© MITRE ATT&CK。

サプライチェーン侵害 T1195

日本の公表事例での入口: 部品・ツールへの不正なプログラムの混入

最終利用者に届く前の製品・配布経路を改ざんする。開発環境・更新の仕組み・依存ライブラリ・ハードウェアのどの段階でも起こりうる。

検知の手がかり

依存の予期しない変更。署名の不一致。更新配信元の異常。既知の悪性パッケージとの一致。

防御(受入基準つき)

対策できている状態(受入基準)
SBOMと依存の脆弱性突合部品表(SBOM)があり、GHSA・CISA KEVと突合している。
更新の検証署名・ブート完全性で改ざんされた更新を弾く。
導入ソフトの制限許可されたソフト・配布元のみ導入できる。

出典: MITRE ATT&CK(T1195)の記述を底本に和訳・要約。© MITRE ATT&CK。

外部公開のリモート接続 T1133

日本の公表事例での入口: 設定・管理の不備(公開リモート接続)

VPN・Citrixなど外部向けのリモート接続を使って侵入・居座りする。有効な認証情報があれば正規利用に見える。設定や公開範囲の不備が狙われる。

検知の手がかり

普段と違う地理・端末からのVPN接続。無効化したはずの接続の利用。多数の認証失敗後の成功。

防御(受入基準つき)

対策できている状態(受入基準)
リモート接続のMFA外部リモート接続すべてにMFAを課す。
公開範囲の棚卸し公開ポート・接続経路を定期確認し、不要を閉じる。
ネットワーク分離リモート到達範囲を業務上必要な区画に限定。

出典: MITRE ATT&CK(T1133)の記述を底本に和訳・要約。© MITRE ATT&CK。

クラウドストレージからの取得 T1530

日本の公表事例での入口: 設定・管理の不備(クラウドの公開設定)

S3・Azure Storage・Google Cloud StorageやSaaS上のデータに、公開設定ミスや弱い権限で到達し取得する。日本の公表事例でも『設定・管理の不備』は最多の入口。

検知の手がかり

バケット/ストレージの公開設定変更。普段ない大量ダウンロード。外部からの匿名アクセス。

防御(受入基準つき)

対策できている状態(受入基準)
権限の最小化公開バケット0を定期確認し、ファイル権限を絞る。
保存時暗号化機微データは保存時に暗号化する。
アクセスログ保全誰が何に到達したか後から追える。

出典: MITRE ATT&CK(T1530)の記述を底本に和訳・要約。© MITRE ATT&CK。

遠隔操作ツールの悪用 T1219

日本の公表事例での入口: 偽の警告・詐欺サイトからの遠隔操作

正規の遠隔操作ソフトを悪用し、信頼された端末間に対話的な指令(C2)経路を作る。偽の警告や詐欺サイトで利用者に導入させるサポート詐欺の手口がある。

検知の手がかり

業務で使わない遠隔操作ソフトの起動・通信。外部への常時接続。利用者の操作と一致しないセッション。

防御(受入基準つき)

対策できている状態(受入基準)
実行の許可リスト許可外のリモート操作ソフトの実行を遮断。
通信フィルタ既知のC2・遠隔操作サービスへの通信を遮断。
サポート詐欺の周知偽警告からの導入を利用者に周知している。

出典: MITRE ATT&CK(T1219)の記述を底本に和訳・要約。© MITRE ATT&CK。

認証処理の改ざん T1556

日本の公表事例での入口: ID・パスワードなど認証情報の悪用

認証の仕組み自体を書き換えて、認証情報を取得したり不正アクセスを通す。MFAの迂回や、認証サーバ・認証設定の改ざんを含む。

検知の手がかり

認証関連の設定・レジストリ・ファイルの変更。認証ログの欠落・改ざん。想定外のMFA登録。

防御(受入基準つき)

対策できている状態(受入基準)
MFA登録の変更通知MFA登録の追加・変更を検知・通知する。
認証設定の変更監査認証関連の設定変更を記録・監視する。
特権の最小化認証基盤を触れる権限を絞る。

出典: MITRE ATT&CK(T1556)の記述を底本に和訳・要約。© MITRE ATT&CK。

手法と緩和策の記述は MITRE ATT&CK (Enterprise) を底本にした和訳・要約です。© MITRE ATT&CK。入口の順位は当社「公表事例DB」の分類に基づく実測です。