高級腕時計と美術品の違い|資産計上と償却の線引き
執筆・編集:法人向けアート(絵画)購入・レンタルの事業者DB 編集部(運営 合同会社Radineer)/更新日 2026年11月6日
美術品は、1点100万円未満なら原則として減価償却資産になります。100万円以上なら、原則として償却できない資産です。高級腕時計の場合は、まず事業に使っているかどうかが問われ、事業の用に供していないものは減価償却資産から除かれます。下で引く相談のように2本で計700万円なら、1本あたりの平均は700万円÷2本=350万円です(1本ごとの取得価額は分かりません)。[1,2]
4つの扱いを表で比べる
資産計上したあとに償却費を経費にできるかどうかは、何を・いくらで・どこで使うかで分かれます。
| 区分 | 減価償却 | 耐用年数 | 分かれ目 |
|---|---|---|---|
| 古美術品・古文書・出土品など | できない | 対象外 | 歴史的価値や希少価値があり、代わりがきかない [1] |
| 1点100万円未満の美術品 | 原則できる | 室内装飾品に当たる場合、絵画・陶磁器などのその他のものは8年、主として金属製のものは15年 | 価値が減らないことが明らかなものは除く [1,3] |
| 1点100万円以上の美術品 | 原則できない | 対象外 | 次の章の3条件を全部満たせば償却できる [1,3] |
| 事業に使っていない腕時計 | できない | 対象外 | 事業の用に供していない資産は除かれる [2] |
表の「対象外」は、償却しないので耐用年数を使わないという意味です。腕時計に当てはめる金額の基準や耐用年数は、資料には書かれていません。
絵画・彫刻の判定と年数
100万円以上の美術品でも、次の3つを全部満たせば償却できます。[3]
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 置く場所 | 会館のロビーや葬祭場のホールのように、不特定多数が利用する場所の装飾用・展示用(有料で公開するものを除く) |
| 移設 | 移すのが難しく、その用途にだけ使われる |
| 転用したとき | 美術品としての市場価値が見込まれない |
これは国税庁が挙げている例です。例に当たらない作品は、これらを参考に、実態を踏まえて判断するとされています。[1,3]
作品が「室内装飾品」に当たる場合、耐用年数は、主として金属製のものか「その他のもの」かで分かれます。どちらに当たるかは、フレームなど耐用年数に最も影響する主要な構造部分が金属製かどうかで判定します。[4,5]
絵画を購入した場合、額縁は一般的に絵画の一部として取得価額に含まれます。引取運賃・運送保険料・購入手数料・据付費なども含まれます。消費税を含めるかどうかは経理方式で決まり、税込経理なら税込の金額、税抜経理なら税抜の金額で見ます。[3,6]
会社で買った時計の扱い
税理士ドットコム みんなの税務相談には、高級腕時計2本(計700万円)を購入し、器具備品に計上しているという投稿があります。[7]
また、腕時計は事業とは関係ないが、会社のお金で買ったので資産計上しようと思ったという記述もあります。[7]
この投稿者は、時計が事業とは関係ないと自分で書いています。器具備品として帳簿に載せても、事業の用に供していないものは減価償却資産から除かれます。[2]
美術品なら、減価償却資産に当たるものをエントランス・会議室・役員室などで装飾や展示に用いていれば、通常は事業の用に供していると考えられます。ただしこの例は美術品等についてのもので、腕時計を対象にしたものではありません。[3]
もう一つの論点は、役員個人の費用になるかどうかです。役員の個人的な費用を法人が負担した場合、その金額は役員への経済的な利益に当たります。買った時計がこれに当たるかどうかは、使い方と買った経緯を添えて、顧問税理士に確かめてください。[8]
少額なら一度に経費へ
1点100万円未満で減価償却資産になる作品は、金額によっては、使い始めた年度にまとめて経費にできます。
| 1点の取得価額 | 扱い | 条件 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 事業に使った年度に全額を損金にできる | その年度に損金経理する。いったん資産に計上した分を、後の年度にまとめて損金にはできない [9] |
| 20万円未満 | 3年間で一括して償却する方法を選べる | この方法を選んだものには、中小企業者等の特例は使えない [9,10] |
| 40万円未満(令和8年4月1日以後の取得。それより前は30万円未満) | 中小企業者等は取得価額を損金にできる(10万円未満のものと、3年間で一括して償却する方法を選んだものは対象外) | 青色申告、常時使用する従業員400人以下(令和8年4月1日より前の取得分は500人以下)、事業に使った年度に損金経理、1事業年度300万円まで、別表16(7)を添付 [10] |
40万円未満の特例は、平成18年4月1日から令和11年3月31日までに取得して事業に使ったものが対象です。10万円未満かどうかは、ふつう1単位として取引される単位ごとに判定します。[10,9]
