法人の絵画購入、決算前に損金にする要件と事業供用
執筆・編集:法人向けアート(絵画)購入・レンタルの事業者DB 編集部(運営 合同会社Radineer)/更新日 2026年11月6日
会社で買った絵画のうち少額の減価償却資産にあたるものは、事業に使った期に全額を損金経理した場合に限り損金になり、いったん資産に計上したものを後の期にまとめて損金経理しても認められません。エントランス・会議室・役員室などで装飾や展示に使っている美術品等のうち、減価償却資産にあたるものは、通常、事業に使っているものとされます。展示を休止して倉庫等に保管していても、必要な維持管理が行われ、いつでも展示できる状態なら、事業に使っていることになります。中小企業者等は、青色申告・常時使用する従業員数・事業に使った期の損金経理・確定申告書への明細書の添付といった要件を満たせば、令和8年4月1日以後、令和11年3月31日までに取得して事業に使った取得価額40万円未満の減価償却資産にあたる作品を、その期に全額損金にできます。1事業年度の合計は300万円が上限です(事業年度が1年未満なら、300万円を月数で按分した額が上限です)。ただし、10万円未満のものや一括償却資産の制度を使うものには、この特例を使えません。1点100万円以上の作品は、原則として減価償却そのものができません。[1,2,3,4]
価格帯で決まる今期の扱い
下の表の価格帯は、作品本体の値段ではなく1点の取得価額で見ます。ただし、減価償却できるかは取得価額だけでは決まらず、価値が減らないことが明らかなものかどうかや、100万円以上でも減価償却資産になる例に当たるかによっても変わります。額縁は一般的に絵画の一部として取得価額に含まれ、引取運賃・購入手数料などの購入費用や据付費など事業に使うために直接要した費用も取得価額に含まれます。[4,2]
| 1点の取得価額 | 今期に損金にできる額 | 要件 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 10万円未満 | 全額 | 事業に使った期に全額を損金経理する | いったん資産に計上すると、後の期にまとめて費用にはできない [1] |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として3年間で償却するか、中小特例で全額 | 中小特例は下の行と同じ要件 | 一括償却を選んだものには中小特例を使えない [1,3] |
| 20万円以上40万円未満(令和8年4月1日以後の取得分。それより前の取得分は30万円未満) | 中小特例で全額 | 青色申告・常時使用する従業員400人以下(令和8年3月31日以前の取得分は500人以下)・事業に使った期に損金経理し、確定申告書に明細書を付ける | 1期の合計は300万円まで(事業年度が1年未満なら月数で按分) [3] |
| 40万円以上100万円未満 | 価値が減らないことが明らかなものを除き減価償却資産となり、償却する額のうち今期の分(絵画など室内装飾品のその他のものは耐用年数8年) | 期末までに事業に使い始める | 全額を今期の損金にはできない [4,2] |
| 100万円以上 | 原則として減価償却できない | 減価償却資産になる例として、不特定多数が使う場所の装飾・展示用、移設が難しくその用途専用、転用時に市場価値が見込まれない、の3つを全て満たすものが挙げられている | 例示に当たらないものが、時の経過で価値が減ることが明らかなものかどうかは、例示の事項を参考に実態を踏まえて判断するとされている [4,2] |
中小特例の40万円未満という基準は、令和8年4月1日以後に取得した資産に使います。それより前の取得では、基準が30万円未満、従業員数は500人以下でした。古美術品・古文書・出土品など、歴史的価値や希少価値があり代替性のないものは、減価償却できない資産として扱われます。[3,4]
事業年度が1年未満なら、中小特例の上限は月数で按分します。事業年度が6か月なら、300万円×6か月÷12か月=150万円です。[3]
レンタルとの総額比較
法人の損金には販売費・一般管理費その他の費用(償却費以外で期末までに債務が確定しないものを除く)が含まれます。買わずに借りる場合のレンタル料をどの費目で、どの期の損金にするかは、契約する前に税理士に確かめてください。次の月額は、2026-11-02に確認した時点の各社公式サイトの記載で、変わることがあります。ここに挙げたのは例で、並び順は評価ではありません。[5]
| 例 | 公式の記載 | 地域 | 1年 | 2年 | 3年 |
|---|---|---|---|---|---|
| 江夏画廊 絵画レンタルサービス | 月額11,000円(税込)から | 東京23区内の法人 | 11,000円×12か月=132,000円 | 11,000円×24か月=264,000円 | 11,000円×36か月=396,000円 [6] |
| アール・ド・ヴィーヴル アートリース | 月々5500円より | 小田原市内は配達無料、市外は配送出張費あり | 5,500円×12か月=66,000円 | 5,500円×24か月=132,000円 | 5,500円×36か月=198,000円 [7] |
| 朝日画廊 絵画レンタル | 月額1,050円から | 全国 | 1,050円×12か月=12,600円 | 1,050円×24か月=25,200円 | 1,050円×36か月=37,800円 [8] |
買う作品の価格は資料に無いので、画廊の見積もりで確かめてください。上の表の金額は、各社の公式サイトにある「から」「より」と書かれた月額に月数を掛けただけの試算です。借りる場合の総額も、各社の見積もりで確かめてから比べてください。1年以内に提供を受ける役務の前払費用は、継続してその支払った期の損金にしていれば、支払った時点で損金にできます。レンタル料の1年分の前払いに当てはめられるかは、契約する前に税理士に確かめてください。[9]
飾る場所と使い始めの日
エントランス・会議室・役員室で装飾や展示に使っている美術品等のうち、減価償却資産にあたるものは、通常、事業に使っているものとされます。倉庫等に保管中で展示を休止していても、必要な維持管理が行われ、いつでも展示できる状態なら、事業に使っていることになります。事業に使っていないものは、減価償却資産から外されます。[2,10]
