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AIが社会保険料を実際の支給額で計算してしまう2026|厚生年金が月2万5,620円と2万9,280円に分かれ年4万3,920円ずれるのを防ぐ5つの手順

AIに社会保険料を聞くと支給額に料率を掛けた答えが返ります。標準報酬月額の等級に当てはめないと、同じ社員でも月2万5,620円と2万9,280円に分かれ年4万3,920円ずれます。防ぐ5つの手順を解説します。

#AI活用#業務効率化#品質管理#プロンプト#人事#労務

「月給28万円の社員の社会保険料はいくらですか」とAIに聞くと、「厚生年金保険料は28万円×9.15%で2万5,620円です」と即答が返ってくることがあります。掛け算としては正しい計算です。しかし、この社員に通勤手当1万5,000円と残業手当2万2,000円が毎月ついているなら、実務上の正解は2万9,280円です。差は月3,660円、本人負担だけで年4万3,920円、会社負担と合わせると年8万7,840円ずれます。

原因は単純です。社会保険料は「実際に支払った金額」に料率を掛けるのではなく、報酬を等級表に当てはめて決めた標準報酬月額に料率を掛けて計算します。AIは指示がないと、渡された金額をそのまま報酬月額だと解釈し、等級への当てはめを飛ばします。この記事では、AIが社会保険料の計算でどこを取り違えるのかを分解し、防ぐ5つの手順を説明します。

同じ社員の厚生年金保険料が2万5,620円と2万9,280円に分かれる理由

まず、ずれが生まれる過程を数字で追います。前提は基本給28万円、通勤手当1万5,000円、残業手当2万2,000円の社員です。

AIが「月給28万円」だけを見た場合、計算は次のようになります。28万円×9.15%=2万5,620円。厚生年金保険の料率18.300%を労使折半した本人負担分です。

実務の手順では、まず報酬月額を合計します。28万円+1万5,000円+2万2,000円=31万7,000円。これを等級表に当てはめると、報酬月額31万円以上33万円未満の区分に入るので、標準報酬月額は32万円になります。保険料は32万円×9.15%=2万9,280円です。

ずれた原因は2つ重なっています。1つは通勤手当と残業手当を報酬に入れ忘れたこと、もう1つは合計額をそのまま使い、等級に丸めなかったことです。後者は単独でも起こります。報酬月額31万7,000円をそのまま使えば31万7,000円×9.15%=2万9,005円となり、正解の2万9,280円と275円ずれます。1人分では小さく見えますが、従業員30人なら月8,250円、年9万9,000円の差になります。

AIが取り違える3つの地点

社会保険料の計算をAIに頼むとき、誤りが入り込む地点はほぼ3つに絞られます。どこで間違えたのかを特定できれば、修正は1行の追加指示で済みます。

地点1:報酬に含める範囲

社会保険の「報酬」は、所得税の課税対象とは範囲が違います。もっとも間違えやすいのが通勤手当です。通勤手当は一定額まで所得税が非課税ですが、社会保険では報酬に含めます。「非課税だから除く」という推論は所得税の話であって、社会保険には通用しません。AIは両者を混ぜた答えを出しがちです。

地点2:等級表への当てはめ

標準報酬月額は連続した金額ではなく、区切られた等級で決まります。健康保険は第1級から第50級まで、厚生年金保険は第1級から第32級までの区分があります。報酬月額がいくらであっても、まずその区分に当てはめてから料率を掛けます。AIに「等級表に当てはめて」と書かないと、この丸めが省略されます。

地点3:どの期間の報酬を使うか

標準報酬月額は毎月の支給額に合わせて動くものではありません。原則として年1回まとめて決め直し、1年間固定します。「今月の残業が多かったから今月の保険料も上がる」という理解は誤りです。AIは直近の金額を使いたがるので、基準にする月を明示する必要があります。

報酬に含めるもの・含めないものを先に切り分ける

報酬に含めるかどうかの基準は、労働の対償として経常的・反復的に受けるものかどうかです。判断に迷いやすいものを整理します。

含めるものは、基本給、役職手当、住宅手当、家族手当、通勤手当、残業手当、精皆勤手当、そして食事や住宅の現物給与などです。金銭で支払われないものも、現物給与の価額として報酬に入ります。

含めないものは、年3回以下の賞与、結婚祝金や見舞金などの臨時的な給付、出張旅費や交際費といった実費弁償の性質を持つものです。なお年4回以上支給される賞与は、報酬月額に分けて算入する扱いになります。

この切り分けをAIに任せると、「福利厚生だから除く」「一時金だから除く」といったもっともらしい理由で、含めるべき手当が落ちます。判断させるのではなく、含める項目を人間が列挙して渡すほうが速くて確実です。

標準報酬月額が変わる3つのタイミング

いつの報酬で決めるのかを押さえておくと、AIの答えが正しい期間のものかを判断できます。決定・改定のきっかけは主に3つです。

定時決定は、毎年4月・5月・6月に支払われた報酬の平均から標準報酬月額を決め、その年の9月から翌年8月まで適用する手続きです。算定基礎届として届け出ます。つまり、9月分の保険料を知りたいなら見るべきは9月の給与ではなく、4月から6月の実績です。