次に確かめること
- □ 1点ごとの取得価額(額縁・運賃・購入手数料を含む)が100万円未満か
- □ 消費税を含めるかどうかを、自社の経理方式に合わせたか
- □ 古美術品のような、代わりのきかない作品ではないか
- □ 室内装飾品に当たる場合、絵画・陶磁器などのその他のもの(8年)か、主要な構造が金属製のもの(15年)か
- □ エントランスや会議室など、事業の場所に飾っているか
- □ 腕時計を事業でどう使っているか説明でき、役員個人の費用になっていないか
- □ 40万円未満なら、中小特例の要件と1事業年度300万円の上限に収まるか
よくある質問
Q. 個人事業主が絵画を買った場合も同じ基準ですか?
A. 所得税にも同じ基準があり、1点100万円未満の美術品等は原則として減価償却資産です。青色申告者なら、10万円以上40万円未満(令和8年3月31日までの取得は30万円未満)のものを、合計300万円まで業務に使った年分の必要経費にできる特例もあります。
Q. 平成27年より前に買った絵画はどうなりますか?
A. 今の基準は平成27年1月1日以後に取得したものに適用されます。平成27年より前に取得して減価償却できない資産としていた美術品等は、適用初年度に見直して減価償却資産に変えた場合に、その年度から償却します。見直さなかったものは、これまでどおり償却できません。
Q. 年度の途中で買って飾り始めた場合は?
A. その年度に償却できる上限は、1年分を月数で按分した金額です。
Q. 展示をやめて倉庫にしまった絵画は、償却を続けられますか?
A. 必要な維持管理をしていて、いつでも展示できる状態なら、事業の用に供していることになります。
参考資料
- 法人税基本通達 7-1-1(美術品等についての減価償却資産の判定)国税庁(国税庁掲載の現行通達(2026-11-03取得))https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/07/07_01_01.htm
- 法人税法施行令(昭和四十年政令第九十七号)e-Gov法令API v2(e-Gov現行版(2026-11-03取得))https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/340CO0000000097?response_format=json
- 国税庁「美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQ」(FAQ本文は平成27年1月1日現在の法令・通達に基づく(FAQ自身の注記))https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/bijutsuhin_FAQ/index.htm
- 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和四十年大蔵省令第十五号)e-Gov法令API v2(e-Gov現行版(2026-11-03取得))https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/340M50000040015?response_format=json
- 耐用年数の適用等に関する取扱通達 第2章第7節 器具及び備品 国税庁(国税庁掲載の現行通達(2026-11-03取得))https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sonota/700525/02/02_07.htm
- 国税庁タックスアンサー No.2100 減価償却のあらまし(所得税)(令和8年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
- 税理士ドットコム みんなの税務相談の投稿(2024年12月05日 00時24分)https://www.zeiri4.com/c_1032/c_1033/q_148145/
- 法人税基本通達 9-2-9(債務の免除による利益その他の経済的な利益)国税庁(国税庁掲載の現行通達(2026-11-03取得))https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_02_02.htm
- 国税庁タックスアンサー No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示(令和8年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5403.htm
- 国税庁タックスアンサー No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(令和8年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm
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