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赤字会社の売却|評価ゼロでも負債の引き継ぎは?

執筆・編集:M&A支援機関の手数料DB 編集部(運営 合同会社Radineer)/更新日 2026年11月6日

赤字の会社でも売却の例はあり、ある支援の成約503件のうち、譲渡側の約3割は赤字でした。ただし負債は売り手の都合だけでは外せず、借入金を買い手に移して自分が債務を免れるには、債権者の関与が要ります。まず決算書と負債・経営者保証の一覧をそろえ、株式譲渡・事業譲渡・廃業・債務の整理を比べてください。[1,2]

赤字会社の評価はどう決まり、ゼロと言われるのか

中小M&Aで多い株価の出し方は、簿価純資産法・時価純資産法・類似会社比較法です。純資産を土台にする方法では、負債が資産を上回る会社の計算はマイナスから始まります。そこに数年分の利益を足すこともあり、足す利益の種類と年数(通常1〜3年)は交渉で決まることが多いとされます。[3]

中小M&AではEV/EBITDA倍率法がよく使われ、EBITDAは簡易的に「営業利益+減価償却費」で計算することが多いとされます。営業利益が赤字でも、減価償却費を足してプラスになれば、倍率を掛ける計算はできます。赤字という言葉だけで評価を判断せず、この数字を自社の決算書で出してみてください。[3]

「評価ゼロ」と言われても、それで価格が確定したわけではありません。実際の譲渡価額は、条件を踏まえて譲渡側と譲受側の合意で決まります。仲介者は確定的なバリュエーションをせず、必要に応じて士業等の意見を求めるよう依頼者に伝えるものとされ、過大なバリュエーションを示す営業は禁止される例に挙げられています。[4,5]

負債が多くても、事業の評判を残せないかと考える人がいます。次の投稿は、ある飲食店についての相談です。

負債が資産を大きく上回る飲食店でも、評判のよい店を残せないかと尋ねています。[6]

(「Yahoo!知恵袋の投稿」)[6]

先の支援で成約した譲渡側は、年商5千万円以下が約7割、譲渡価格5百万円以下が約5割で、小規模な先が中心です。譲渡額をゼロ円にした場合の税務の扱いは資料には書かれていないので、税理士に確かめます。[1]

負債は誰が引き継ぐのか|株式譲渡と事業譲渡の違い

赤字や負債が買い手に付いていくのかを、株式譲渡と事業譲渡に分けて確かめます。

会社を売るとき、赤字や黒字の数字も買い手に付いていくのかを尋ねる投稿があります。[7]

(「Yahoo!知恵袋の投稿」)[7]

株式譲渡は株主が持つ株式を譲り渡す

株式譲渡で動くのは、株主が持つ株式です。負債の扱いはこの規定には書かれていないので、契約案で確かめ、士業にも確認します。譲渡制限株式を他人に譲り渡すときは、会社に取得の承認をするか否かの決定を請求できます。[8]

事業譲渡で負債や契約を移すには債権者や契約の相手方の関与が要る

事業譲渡で負債を買い手に移し、元の会社が免れる形にするには、債権者と引受人の契約か、債務者と引受人の契約への債権者の承諾が要ります。契約上の地位が移るのも相手方が承諾したときで、借りている店舗は貸主の承諾、従業員は本人の承諾が関わります。[2]

株式会社が事業の全部や重要な一部を譲渡するときは、効力発生日の前日までに株主総会で契約の承認を受けなければなりません。承認は特別決議で、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。反対する株主は、公正な価格での株式の買取りを会社に請求できます。[8]

負債を会社に残して事業だけを移す形には、制限があります。承継されない債務の債権者を害すると知って譲渡すると、残された債権者は譲受会社に、承継した財産の価額を限度に履行を請求できます。[8]

買い手が会社の商号を使い続ける場合は、譲渡会社の事業の債務を弁済する責任を負います。遅滞なく責任を負わない旨を登記すれば、この弁済責任は負いません。[8]

