AIが「退職金規程と賞与は就業規則に必須・解雇の理由は書かなくてよい・届出なしでも罰則なし」と答える2026|労基法89条の必須は1〜3号で解雇の事由と昇給を含む・退職手当と臨時の賃金は定めをする場合だけ・違反は30万円以下の罰金
労基法89条で就業規則に必ず書くのは1〜3号で、解雇の事由と昇給を含みます。退職手当・臨時の賃金等・制裁は定めをする場合だけ。変更時も届出が必要で違反は30万円以下の罰金です。
「就業規則には何を書かなければいけませんか」とAIに聞くと、「退職金規程と賞与の定めは必ず必要です」「解雇の理由は就業規則に書かなくてもかまいません」「昇給は書いても書かなくてもよい事項です」「届出をしなくても罰則はありません」といった答えが返ってくることがあります。
どれも労働基準法第89条の文言とずれています。第89条は、必ず書く事項(第1号〜第3号)と、その制度を設ける場合にだけ書く事項(第3号の2〜第10号)を分けています。退職手当と賞与は後者です。解雇の事由と昇給は前者に入っています。この記事では、条文の文言だけを根拠に整理します。
結論:必ず書く3項目と、制度を設けたら書く8項目
| 区分 | 号 | 事項(条文の要約) |
|---|---|---|
| 必ず書く | 第1号 | 始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交替制の場合の就業時転換 |
| 第2号 | 賃金(臨時の賃金等を除く)の決定・計算・支払の方法、締切り・支払の時期、昇給 | |
| 第3号 | 退職に関する事項(解雇の事由を含む) | |
| 定めをする場合に書く | 第3号の2 | 退職手当(対象者の範囲、決定・計算・支払の方法、支払の時期) |
| 第4号 | 臨時の賃金等(退職手当を除く)、最低賃金額 | |
| 第5号 | 労働者に負担させる食費・作業用品など | |
| 第6号 | 安全・衛生 | |
| 第7号 | 職業訓練 | |
| 第8号 | 災害補償、業務外の傷病扶助 | |
| 第9号 | 表彰・制裁(その種類と程度) | |
| 第10号 | その他、事業場の労働者のすべてに適用される定め |
対象は常時10人以上の労働者を使用する使用者です。作成したとき、変更したときのどちらも届出が必要です。違反は30万円以下の罰金です(第120条第1号)。
条文を確認する
労働基準法第89条(作成及び届出の義務)
常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
柱書の後段により、作成時だけでなく変更時にも届出が必要です。
一 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
二 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
三 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
第1号から第3号には「定めをする場合においては」という限定がありません。そのため、どの事業場でも書く必要があります。第2号の賃金からは「臨時の賃金等」が除かれています。第3号には「解雇の事由を含む」と括弧書きがあります。
三の二 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
四 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
第3号の2以降は、どれも「定めをする場合においては」で始まります。退職手当や臨時の賃金等の制度を設けない事業場は、この号の事項を書く義務はありません。制度を設けるなら書く必要があります。
九 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
十 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項
第9号は、表彰や制裁を定めるなら「種類及び程度」まで書くよう求めています。第10号は、第1号〜第9号に当たらなくても、労働者全員に適用するルールなら書く対象になることを定めています。
罰則(第120条・第121条)
第120条第1号は、「三十万円以下の罰金」となる規定の中に第89条を挙げています。同じ号には、意見聴取を定めた第90条第1項と、周知を定めた第106条も入っています。第121条は、従業者が事業主のために違反した場合に事業主にも罰金刑を科す両罰規定です。
AIがよく間違える6つの答え
誤答1:「退職金規程は必ず作らなければならない」
