AIが「年俸制なら年1回払い・振込先は会社が決める・デジタル払いはどのアプリでも可」と答える2026|労基法24条は毎月1回以上・一定期日払い・口座振込もデジタル払いも労働者の同意と指定が条件
労基法24条は賃金を通貨で直接全額、毎月1回以上一定の期日に払うと定めます。年俸制も毎月払いが必要です。口座振込とデジタル払いは労働者の同意が条件で、賞与等は毎月払いの例外です。違反は30万円以下の罰金です。
「年俸制なら年1回払いで問題ありません」「給与の振込先は会社が決めてよい」とAIが答えることがあります。どちらも労働基準法第24条の条文とは合いません。
この記事では、賃金の支払方法を定めた第24条と、その細目を定める労働基準法施行規則第7条の2・第8条を条文で確認します。AIがよく間違える7つの答えを、条文の文言で正します。
結論:第24条が定める支払の5つのルール
- 賃金は「通貨で」払います。口座振込やデジタル払いは、労働者の同意があるときの例外です(第24条第1項・規則第7条の2)。
- 賃金は「直接労働者に」払います(第24条第1項)。
- 賃金は「その全額を」払います。控除できるのは法令の定めか労使協定がある場合です(第24条第1項)。
- 賃金は「毎月一回以上」払います。年俸制でも同じです(第24条第2項)。
- 賃金は「一定の期日を定めて」払います(第24条第2項)。
- 賞与や、1か月を超える期間で算定する精勤手当などは、毎月払いの例外です(第24条第2項ただし書・規則第8条)。
- 第24条に違反した者は、30万円以下の罰金に処されます(第120条第1号)。
条文を確認する
労働基準法第24条第1項(通貨・直接・全額)
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、(以下略)
本文が原則で、ただし書が例外です。通貨以外で払える場合は、①法令に別段の定めがある、②労働協約に別段の定めがある、③厚生労働省令で定める確実な支払の方法による、の3つです。
労働基準法第24条第2項(毎月払い・一定期日払い)
賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。
労働基準法第11条(賃金の定義)
この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。
「年俸」と呼んでいても、労働の対償であれば第11条の賃金です。第24条の対象から外れる理由にはなりません。
労働基準法施行規則第8条(毎月払いの例外)
第24条第2項ただし書の「賞与に準ずるもの」として、規則第8条は次の3つを挙げています。
- 1か月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当
- 1か月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当
- 1か月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給又は能率手当
労働基準法施行規則第7条の2(口座振込・デジタル払い)
第1項は「使用者は、労働者の同意を得た場合には」と始まり、次の3つの方法を認めています。
- 第1号:労働者が指定する銀行その他の金融機関の預金・貯金への振込み
- 第2号:労働者が指定する金融商品取引業者の預り金(要件を満たすもの)への払込み
- 第3号:厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者(指定資金移動業者)のうち、労働者が指定するものの口座への資金移動
第3号には追加の条件があります。労働者が第1号か第2号を選べるようにし、指定の要件について説明したうえで、同意を得なければなりません(第1項ただし書)。
AIがよく間違える7つの答え
| AIの答え | 条文で確認できること | 根拠 |
|---|---|---|
| 年俸制なら年1回払いでよい | 年俸も賃金です。毎月1回以上払います | 第11条・第24条第2項 |
| 給料日は月ごとに会社が決めればよい | 「一定の期日を定めて」払う必要があります | 第24条第2項 |
| 振込先は会社が決めてよい | 労働者の同意が必要で、口座は労働者が指定します | 規則第7条の2第1項 |
| デジタル払いはどの決済アプリでもよい | 大臣の指定を受けた資金移動業者に限られます。銀行振込等も選べるようにします | 規則第7条の2第1項第3号・ただし書 |
| 賞与も毎月払わなければならない | 賞与や規則第8条の手当は毎月払いの例外です | 第24条第2項ただし書・規則第8条 |
| 家族や代理人に払ってもよい | 原則は「直接労働者に」払います | 第24条第1項 |
| 支払方法の違反に罰則はない | 30万円以下の罰金の対象です | 第120条第1号 |
誤答1:「年俸制なら年1回払いでよい」
第24条第2項は「毎月一回以上」と定めています。年俸制を除く文言はありません。年俸600万円なら、12回や14回などに分けて、毎月1回以上は支払日を設けます。
年俸の一部を夏と冬に分けて払う場合も、毎月の支払がなくなるわけではありません。ただし書の例外は「臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもの」です。年俸を年1回にまとめる根拠にはなりません。
