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ガイド

生成AI利用と秘密保持契約(NDA)ガイド2026|顧客資料を入れる前に読む条項と社内の判断手順

顧客資料を生成AIに入れてよいかを決めるのは社内規程ではなくNDAです。確認すべき四つの条項、現場が引ける三区分への落とし方、顧客への説明が要る場面までを整理します。

#生成AI#NDA#秘密保持契約#法務#リスク管理#2026年

顧客から預かった資料を生成AIに読ませてよいか。この問いに、社内の誰も即答できない組織は少なくありません。社内規程では「機密情報の入力は禁止」と書いてあっても、その資料が機密にあたるかどうかを決めているのは自社の規程ではなく、顧客と結んだ秘密保持契約だからです。

本記事は、顧客・取引先との秘密保持契約(NDA)を踏まえて、生成AIに何を入れてよいかを判断するための手順を整理します。特定サービスの機能や設定方法には触れません。また、契約解釈の最終判断は個別の条文と自社の法務体制によります。実際の運用を決める前に、必ず自社の法務担当や専門家にご確認ください。

なぜNDAが生成AI利用の分かれ目になるのか

生成AIに情報を入力する行為は、社内の作業に見えて、形式的には自社の外にある事業者へ情報を渡す行為にあたる場合があります。ここが従来のツールとの大きな違いです。表計算ソフトに顧客名簿を貼り付けるのと、外部の事業者が運用する仕組みに貼り付けるのとでは、契約上の意味が変わり得ます。

多くのNDAには、受領した秘密情報を第三者に開示しない旨の条項が入っています。この「第三者」に生成AIの提供元が含まれるかどうかが、判断の中心です。契約書の作成時期によっては生成AIを想定していない文言のままになっており、読み手によって解釈が割れる状態が起きます。

やっかいなのは、この判断を現場の担当者が一人で背負ってしまうことです。判断基準が示されないまま「各自で気をつけて」と伝えると、慎重な人は使わず、そうでない人は使う。結果として、組織としてのリスクは下がらないのに、生産性の差だけが広がります。

手順1:契約書のどこを読むか決めておく

NDAを一字一句読み込む運用は現実的ではありません。確認する箇所をあらかじめ絞ってください。実務で影響が大きいのは、おおむね次の四点です。

ひとつめは秘密情報の定義です。「秘密と明示されたもの」に限る契約と、「開示されたすべての情報」を含む契約とでは、扱いが大きく変わります。後者であれば、日常のやり取りに出てくる情報まで対象に入ります。

ふたつめは第三者開示の制限と例外です。従業員や委託先への開示が例外として認められている契約は少なくありません。その例外の書き方が、外部の事業者が運用する仕組みの利用を含み得るかを見ます。

みっつめは目的外利用の禁止です。受領した情報を契約上の目的以外に使わない、という条項です。入力した情報が提供元側で別の用途に使われる可能性があるなら、この条項との関係を整理する必要があります。

よっつめは再委託や外部サービス利用に関する事前承諾の有無です。事前承諾が必要と定められている場合、承諾を取らずに使えば手続違反になり得ます。

手順2:判断を三つの区分に落とす

条項を読んだ結果は、現場が使える形に変換しなければ意味がありません。おすすめは、案件や取引先ごとに三つの区分へ割り振る方法です。

ひとつめは入力してよい区分です。公開情報のみを扱う案件や、契約上の制限が緩い取引先が該当します。

ふたつめは条件付きで入力してよい区分です。社名や個人名を伏せる、数値を丸める、といった加工を前提に認める形です。ここで大切なのは、加工の具体的なやり方まで書いておくことです。「適宜マスキングする」とだけ書かれた規則は、人によって解釈が変わります。

みっつめは入力しない区分です。事前承諾が必要な契約や、秘密情報の定義が広い契約が該当します。この区分に入った案件では、生成AIを使わない前提で作業手順を組んでください。例外を認めるなら、誰の承認で認めるかまで決めておきます

手順3:現場が三秒で引ける形にする

区分を決めても、担当者が案件のたびに契約書を探す運用では続きません。実務で機能させるには、案件情報の並びに区分を持たせるのが確実です。

顧客管理や案件管理の一覧に区分の欄をひとつ足し、着手時に確認する。それだけで、判断は「調べる作業」から「見る作業」に変わります。管理する仕組みが分かれている場合は、一覧表を一枚作るだけでも構いません。大事なのは、精度より参照のしやすさです。参照されない完璧な資料は、存在しない資料と同じです。

手順4:顧客への説明が必要になる場面を見分ける

契約上は問題がなくても、顧客への説明が望ましい場面はあります。代表的なのは、成果物の作成過程で生成AIを使った場合と、顧客から預かった資料を入力した場合です。

説明の要否は、まず契約書に通知義務の定めがあるかで判断します。定めがある場合は当然に必要です。定めがない場合でも、顧客側の社内規程で生成AI利用に制限がかかっていることがあります。後から判明すると信頼の問題になるため、取引開始時に相手方の方針を確認しておくのが安全です。

あわせて、確認した結果を記録に残してください。担当者が交代したときに、確認の有無が分からなくなる事態を防げます。

手順5:契約の更新時に文言を手当てする

既存契約の解釈で悩み続けるより、更新のタイミングで文言を整えるほうが根本的です。とはいえ、すべての契約を一斉に巻き直すのは負担が大きすぎます。

現実的なのは、今後結ぶ契約のひな形を先に直し、既存契約は更新時に順次そろえる進め方です。ひな形の見直しでは、外部の事業者が運用する仕組みの利用を認めるか、認めるならどの条件かを明示します。文言の具体的な設計は、必ず法務担当や専門家と組んで進めてください。

なお、自社が情報を受け取る側だけでなく、渡す側になる契約も同じ観点で見直す価値があります。自社の情報が取引先の生成AI利用でどう扱われるかは、立場が逆になっただけの同じ論点です。

つまずきやすい三つの落とし穴

ひとつめは、社内規程だけで判断を完結させることです。社内規程がどれだけ整っていても、個別のNDAがそれより厳しければ、厳しいほうが優先されます。規程は出発点であって、結論ではありません。

ふたつめは、加工すれば安全だと決めつけることです。社名を伏せても、案件の内容や時期から相手が特定できる場合があります。加工の程度は、読んだ人が誰の話か分かるかどうかで見てください。

みっつめは、判断を一度きりで終わらせることです。契約は更新され、取引先の方針も変わります。区分の見直し時期を決めておかないと、古い判断のまま運用が続きます。

まとめ:契約を読む工程を、使う前に置く

生成AIと秘密保持契約の関係は、技術の話に見えて、実際にはいつ誰が契約を確認するかという業務設計の話です。使ったあとに確認すれば事故になり、使う前に確認すれば単なる一手順で済みます。

取りかかりとして、まずは取引額の大きい顧客を数社選び、その契約が三区分のどれにあたるかを判定してみてください。全件を一度に片付ける必要はありません。影響の大きい契約から順に区分が埋まれば、現場の迷いはその分だけ減ります。

なお、入力した情報が提供元側でどう扱われるかは、契約プランや設定によって異なります。判断の前提になる部分ですので、必ず提供元の公式情報でご確認ください。契約の解釈そのものについては、自社の法務担当や専門家への相談をおすすめします。

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執筆・監修

AI Scout編集部

AIツール・SaaS専門のレビューチーム。最新のAI技術動向を追い、実際にツールを使用した上で、正確で信頼性の高い情報を提供しています。

公開日: 2026年7月22日
最終更新: 2026年7月22日