借金がある親の会社は継ぐか売却か|個人保証の外し方
執筆・編集:M&A支援機関の手数料DB 編集部(運営 合同会社Radineer)/更新日 2026年11月6日
親の個人保証は、子が継いでも当然には子へ移らず、売却する場合は最終契約で解除・移行を買い手の義務に位置付けるかが論点になります。赤字でも、売却が成約した例はあります。まず借入と保証の一覧を親と作り、無料の事業承継・引継ぎ支援センターへ持ち込んでください。[1,2,3,4]
借金がある親の会社を継ぐ・売却する・廃業するの比較
| 選択肢 | 会社の借金 | 親の個人保証 | 費用 | 相談先 |
|---|---|---|---|---|
| 子や親族が継ぐ | 承継後の扱いは取引金融機関に確かめる | 金融機関が必要性を改めて検討する | 特例措置を使うなら特例承継計画の提出が令和9年9月30日まで | 事業承継・引継ぎ支援センター、取引金融機関 [1,5,6] |
| 第三者へ売却(株式譲渡) | 譲渡後の扱いは最終契約案と取引金融機関で確かめる | 解除・移行を最終契約で譲受側の義務にするか検討する | 着手金・月額報酬・中間金・成功報酬の形が多い | 事業承継・引継ぎ支援センター、民間仲介・FA [2,7] |
| 第三者へ売却(事業譲渡) | 債務を引受人に移して元の債務者が免れる形(免責的債務引受)は、債権者と引受人の契約か、債務者と引受人の契約に債権者が承諾することで成り立つ | 残る借入の保証の扱いは取引金融機関に確かめる | 手数料のほか、株式会社が事業の全部や重要な一部を譲渡するなら株主総会の承認と特別決議の手続(譲渡資産の帳簿価額が総資産額の5分の1以下の一部譲渡は除く) | 事業承継・引継ぎ支援センター、民間仲介・FA [8,9] |
| 廃業 | 廃業後に手元に残った資金は「資金は残らず債務が残った」が15.8% | 企業の債務整理に伴う場合は、経営者保証ガイドライン(単独型)による保証債務の整理について協議会の支援を受けられる | 登記や法手続、設備の処分、在庫の処分など | 中小企業活性化協議会 [10,11] |
親の会社を継ぐか悩んだ人の中には、借入金と滞納の額を次のように書き出した人がいます。
借入金の額、滞納の額、と分けて書く形です(借入金の多い親の会社を継ぐか悩む子の例)。[12]
この投稿の人の場合は、借入金とは別に滞納も抱えていました。親の会社についても、借入金と滞納の額を分けて書き出し、誰が保証人かも確かめてください。
親の会社を継ぐとき、借金の個人保証はどう動くか
事業承継時の経営者保証は、原則として前経営者と後継者の双方から二重に求めないとされています。親が保証の解除を求めると、金融機関は親が実質的な経営権・支配権を持ち続けているか、借入返済能力などを勘案して判断します。[13,1]
子に保証を求めない可能性を検討する要件には、法人と経営者個人の資産・経理の分離や、法人のみの資産・収益力で返済できることなどが挙がっています。借金の額だけでなく、会社のお金と親個人のお金が分かれているかを先に見てください。経営者保証を理由に後継者候補が承継を拒むケースも、一定程度あると指摘されています。[1,13]
親の側にも、負債が承継を遅らせたと話す前経営者がいます。
会社の借入がすべて個人保証だったという前経営者の話です。[14]
借金のある親の会社を売却して個人保証を外す条件
買い手が保証を引き受けるかを契約で詰める
経営者保証を引き受けずに会社の現預金などを移し、倒産させる不適切な譲受側の存在が指摘されています。特に、経営者保証の引受けを前提に低い譲渡額で買うと提示された場合は注意するよう呼びかけています。譲渡側が債務超過の場合など譲受側の信用が特に重要な案件では、決算公告や税務申告書で譲受側の財務状況を確認します。[15,2]
赤字や債務超過でも売却できるか
日本公庫の事業承継マッチング支援の成約503件では、譲渡側の約3割が赤字でした。成約した譲渡側は年商5千万円以下が約7割、譲渡価格5百万円以下が約5割です。国の手数料簡易計算ツールは黒字企業の株式譲渡だけが対象で、赤字・債務超過企業や事業譲渡は対象外です。[3,7]
事業だけ切り出して借金を親の会社に残す場合
株式会社が事業の全部や重要な一部を譲渡するときは、効力発生日の前日までに株主総会の承認が要ります。ただし譲渡資産の帳簿価額が総資産額の5分の1以下の一部譲渡は除かれます。承継されない債務の債権者を害すると知って譲渡した場合、残された債権者は譲受会社に、承継した財産の価額を限度に履行を請求できます。[9]
買い手が親の会社の商号を使い続けると、譲渡会社の事業の債務を弁済する責任を負います。遅滞なくその責任を負わない旨を登記すれば、この責任は負いません。親の会社にも、別段の意思表示がない限り、同じ市町村と隣接市町村で20年間同じ事業をしてはならない義務が残ります。[9]
借金が多い会社の手数料と手取り
報酬基準額に株価・オーナー受取額・企業価値・移動総資産のどれを使うかは支援機関によって違い、報酬額が大きく変わり得ます。移動総資産レーマン方式は、株式価値に有利子負債とその他の負債(買掛金・未払金など)を足した額を基準に成功報酬を計算します。譲渡側が小規模な場合は最低報酬を設ける機関も多く、「売却代金の5%」と聞いていたのに最低報酬が適用されて想定より高くなったトラブル事例もあります。[7,15]
