日本が抱える大問題、少子高齢化によって発生する実害は非常に多岐に渡ります。
それらは学校で習った人も、ニュースで知っている人も多く、今や一般常識として広く知られていることばかりです。
しかし、これらの問題の解決または対策のため、私たちの生活を少しでも楽にするために、医療や介護に関わる費用の払い戻しの制度、様々な税金の控除があることはあまり知られていません。
条件を満たしていれば、役所で申請するだけで受けられるものばかりで、知っていればいざと言うときに得をするものばかりです。
逆に知らないと後になってから「あのとき申請しておけば……」と思うものばかりです。
ここはひとつ、知識として知っておいて下さい。
後々必ず役に立ちますから。
住宅に関わる税金の控除
空き家を改修するだけで得られる控除
2016年に空き家に関わる税制が新たに創設されました。
「空き家譲渡や三世代同居改修の特別控除」と呼ばれるものです。
少子高齢化に伴って、日本の住宅の内の10%以上が空き家になっています。
さらに年間6万戸以上も空き家が発生しており、20年後には40%にまで上るとされています。
また、ただ単に少子高齢化が進んでいるだけではありません。
空き家はそのまま放置しているだけでも、何もない土地を持っているときの6分の1まで固定資産税が下がります。
亡くなった両親から相続した家をそのまま残している、という例もはいくつもあるのが実情です。
しかし放置していると、治安の悪化や災害による倒壊が懸念されます。
最近では、倒壊の恐れがある空き家を放置している場合には、地方自治体が固定資産税を元に戻して請求する対策を取り始めています。
そのような中で制定されたのが、今回の特別控除です。
この控除によれば、「1981年以前に建てられた住宅を相続した後、耐震改修や解体を行った際に、最大250万円の標準的な費用の10%を所得税から控除する」とされています。
もちろん、改修や解体後に申告する必要はありますが、最大で25万円も費用が返ってくる制度です。
適切に管理されていないとされる空き家の売却には、譲渡所得の特別控除まで設けられています。
相続人が耐震改修か解体を行えば、3000万円もの特別控除を受けられます。
子育てなどで今後その住宅を使用するつもりであれば、改修して手元に置く。
それ以外であれば改修後に売却する、というように使い分けるのがおすすめです。
バリアフリーの費用が9割も返ってくる!?
両親の介護や、配偶者のためにバリアフリーなどのリフォームを行う方にも、お得な情報があります。
リフォームはかなり支払う金額が大きくなりますが、きちんと申込みをすればお金が返ってきます。
しかも、負担額の9割にも上ることも。
バリアフリーや省エネのための工事は、基準を満たしていれば費用の10%が所得税から控除されます。
介護を目的としたリフォームであるとされるバリアフリー化であれば、介護保険からの支給もあるのです。
手すりの設置やすべり防止のための床材の変更、和式便所から様式便所への交換だけでも、支給範囲の事業に含まれます。
諸々のリフォームに合計で100万円近くかかるとすれば、90万円も返ってくるので、これだけは絶対に申請をし忘れないでください。
また、介護以外でも、エコのためのリフォームや設備の増設などへは、多くの自治体で助成金制度が設けられています。
明らかにエコに配慮した太陽光発電対応の蓄電器の設置費用であっても、ただ単に庭に木を植えたり、生垣を作ったりするだけであっても、最大20万円の助成金を得られる場合があります。
代表的な例として挙げられるのは、品川区ではベランダにプランターを置くだけで助成金の対象となることです。
もちろん申請が必須なので、忘れないように注意しましょう。
相続税を最大2110万円分も非課税にする裏ワザ
相続税に関しても、贈与税の配偶者控除を利用することで、かなりの金額の控除を受けられます。
配偶者控除は、結婚してから20年以上の夫婦の夫か妻のどちらかしか利用することができません。
しかし条件さえクリアしていれば、どちらかが不動産を贈与した場合に、2000万円までが非課税になります。
贈与税の基礎控除110万円もありますから、合計で2110万円の控除が最大で受けられます。
自分が亡くなった後に発生する相続税の対策として活用可能です。
この制度の活用し、夫婦の共同名義にしておいた居住用不動産を売却すると、夫と妻の双方に3000万円の売却益の控除がかかり、合計6000万円もの売却益が非課税となります。
住居の売却益に対する課税は大きなデメリットと考えられていますが、土地と家屋を共同名義にして居住用不動産としておけば、そのデメリットもあっさりとなくせます。
住宅の売却を考えているのならば、ぜひお試しください。
また、こちらの控除は払戻しの対象になりません。
払戻しとは、病気などで配偶者が余命いくばくとなった場合などに、死亡日以前の3年間に財産を贈与することを指します。
この期間に贈与された財産は、相続税逃れのために不当贈与が行われたとされ、課税されます。
配偶者控除に限っては払戻しの対象にはならないので、急いで控除を受けようとしても、大丈夫なのです。
医療費の控除は高齢者の医療費からED治療費まで
次は、医療や介護費用についてです。
これらは高齢者にとってはかなりの出費となります。
入院したりデイサービスを受けたりして、高額の負担に毎月苦しめられている家庭は日本中に少なくないのではないでしょうか。
しかし、「高額医療・高額介護合算療養費制度」を利用すれば、自己負担額がガクッと減り、最低で月々4万円から4万5千円程度、高くとも8万円程度に抑えられます。