誤答2:「給料日は月ごとに会社が決めればよい」
条文は「一定の期日を定めて」と書いています。毎月25日、月末日のように、支払日があらかじめ決まっている必要があります。
「今月は20日、来月は28日」のように、毎月その都度決める方法は、この文言に合いません。曜日で決める方法は日付が月ごとに変わるため、要件を満たすかどうか争いになりやすい点に注意してください。迷ったときは、労働基準監督署に確認するのが確実です。
誤答3:「振込先は会社が決めてよい」
第24条第1項の原則は「通貨で」払うことです。口座振込は、規則第7条の2第1項が定める例外です。
その条件は「労働者の同意を得た場合」で、振込先は「当該労働者が指定する」金融機関の口座です。会社が取引銀行を一方的に指定し、同意なしに振り込む方法は、この条件を満たしません。
誤答4:「デジタル払いはどの決済アプリでもよい」
規則第7条の2第1項第3号の対象は、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者だけです。指定の要件には、次のような内容があります。
- 口座残高が100万円を超えないようにする措置、または超えたら速やかに100万円以下にする措置(イ)
- 業者が破産したときなどに、全額を速やかに労働者へ弁済することを保証する仕組み(ロ)
- 最後の資金移動から少なくとも10年間は払い戻せるようにする措置(ニ)
- 少なくとも毎月1回は、手数料なしで現金を受け取れる措置(ヘ)
さらに、労働者が銀行振込などを選べるようにし、要件を説明したうえで同意を得る必要があります(第1項ただし書)。「デジタル払いのみ」と会社が決めることは、条文の構造と合いません。
誤答5:「賞与も毎月払わなければならない」
第24条第2項ただし書は、臨時に支払われる賃金と賞与を毎月払いの例外にしています。規則第8条は、1か月を超える期間の出勤成績による精勤手当など3つを加えています。
反対に、1か月以内の成績で決まる手当は、規則第8条の文言に当たりません。「手当なら何でも例外」とまでは言えないので、算定期間を確認してください。
誤答6:「家族や代理人に払ってもよい」
第24条第1項は「直接労働者に」払うと定めています。家族への手渡しや、代理人の口座への振込は、この原則と合いません。
未成年者についても、第59条が「未成年者は、独立して賃金を請求することができる」とし、親権者などが代わりに受け取ることを禁じています。詳しくは最低年齢と未成年者の賃金の記事で解説しています。
誤答7:「支払方法の違反に罰則はない」
第120条第1号は「第二十三条から第二十七条まで」の規定に違反した者を、30万円以下の罰金に処すると定めています。第24条はこの範囲に入ります。
事業主にも第121条で罰金刑が科されます。誰が罰せられるかは両罰規定の記事で整理しています。
関連する条文との関係
第24条の周辺には、支払の時期を定める条文があります。AIはこれらを混ぜて答えることがあるので、別々に確認します。
| 場面 | ルール | 根拠 |
|---|---|---|
| 通常の給料日 | 毎月1回以上、一定の期日 | 第24条第2項 |
| 給料から天引きする | 法令の定めか労使協定が必要 | 第24条第1項ただし書 |
| 出産・病気など非常の場合 | 請求があれば、支払期日前でも既往の労働分を払う | 第25条 |
| 退職・死亡の場合 | 権利者の請求から7日以内に払う | 第23条第1項 |
| 退職手当の支払方法 | 同意があれば金融機関の小切手なども可 | 規則第7条の2第2項 |
控除のルールは賃金控除の記事、非常時払いは第25条の記事、退職時の支払は第23条の記事にまとめています。
AIに質問するときのコツ
給与の支払方法をAIに聞くときは、次の3点を指示すると誤答が減ります。
- 「労働基準法第24条と施行規則第7条の2・第8条の条文を引用して答えて」と根拠を指定する
- 「年俸制」「デジタル払い」など、自社の条件を具体的に書く
- 答えに条文番号がない部分は、e-Gov法令検索で原文を確認する
社内の就業規則や賃金規程をAIでチェックする場合も、出力をそのまま使わず、条文と照らし合わせてください。規程の点検に使えるAIツールは、AI契約書レビューツールの比較記事で紹介しています。
まとめ
- 賃金は通貨で、直接、全額を、毎月1回以上、一定の期日に払います(第24条)。
- 年俸制でも毎月1回以上払います。年俸も第11条の賃金です。
- 口座振込もデジタル払いも、労働者の同意が条件です。口座は労働者が指定します。
- デジタル払いは大臣が指定した資金移動業者に限られ、銀行振込などを選べるようにします。
- 賞与と、1か月を超える期間で算定する精勤手当などは、毎月払いの例外です。
- 第24条の違反は30万円以下の罰金の対象です(第120条第1号)。
出典:e-Gov法令検索 法令API v2(労働基準法 322AC0000000049_20260717_508AC0000000060 第11条・第24条・第59条・第120条・第121条、労働基準法施行規則 322M40000100023_20260401_508M60000100057 第7条の2・第8条)。2026年10月29日取得。個別の事案は、労働基準監督署や社会保険労務士に確認してください。
AI Scout編集部
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