親が株を売った場合の譲渡所得は、譲渡価額から取得費と委託手数料等を引いて計算します。非上場株式の譲渡益の税率は所得税15%、住民税5%の計20%で、平成25年から令和29年までの各年分は復興特別所得税(基準所得税額×2.1%)も所得税と併せて申告・納付します。売却代金で親の保証付きの借金を返す場合の課税関係は資料には書かれていないので、税理士に確かめてください。[16]
親の会社の借金が返せず、継ぐのも売却も難しいときの個人保証
中小企業活性化協議会は、国が47都道府県に置いた公正中立な機関で、収益力改善・事業再生・廃業・再チャレンジを支援します。協議会の私的整理は、金融機関などの債権者以外に窮状を知られない手法を取り入れています。第一次段階の窓口相談までは無料で、第二次段階で外部専門家に依頼する場合は活動費等の一部を負担します。[11]
保証債務を整理するときは、一定期間の生計費に相当する額や華美でない自宅などを保証人の手元に残すことが検討されます。要件を満たせば、金融機関は一部履行後に残る保証債務の免除要請に誠実に対応するとされています。再生が極めて困難と判断された場合でも、円滑な廃業や保証人の再スタートに向けた助言や代理人弁護士の紹介を受けられます。[1,11]
中小企業庁の事例集には、早期の廃業決断で個人破産を回避できた例が載っています。同じ事例集には、事業継続に固執して破産に至った失敗事例もあります。[17]
親の会社の借金と個人保証を、継ぐ・売却の前に確認するリスト
- □ 金融機関ごとの借入残高と返済条件を一覧にした
- □ 親の保証が付いた借入と、親以外の家族や親戚が保証人の借入を分けた
- □ 社会保険や税金の滞納の有無と額を書き出した
- □ 直近3期分の決算書をそろえた[11]
- □ 会社と親個人の資産・経理が分かれている
- □ 親が退いたあと、経営にどう関わるかを決めた
- □ 譲渡側が債務超過の場合など譲受側の信用が特に重要な案件では、買い手候補の決算公告や税務申告書で財務状況を確認した[2]
- □ 最終契約で保証の解除・移行を想定する場合、譲受側の義務として明確に位置付けるかを検討した[2]
- □ 仲介者・FAを使う場合は、契約前に手数料の算定基準・金額・最低手数料・支払時期などを書面で示され、説明を受けた[2]
よくある質問
Q. 親が個人保証をしたまま亡くなったら、保証はどうなりますか。
A. 資料には書かれていないので、相続の手続きの期限も含めて弁護士に確かめてください。
Q. 借金がある親の会社の売却額は、どう見積もられますか。
A. 中小M&Aでは簿価純資産法・時価純資産法・類似会社比較法が多く、2024年度の登録支援機関経由の株式譲渡で EV/EBITDA が出せた1,987件では、中央値7.3倍でした。実際の譲渡価額は、条件を踏まえて譲渡側と譲受側の合意で決まります。
Q. 仲介会社を使わずに売却先を探す方法はありますか。
A. 事業承継・引継ぎ支援センターの第三者承継では、令和6年度実績の表示で、成約した譲渡企業の約7割が小規模事業者です。日本公庫の事業承継マッチング支援もあり、令和7年度の成約は172件でした。
Q. 仲介会社と契約したあとで、やめたり別の意見を聞いたりできますか。
A. 遵守事項では、依頼者がいつでも中途解約できることを明記し、専任条項があっても合理的な理由がなければセカンド・オピニオンを認めるとされています。契約終了後も手数料が発生し得るテール期間は、最長でも2年〜3年以内が目安です。
参考資料
- 経営者保証に関するガイドライン研究会「経営者保証に関するガイドライン」(平成25年12月・全国銀行協会HP掲載)(6.(2)②イ)(2013-12)https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/adr/sme/guideline.pdf
- 中小企業庁「M&A支援機関登録制度公募要領(令和8年度)」(遵守事項一覧=中小M&Aガイドライン第3版の行動指針)(遵守事項10(4))(令和8年度(2026年度)版)https://ma-shienkikan.go.jp/documents/M%26A%E6%94%AF%E6%8F%B4%E6%A9%9F%E9%96%A2%E7%99%BB%E9%8C%B2%E5%88%B6%E5%BA%A6%E5%85%AC%E5%8B%9F%E8%A6%81%E9%A0%98%EF%BC%88%E4%BB%A4%E5%92%8C%EF%BC%98%E5%B9%B4%E5%BA%A6%EF%BC%89.pdf
- 日本政策金融公庫 ニュースリリース「令和7年度『事業承継マッチング支援』実績について」(2026年4月24日)(令和7年度(2025年度)実績・2026-04-24公表)https://www.jfc.go.jp/n/release/pdf/topics_260424a.pdf
- 中小企業基盤整備機構 事業承継・引継ぎポータル「第三者承継」(POINT)(令和6年度実績の表示(2026-11-03取得時点))https://shoukei.smrj.go.jp/about/third-party/