赤字会社の出口を負債・保証・費用・相談先で比べる

売却だけでなく、親族承継や廃業、債務の整理も同じ項目で並べます。

選択肢 負債 経営者保証 費用 相談先
第三者へ株式譲渡 株主が株式を譲渡する形。負債の扱いは契約案と士業に確認 解除・移行を譲受側の義務として最終契約に置くことを検討 着手金・月額報酬・中間金・成功報酬の形が多い。最低報酬を設ける機関も多い 事業承継・引継ぎ支援センター(無料) [8,5,9,10]
第三者へ事業譲渡 移すには債権者の関与が要る。承継されない債務の債権者を害すると知って譲渡すると、残された債権者は譲受会社に、承継した財産の価額を限度に履行を請求できる 金融機関に解除を求め、経営権の有無や返済能力などを踏まえた判断を受ける 上と同じ形の手数料に加え、消費税が課税資産の分にかかる 同上 [2,8,11,12]
親族承継 株式を渡す場合の扱いは契約案と士業に確認 前経営者と後継者の双方に二重には求めないのが原則。後継者へ当然には引き継がせない 後継者が円滑化法の認定を受けた非上場会社の株式を相続等で取得した場合に、相続税の納税を猶予する制度がある 同上(全国の公的窓口) [13,11,14,15]
廃業 「資金は残らず債務が残った」との回答もある 整理の際、一定期間の生計費相当額や華美でない自宅を手元に残すことを検討 登記や法手続、設備・在庫の処分など 活性化協議会の再チャレンジ支援 [16,11,17]
活性化協議会で整理 債権者との私的整理で扱う ガイドライン(単独型)による整理の支援 窓口相談までは無料。外部専門家に依頼する段階で活動費等の一部を負担 中小企業活性化協議会 [17]

廃業時に借入金が残っていなかったのは78.8%です。[16]

中小企業庁の再チャレンジ事例集には、事業売却で顧客への影響を避けた例や、早期の廃業決断で個人破産を回避できた例が載っています。事業継続に固執して破産に至った失敗事例もあります。再生が極めて困難と判断された場合でも、円滑な廃業や再スタートに向けた助言、代理人弁護士の紹介を受けられます。[18,17]

評価ゼロの提示で見る点|経営者保証と買い手の信用

負債のある会社の売却では、譲渡額だけでなく、経営者保証の行方も見ます。国は、経営者保証を引き受けずに会社の現預金などを移し、倒産させる不適切な譲受側の存在を指摘しています。特に、経営者保証の引受けを前提に低い譲渡額で買うと提示された場合は注意するよう呼びかけています。[19]

「評価ゼロでも負債と保証を引き受ける」という話が出たら、その約束が契約書でどう書かれるかを見ます。解除・移行を想定する場合は、譲受側の義務として明確に位置付けることを検討するとされています。譲渡側が債務超過の場合など譲受側の信用が特に重要な案件では、決算公告や税務申告書で譲受側の財務状況を確認するものとされています。[5]

支援機関を比べるときは、次の加盟状況の記載も材料の一つになります。法人2,646社のうち、不適切な譲り受け側に係る情報共有の仕組みに「加盟している」と記載しているのは116社、「加盟していない」は2,530社でした。実際の契約条件は各社に書面で確かめる必要があります。[20]

評価ゼロでも負債が手数料に響く|契約前の確認リスト

譲渡額が小さくても、手数料が小さくなるとは限りません。譲渡側が小規模だと十分な成功報酬が取れないため、最低報酬を設けている支援機関が多く、金額は機関ごとに違います。国は、成功報酬は売却代金の5%と聞いていたのに、最低報酬金額が適用されて想定より高くなった事例を示しています。[9,19]

報酬を計算する基準額も確かめます。基準額に何を使うかは支援機関によって違い、報酬額が大きく変わり得ます。移動総資産レーマン方式は、株式価値に有利子負債とその他の負債(買掛金・未払金など)を足した額を基準にするので、計算上は株式価値がゼロでも負債の分が基準額に入ります。[9]