随時改定は、昇給や手当の新設など固定的賃金に変動があり、変動月から3か月間の報酬の平均が従前と2等級以上違ったときに行う改定です。月額変更届を出し、変動月から4か月目に改定されます。残業代が一時的に増えただけでは対象になりません。きっかけが固定的賃金の変動であることが条件です。

資格取得時決定は、入社時に報酬の見込み額から標準報酬月額を決めるものです。まだ実績がないため、契約上の月額と見込まれる手当で判断します。

AIに月別の保険料一覧を作らせるとき、この3つを説明せずに頼むと、毎月の支給額に連動して保険料が上下する表が出てきます。表の形は整っているので気づきにくく、そのまま資金繰り表に取り込まれると誤差が累積します。

賞与は月給と別のルールで計算する

賞与にも社会保険料はかかりますが、標準報酬月額とは別に標準賞与額を使います。支給額から1,000円未満を切り捨てた額が標準賞与額です。たとえば賞与48万7,500円なら、標準賞与額は48万7,000円になります。

上限の扱いが月給と違う点にも注意が必要です。健康保険は年度(4月から翌年3月)の累計573万円が上限、厚生年金保険は1か月あたり150万円が上限です。健康保険は年度累計、厚生年金は1回ごとという違いがあるため、年2回の賞与を合算して判定するかどうかがそれぞれ異なります。AIに「賞与の保険料を計算して」と頼むと、この2つの上限を同じ基準で処理した答えが返ることがあります。

社会保険料に日割りはない

給与計算では日割りが当たり前に出てくるため、社会保険料も在籍日数で按分できると考えてしまいがちです。しかし社会保険料は月単位で、日割りの考え方がありません。

月の途中で入社しても、その月の保険料は1か月分かかります。退職の場合は、資格を失った月の保険料はかかりません。資格喪失日は退職日の翌日なので、月末退職だと喪失日が翌月1日となり、その退職月の保険料は1か月分発生します。前日退職なら同月内に喪失するため、その月の保険料はかかりません。1日違いで1か月分が動く構造です。

AIに退職月の精算を計算させると、在籍日数で按分した数字が出ることがあります。金額が中途半端な端数になっていたら、日割りされた疑いがあります。

AIの計算ミスを防ぐ5つの手順

ここまでの内容を、実際にプロンプトへ落とし込む手順としてまとめます。順番に意味があるので、上から実行してください。

手順1:報酬に含める項目を列挙して渡す。「基本給28万円、通勤手当1万5,000円、残業手当2万2,000円」のように、名称と金額を分けて渡します。AIに含める・含めないを判断させないことが要点です。

手順2:報酬月額の合計を先に1行で出させる。等級や保険料に進む前に、合計額だけを出力させます。ここが合っていなければ、その先はすべて間違っているので、早い段階で止められます。

手順3:等級表に当てはめる工程を明示する。「報酬月額を標準報酬月額の等級に当てはめてから料率を掛けてください」と書きます。当てはめた根拠となる区分(たとえば31万円以上33万円未満)も一緒に出させると、丸め漏れが目視で分かります。

手順4:使う料率の出典と適用年月を答えさせる。厚生年金保険の料率は18.300%で全国一律ですが、健康保険の料率は協会けんぽなら都道府県ごとに異なり、健康保険組合ならその組合の規約で決まります。さらに40歳以上65歳未満は介護保険料が上乗せされます。AIが記憶している料率は古い可能性が高いので、当年度の保険料額表の数値を人間が渡すのが確実です。

手順5:対象月と決定方法を指定する。「2026年9月分の保険料、2026年4月から6月の報酬による定時決定後の標準報酬月額を使用」のように、どの決定に基づく数字かを書きます。これを省くと、直近の支給額から勝手に計算した答えが返ります。

チェックに使える3つの見分け方

AIの出力を受け取ったあと、短時間で怪しさを判定する方法を挙げます。

1つ目は、保険料の元になった金額がきりの良い数字かどうかです。標準報酬月額は等級表の値なので、28万円や32万円のようにそろった額になります。31万7,000円のような端数が元になっていたら、等級への当てはめが飛んでいます。

2つ目は、月ごとの保険料が毎月変動していないかです。定時決定から次の定時決定までは同額が続くのが原則です。残業の増減に合わせて上下している表は、考え方から間違っています。

3つ目は、通勤手当の扱いです。答えの根拠に「通勤手当は非課税のため除外」と書かれていたら、所得税の基準を持ち込んだ誤りです。

まとめ

社会保険料の計算でAIが間違えるのは、掛け算が苦手だからではありません。「実際の支給額に料率を掛ける」という自然な発想が、制度の手順と違うからです。実務では、報酬月額を合計し、等級表で標準報酬月額に丸め、決められた期間その額を使い続けます。

防ぐ手順は、報酬に含める項目を列挙して渡す、合計を先に1行で出させる、等級への当てはめを明示する、料率の出典と適用年月を答えさせる、対象月と決定方法を指定する、の5つです。今回の例では月3,660円、年4万3,920円のずれでしたが、人数と年数が増えれば金額は比例して大きくなります。AIの答えに保険料の金額が出てきたら、その元になった標準報酬月額がいくらなのかを最初に確かめるようにしましょう。

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執筆・監修

AI Scout編集部

AIツール・SaaS専門のレビューチーム。最新のAI技術動向を追い、実際にツールを使用した上で、正確で信頼性の高い情報を提供しています。

公開日: 2026年9月20日
最終更新: 2026年9月20日