利用できる人は、同一世帯内に高額の医療費が掛かった人と、高額の介護費がかかった人がいる場合です。
もちろん、医療費と介護費が同じ人にかかった場合でも問題ありません。
高額の医療費が掛かった場合に、国民保健や健康保険の組合に「限度額適用認定証」をもらうだけです。
一度これを貰っておけば、高額の治療費を払った後でもお金が返ってきます。
まだ支払っていない場合でも、これから出費が必要になるのであれば、認定証を貰った後に、自己負担分のお金を用意するだけで結構です。
ただし、所得や年金額、収入、さらに年齢などによって限度額が設けられていいます。
認定証を取得するためには、市町村の役所の介護保険窓口などに申請する必要があります。
窓口で相談をした上で、自分や自分の世帯が取得できるかを判明させておきましょう。
また、年金所得者や個人営業をしている方は、確定申告時に年間の医療費が10万円を超えていれば、所得税の控除を受けられます。
計算法は単純で、医療保険分を除いた金額から10万円を引き、所得税率をかけた分が控除金額となります。
医療費には入院費などだけではなく、通院のために使った公共交通機関の代金、市販薬の代金、入れ歯の購入費も含まれます。
その上、風邪の治療や骨折などの治療にかかるお金だけではなく、EDの治療費や禁煙治療の料金なども医療費に入れてもいいことになっています。
ケースバイケースですが、整体や按摩、栄養ドリンクまでも控除の対象になり得ることがあります。
かなり広い範囲の出費を医療費として控除できるので、確定申告をする前にしっかりとチェックしておくと、思わぬ節税が可能になるでしょう。
葬儀や子供、家族に関わるお得な情報
最後に紹介するのは「こんなこと周りでは誰も知らない」と思うほど、知名度の低いものです。
埋葬料と埋葬費
「埋葬料」は、健康保険に加入している人が亡くなった時に、家族が受け取れるお金です。
被保険者の家族が亡くなった時に受け取れる「家族埋葬料」、親戚や知人の葬儀に支払われる「埋葬費」もあります。
埋葬料と家族埋葬料はそれぞれ5万円、埋葬費は火葬代、葬儀代の実費に対して最大で5万円も支払われます。
葬儀に関わることなので、おおっぴらにお金を取り戻すチャンスとは言い辛いですが、申請するだけで受け取れるお金です。
受け取らないのはもったいないので、忘れずに申請しましょう。
相続に関する費用や手続きについては、【みんなが選んだ終活】の下記記事が非常に参考になります。
「遺産相続における不動産の分け方とは?4つの方法を解説」をぜひご覧ください。
子育てファミリー世帯居住支援
次は、自分の子供や子供夫婦の間に孫が誕生した際にお金を取り戻せる嬉しい制度です。
自治体によって詳細は多岐に渡りますが、子育て世帯が市町村の民間の賃貸住宅に転居する際に、引っ越し費用や家賃が補助される制度です。
代表例として新宿区の制度を見てみましょう。
義務教育終了以前の子供がいる世帯が対象で、引っ越し費用が最大で20万円。
転居前の賃貸住宅よりも家賃が高くなるのであければ、その差額の最大2.5万円までが補助されます。
子供を安心した環境で育てたいと思い、再び実家の近くに引っ越すことになった際などに上手に活用しましょう。
これに加えて仲介手数料や礼金もありますので、思った以上にお金が戻ってきますよ。
扶養家族が増える!? 税務署職員御用達のテクニック
最後に紹介するのは、扶養家族の増やし方です。
例えば、子供が一度は自立したものの、職を失ってしまったときなどに、もう一度扶養家族として組み込む方法として使われます。
子供が低収入や無収入だった場合に限りますが、所得税や住民税の扶養控除を行えます。
最大で10万円近くにまで上りますので、もしもの際はぜひとも活用してください。
ですが、それだけではありません。
私たち一般人が知らないこととして、扶養家族が「6親等以内の血族」と「3親等以内の姻族」が対象となっている事実があります。
税務署の職員達は扶養家族の制度や控除について深く知っており、ある種の常識のように知られています。
つまりは、これ以内の親類縁者に収入が少ない人がいる場合には、扶養家族に組み込んで控除を受けることができるのです。
実際に税務署の職員はこれを活用して、親類縁者を扶養家族に入れていることが多いそうです。
まとめ
制度をうまく活用すると、税金や治療費などの出費に苦しめられなくなります。
ただ、今回紹介したのはほんの一部に過ぎません。
例えば、年金についても確定拠出年金を使えば、掛け金が全額所得控除となるケースもあります。
確定拠出年金は自身で掛け金の運用方法を支持するタイプの年金のため、運用リスクが高いと判断され、税制上でも優遇されているのです。
今回紹介した中で、「これは知っている」と思ったものはいくつありましたか?
一つも知らなかった、と言う方も多いのではないでしょうか。
私たちの生活にかなり役立つものばかりなのに、一般家庭には知られていないお得な制度はたくさん転がっています。
しかも条件を満たせば、面倒な手続きなどはほとんどなく「申請をするだけ」でお金が返ってくるような制度ばかり。
生活を少しでも楽にするためにも、優遇制度についてもっともっと知識を深めることをおすすめします。
利用する際には、所得税や住民税に注意しましょう。
これらが控除額を決定するようなケースがいくつもあります。
少なければ少ない程、控除額は大きくなり易いので、なるべく減らしておくと、一層利用しやすくなりますよ。
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