国の手数料簡易計算ツールは黒字企業の株式譲渡だけが対象で、赤字・債務超過企業や事業譲渡は対象外です。自社の金額は、契約前に書面で受ける説明で見ることになります。仲介者・FAは、手数料の算定基準・金額・最低手数料・支払時期などを契約前に書面で示して説明するものとされています。[9,5]

仲介は譲渡側・譲受側の双方と契約し、双方から手数料を受け取るのが通常です。そのため、相手方から受け取る手数料の内容も書面で説明するものとされ、不当に低い譲渡価額へ誘導しない旨を契約書に定めるものとされています。[21,5]

よくある質問

Q. 赤字や負債のことを取引先に知られずに相談できますか?

A. 中小企業活性化協議会が行う私的整理は、金融機関などの債権者以外に企業の窮状を知られない手法を取り入れています。

Q. 相談に行くとき、何を持っていけばよいですか?

A. 中小企業活性化協議会への相談には、直近3期分の決算書などを用意します。

Q. 仲介会社と契約した後で、やめることはできますか?

A. 依頼者がいつでも中途解約できることを明記するものとされています。ただし、契約終了後も手数料が発生し得るテール期間があり、その長さは最長でも2年〜3年以内が目安です。

Q. 事業譲渡の後、同じ商売を続けられますか?

A. 事業を譲渡した会社は、別段の意思表示がない限り、同じ市町村と隣接市町村で20年間同じ事業をしてはなりません。続けたい場合は、別段の取り決めを契約に入れるかを譲受側と話し合います。

参考資料

  1. 日本政策金融公庫 ニュースリリース「令和7年度『事業承継マッチング支援』実績について」(2026年4月24日)(令和7年度(2025年度)実績・2026-04-24公表)https://www.jfc.go.jp/n/release/pdf/topics_260424a.pdf
  2. 民法(明治二十九年法律第八十九号)e-Gov法令API v2(第612条第1項)(e-Gov現行版(2026-11-03取得))https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/129AC0000000089?response_format=json
  3. 中小企業庁 M&A支援機関登録制度HP「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」譲渡価額(EV/EBITDA・2024年度)(譲渡価額)(2024年度報告分(2026-11-03取得時点の表示))https://ma-shienkikan.go.jp/statistics-report?reportType=transfer-price
  4. 中小企業庁 M&A支援機関登録制度HP「株式価値の簡易計算」(本ツールにおける株式価値の考え方)(2026-11-03取得時点(評価倍率は2024年度の報告データ))https://ma-shienkikan.go.jp/stock-value-calculation
  5. 中小企業庁「M&A支援機関登録制度公募要領(令和8年度)」(遵守事項一覧=中小M&Aガイドライン第3版の行動指針)(遵守事項10(4))(令和8年度(2026年度)版)https://ma-shienkikan.go.jp/documents/M%26A%E6%94%AF%E6%8F%B4%E6%A9%9F%E9%96%A2%E7%99%BB%E9%8C%B2%E5%88%B6%E5%BA%A6%E5%85%AC%E5%8B%9F%E8%A6%81%E9%A0%98%EF%BC%88%E4%BB%A4%E5%92%8C%EF%BC%98%E5%B9%B4%E5%BA%A6%EF%BC%89.pdf
  6. 「Yahoo!知恵袋の投稿」(2022/3/1 1:01)https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13257543338
  7. 「Yahoo!知恵袋の投稿」(2012/2/7 19:10)https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1281007182
  8. 会社法(平成十七年法律第八十六号)e-Gov法令API v2(第四百六十七条第一項)(e-Gov現行版(2026-08-12施行の改正反映))https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/417AC0000000086?response_format=json
  9. 中小企業庁 M&A支援機関登録制度HP「手数料の簡易計算」(手数料の考え方)(2026-11-03取得時点)https://ma-shienkikan.go.jp/fee-calculation
  10. 中小企業基盤整備機構 事業承継・引継ぎポータル「第三者承継」(POINT)(令和6年度実績の表示(2026-11-03取得時点))https://shoukei.smrj.go.jp/about/third-party/
  11. 経営者保証に関するガイドライン研究会「経営者保証に関するガイドライン」(平成25年12月・全国銀行協会HP掲載)(6.(2)②イ)(2013-12)https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/adr/sme/guideline.pdf