40万円以上100万円未満の作品のうち減価償却資産にあたるもの(価値が減らないことが明らかなものを除く)を決算の直前に搬入し、その期の途中で事業に使い始めた場合、その期の償却限度額は、1年分の額を月数で按分した額になります。社長の自宅は、エントランスや会議室といった例には入っていません。役員の個人的な費用を会社が負担した場合は、役員への経済的な利益にあたるとされています。[4,2,11]
展示しないまま保管している作品について、次のような相談の投稿があります。
この投稿者は、税込100万円で依頼した原画を額装してもらい、展示の予定はないと書いています。この人の場合は、まず額縁を含めた取得価額で、1点100万円の区分にあたるかを判定することになります。展示を休止中の作品の扱いは、展示の予定がないまま保管している作品にそのまま当てはまるとは限りません。事業に使っていると言えるかは、税理士に確かめてください。[12,2,4]
期末までの確認リスト
- □ 額縁(一般的に絵画の一部として含まれる)と、運賃・手数料などの購入費用や据付費を含めて、1点の取得価額を出した[2]
- □ 取得日が令和8年4月1日以後か(中小特例の基準が40万円未満か30万円未満かが変わる)
- □ 期末までに搬入してエントランス・会議室・役員室などに飾り、装飾や展示に使い始めた日を記録した(その後に展示を休止して倉庫等に保管する場合は、必要な維持管理を行い、いつでも展示できる状態にしておく)[2]
- □ 中小特例を使う作品の今期の合計が300万円(事業年度が1年未満なら月数で按分した額)以内に収まる[3]
- □ 青色申告で、常時使用する従業員が400人以下である(令和8年3月31日以前の取得分は500人以下)
- □ 確定申告書に少額減価償却資産の明細書を付ける準備がある
- □ 古美術品・古文書・出土品など、歴史的価値や希少価値があり代替性のない作品ではない[4]
- □ 役員の個人的な費用を会社が負担する形になっていない
よくある質問
Q. 展示会で契約した絵画は、会社として買った場合もクーリング・オフできますか?
A. 購入者が営業のために、または営業として結ぶ契約には、特定商取引法の訪問販売等の規定(クーリング・オフ等)が適用されません。これにあたるかは、取引の種類、利益活動との関連性、設備の準備状況などから総合的に検討するとされています。
Q. 社長が個人で持っている絵画を、会社が買い取ってもよいですか?
A. 役員から高い価額で資産を買い入れた場合、その資産の価額と買入価額との差額は役員への経済的な利益とされます。
Q. 個人事業主として買う場合も、同じ基準ですか?
A. 所得税でも、1点100万円未満の美術品等は原則として減価償却資産として扱われます。個人の青色申告者には、取得価額10万円以上40万円未満(令和8年3月31日までの取得は30万円未満)の減価償却資産について、合計300万円までを業務に使った年分の必要経費に算入できる特例があります。
参考資料
- 国税庁タックスアンサー No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示(令和8年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5403.htm
- 国税庁「美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQ」(FAQ本文は平成27年1月1日現在の法令・通達に基づく(FAQ自身の注記))https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/bijutsuhin_FAQ/index.htm
- 国税庁タックスアンサー No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(令和8年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm
- 法人税基本通達 7-1-1(美術品等についての減価償却資産の判定)国税庁(国税庁掲載の現行通達(2026-11-03取得))https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/07/07_01_01.htm
- 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)e-Gov法令API v2(e-Gov現行版(2026-11-03取得))https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/340AC0000000034?response_format=json
- 各事業者の公式サイト(2026-11-02確認)https://enartsu.co.jp/rental/
- 各事業者の公式サイト(2026-11-02確認)https://artdevivre-odawara.jp/work/artlease.php
- 各事業者の公式サイト(2026-11-02確認)https://asahi-gallery.co.jp/rental/system.asp
- 国税庁タックスアンサー No.5380 短期前払費用として損金算入ができる場合(国税庁掲載(2026-11-03取得))https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5380.htm
- 法人税法施行令(昭和四十年政令第九十七号)e-Gov法令API v2(e-Gov現行版(2026-11-03取得))https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/340CO0000000097?response_format=json
- 法人税基本通達 9-2-9(債務の免除による利益その他の経済的な利益)国税庁(国税庁掲載の現行通達(2026-11-03取得))https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_02_02.htm
- 「Yahoo!知恵袋の投稿」(2025/8/26 10:02)https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14319190154
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