- 国税庁タックスアンサー No.4439 非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)(概要)(2026-11-03取得時点)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4439.htm
- 中小企業基盤整備機構 ニュースリリース「令和7年度 事業承継・引継ぎ支援センターの実績について」(2026年5月29日)(■令和7年度の実績について)(令和7年度(2025年度)実績・2026-05-29公表)https://www.smrj.go.jp/press/2026/hkj3i8000000cu5o-att/20260529_press01.pdf
- 中小企業庁 M&A支援機関登録制度HP「手数料の簡易計算」(手数料の考え方)(2026-11-03取得時点)https://ma-shienkikan.go.jp/fee-calculation
- 民法(明治二十九年法律第八十九号)e-Gov法令API v2(第612条第1項)(e-Gov現行版(2026-11-03取得))https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/129AC0000000089?response_format=json
- 会社法(平成十七年法律第八十六号)e-Gov法令API v2(第四百六十七条第一項)(e-Gov現行版(2026-08-12施行の改正反映))https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/417AC0000000086?response_format=json
- 日本政策金融公庫総合研究所「引退廃業者の実態~『経営者の引退と廃業に関するアンケート』結果から~」(2019年12月12日)(調査時点2019年10月・分析対象500件(引退に伴い廃業した元経営者))https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/sme_findings191212_1.pdf
- 中小企業基盤整備機構「中小企業活性化協議会による支援」(2026-11-03取得時点)https://www.smrj.go.jp/sme/succession/revitalization/index.html
- 「Yahoo!知恵袋の投稿」(2017/2/6 22:38)https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10170188890
- 経営者保証に関するガイドライン研究会「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」(令和元年12月・全国銀行協会HP掲載)(2.(1))(2019-12)https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/adr/sme/guideline_sp.pdf
- 中小機構 事業承継・引継ぎポータル「事例を見たい」の投稿(掲載日の記載なし(2026-11-03取得))https://shoukei.smrj.go.jp/case/ca038.html
- 中小企業庁財務課・M&A支援機関登録制度事務局「昨今の中小M&A市場における動向を踏まえた周知・注意喚起について」(令和6年5月)(別紙 事例2)(2024-05)https://ma-shienkikan.go.jp/documents/%E3%80%90%E4%B8%AD%E5%B0%8F%E4%BC%81%E6%A5%AD%E3%80%91%E6%98%A8%E4%BB%8A%E3%81%AE%E4%B8%AD%E5%B0%8FM%EF%BC%86A%E5%B8%82%E5%A0%B4%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E5%8B%95%E5%90%91%E3%82%92%E8%B8%8F%E3%81%BE%E3%81%88%E3%81%9F%E5%91%A8%E7%9F%A5%E3%83%BB%E6%B3%A8%E6%84%8F%E5%96%9A%E8%B5%B7%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6_241030.pdf
- 国税庁タックスアンサー No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)(税率)(2026-11-03取得時点)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm
- 中小企業基盤整備機構 J-Net21「再チャレンジ支援を受けた中小企業者の取り組みをまとめた事例集を公表:中小企業庁」(2025年4月24日)(2025-04-24掲載)https://j-net21.smrj.go.jp/news/cek71k000000vsib.html
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