  12. 国税庁 質疑応答事例(消費税)「営業の譲渡をした場合の対価の額」(令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく(2026-11-03取得))https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/14/01.htm
  13. 経営者保証に関するガイドライン研究会「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」(令和元年12月・全国銀行協会HP掲載)(2.(1))(2019-12)https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/adr/sme/guideline_sp.pdf
  14. 国税庁タックスアンサー No.4148 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等(法人版事業承継税制)(あらまし)(2026-11-03取得時点)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4148.htm
  15. 中小企業基盤整備機構 ニュースリリース「令和7年度 事業承継・引継ぎ支援センターの実績について」(2026年5月29日)(■令和7年度の実績について)(令和7年度(2025年度)実績・2026-05-29公表)https://www.smrj.go.jp/press/2026/hkj3i8000000cu5o-att/20260529_press01.pdf
  16. 日本政策金融公庫総合研究所「引退廃業者の実態~『経営者の引退と廃業に関するアンケート』結果から~」(2019年12月12日)(調査時点2019年10月・分析対象500件(引退に伴い廃業した元経営者))https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/sme_findings191212_1.pdf
  17. 中小企業基盤整備機構「中小企業活性化協議会による支援」(2026-11-03取得時点)https://www.smrj.go.jp/sme/succession/revitalization/index.html
  18. 中小企業基盤整備機構 J-Net21「再チャレンジ支援を受けた中小企業者の取り組みをまとめた事例集を公表:中小企業庁」(2025年4月24日)(2025-04-24掲載)https://j-net21.smrj.go.jp/news/cek71k000000vsib.html
  19. 中小企業庁財務課・M&A支援機関登録制度事務局「昨今の中小M&A市場における動向を踏まえた周知・注意喚起について」(令和6年5月)(別紙 事例2)(2024-05)https://ma-shienkikan.go.jp/documents/%E3%80%90%E4%B8%AD%E5%B0%8F%E4%BC%81%E6%A5%AD%E3%80%91%E6%98%A8%E4%BB%8A%E3%81%AE%E4%B8%AD%E5%B0%8FM%EF%BC%86A%E5%B8%82%E5%A0%B4%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E5%8B%95%E5%90%91%E3%82%92%E8%B8%8F%E3%81%BE%E3%81%88%E3%81%9F%E5%91%A8%E7%9F%A5%E3%83%BB%E6%B3%A8%E6%84%8F%E5%96%9A%E8%B5%B7%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6_241030.pdf
  20. 中小企業庁 M&A支援機関登録制度HP「登録支援機関データベース」検索画面(検索結果表示)(2026-11-03取得時点(既定の検索条件での件数))https://ma-shienkikan.go.jp/search
  21. 中小企業庁 M&A支援機関登録制度HP「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」M&Aの利用(解説)(2026-11-03取得時点)https://ma-shienkikan.go.jp/statistics-report?reportType=ma-count
  22. 中小企業庁「M&A支援機関の選定・契約時に確認すべき事項」(登録制度HP掲載PDF)(Check2)(作成日の記載なし(2026-11-03取得))https://ma-shienkikan.go.jp/documents/M%26A%E6%94%AF%E6%8F%B4%E6%A9%9F%E9%96%A2%E3%81%AE%E9%81%B8%E5%AE%9A%E3%83%BB%E5%A5%91%E7%B4%84%E6%99%82%E3%81%AB%E7%A2%BA%E8%AA%8D%E3%81%99%E3%81%B9%E3%81%8D%E4%BA%8B%E9%A0%85.pdf

手数料・契約条件は支援機関ごとに違い、登録制度の記載から変わることもあります。契約の前に、手数料の算定方法・最低手数料・専任条項・テール条項を書面で確かめてください。

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参考

上の資料を加工して作成しています。