退職手当は第3号の2で、「退職手当の定めをする場合においては」と限定されています。退職金制度がない事業場に、退職金規程を作る義務はありません。制度を設けるなら、対象者の範囲・計算方法・支払時期などを書く必要があります。第3号の「退職に関する事項」と取り違えた答えです。
誤答2:「賞与の定めは必ず書く事項だ」
第2号の賃金からは「臨時の賃金等」が除かれています。臨時の賃金等は第4号で、「定めをする場合」にだけ書く事項です。この記事では、賞与が「臨時の賃金等」に当たるかの解釈資料(通達など)は取得していません。条文上は、第2号の賃金から臨時の賃金等を外し、第4号で別に扱っている点だけを確認しています。
誤答3:「解雇の理由は就業規則に書かなくてよい」
第3号は「退職に関する事項(解雇の事由を含む。)」です。解雇の事由は、必ず書く事項に含まれています。定年や自己都合退職の手続だけを書き、解雇の事由を抜いた規則は、第3号の文言を満たしません。
誤答4:「昇給は書いても書かなくてもよい」
昇給は第2号に「昇給に関する事項」として入っており、必ず書く事項です。ただし、条文は「昇給に関する事項」を書くよう求めているだけで、昇給を約束する内容まで求める文言はありません。どう書けば足りるかは解釈の問題で、この記事では通達を確認していません。
誤答5:「作成時に届け出れば、変更時は届出不要」
第89条の柱書は「次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする」と定めています。変更時も届出が必要です。第90条により、変更時にも過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)の意見を聴き、その書面を添付します。
誤答6:「就業規則を届け出なくても罰則はない」
第89条違反は第120条第1号の対象で、30万円以下の罰金です。「努力義務」や「行政指導だけ」とする答えは条文と合いません。なお、第89条の義務は「常時十人以上の労働者を使用する使用者」に課されています。10人の数え方は、別記事「就業規則の10人は事業場単位・パートを含む」で整理しています。
AIに点検させるときのプロンプト例
AIに自社の就業規則を点検させる場合は、第89条の区分を先に渡し、号ごとに有無を答えさせると漏れが見つけやすくなります。
次の就業規則を、労働基準法第89条の各号と照合してください。
・必ず書く事項:第1号(始業・終業、休憩、休日、休暇、交替制の就業時転換)、
第2号(賃金の決定・計算・支払方法、締切り・支払時期、昇給)、
第3号(退職に関する事項、解雇の事由を含む)
・定めをする場合に書く事項:第3号の2(退職手当)、第4号(臨時の賃金等・最低賃金額)、
第5号(食費・作業用品の負担)、第6号(安全・衛生)、第7号(職業訓練)、
第8号(災害補償・業務外の傷病扶助)、第9号(表彰・制裁の種類と程度)、第10号(全員に適用される定め)
ルール:
・号ごとに「記載あり/記載なし/制度なしのため不要」のどれかを示し、該当条項を引用する
・第3号は解雇の事由があるかを別に確認する
・第9号は制裁の「種類」と「程度」の両方があるかを確認する
・通達や判例が必要な判断は「未確認」と書く
就業規則:(ここに貼る)
AIの答えは必ず条文と突き合わせてください。記載内容が十分かどうかは個別の事情で変わるため、労働基準監督署や社会保険労務士に確認するのが確実です。
点検チェックリスト
- 始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇が書かれている(第1号)
- 交替制がある場合、就業時転換が書かれている(第1号)
- 賃金の決定・計算・支払の方法、締切り・支払の時期、昇給が書かれている(第2号)
- 退職に関する事項と、解雇の事由が書かれている(第3号)
- 退職金・賞与・制裁などの制度がある場合、その号の事項が書かれている(第3号の2〜第10号)
- 変更した就業規則を、意見書を添えて届け出た(第89条後段・第90条)
まとめ
- 就業規則に必ず書くのは第1号〜第3号の事項です。
- 解雇の事由(第3号)と昇給(第2号)は、必ず書く事項に入っています。
- 退職手当(第3号の2)と臨時の賃金等(第4号)は、制度を設ける場合にだけ書く事項です。
- 制裁を定めるなら、その種類と程度を書きます(第9号)。
- 作成時も変更時も届出が必要で、違反は30万円以下の罰金です(第120条第1号)。
出典:労働基準法 第89条・第90条・第120条・第121条(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049、2026年7月17日施行版、2026年10月25日取得)。
AI Scout編集部
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