AIが「別の会社なら労働時間は合算しない」と答える2026|労基法38条で副業・兼業の労働時間は通算・時間外は後から契約した会社・36協定の限度時間や休憩・有給は通算しない
AIに副業の労働時間を聞くと「会社が違えば合算しない」と答えることがあります。労基法38条と厚労省ガイドラインで、通算する規定・しない規定と5つの誤答を解説します。
「本業の会社と副業先のアルバイトは別の会社なので、労働時間は合算しなくてよいですか」とAIに聞くと、「会社が違えば労働時間は別々に数えます」と答えることがあります。逆に「36協定の月45時間も、休憩も有給も、全部合算します」と言い切る例もあります。
どちらも、条文や厚生労働省のガイドラインとは違います。労働基準法第38条第1項は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算すると定めています。ただし、通算されるのは「労働時間に関する規定」で、すべてのルールではありません。
この記事では、e-Gov法令検索で取得した労働基準法第32条・第36条・第38条・第119条の条文と、厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月8日改定版)をもとに、AIが取り違えやすい点と、AIに正しく答えさせる手順をまとめます。
副業・兼業の労働時間通算の基本ルール
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 通算の原則 | 事業場を異にする場合も、労働時間に関する規定の適用では通算する | 労基法第38条第1項 |
| 別の会社の場合 | 「事業場を異にする場合」は事業主を異にする場合も含む | ガイドライン(昭和23年基発第769号を引用) |
| 通算される規定 | 法定労働時間(1週40時間・1日8時間)、時間外・休日労働の単月100時間未満と複数月平均80時間以内 | 労基法第32条・第36条第6項第2号・第3号 |
| 通算されない規定 | 36協定の限度時間・年720時間の上限、休憩・休日・年次有給休暇 | ガイドライン |
| 罰則 | 第32条・第36条第6項の違反は6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 | 労基法第119条第1号 |
AIがよく出す5つの誤答
誤答1:「会社が違えば、労働時間は通算しない」
第38条第1項は「事業場を異にする場合においても」通算すると定めています。ガイドラインは、これが事業主を異にする場合も含むとする通達(昭和23年5月14日付け基発第769号)を示しています。
本業で1日6時間、副業先で同じ日に3時間働けば、通算は9時間です。「別会社だから関係ない」という答えは、第38条を見落としています。
誤答2:「通算して8時間を超えたら、本業の会社が割増賃金を払う」
ガイドラインは、まず労働契約を結んだ順に所定労働時間を通算するとしています。法定労働時間を超える部分は、時間的に後から労働契約を結んだ使用者の時間外労働になります。
そのうえで、所定外労働は発生した順に通算します。どちらが払うかは「本業か副業か」では決まりません。AIには契約の順番と、その日の働いた順番を渡して答えさせます。
誤答3:「36協定の月45時間や年720時間も、他社の分と合算する」
ガイドラインは、36協定の限度時間(第36条第4項)と特別条項の年間上限(同条第5項)を、事業場ごとの協定の内容を規制するものとしています。この2つは、他社の労働時間と通算しません。
一方で、時間外労働と休日労働の合計で単月100時間未満、複数月平均80時間以内(第36条第6項第2号・第3号)は、労働者個人の実労働時間に着目する規定です。こちらは他社の分も通算します。2つを混ぜた答えは誤りです。
誤答4:「休憩・休日・有給休暇も、副業先と合わせて判断する」
ガイドラインは、休憩(第34条)、休日(第35条)、年次有給休暇(第39条)を、労働時間に関する規定ではないとしています。これらは通算しません。
たとえば、自社で6時間を超えて働かせていなければ、副業先と合わせた時間を理由に、自社の休憩時間が変わるわけではありません。
誤答5:「業務委託の副業や、管理監督者の時間も通算する」
ガイドラインは、労基法が適用されない場合(フリーランス、起業、顧問など)は通算しないとしています。労基法は適用されても労働時間規制が適用されない場合(管理監督者、高度プロフェッショナル制度など)も同じです。
ただし、ガイドラインは、こうした場合も申告などで就業時間を把握し、長時間にならないよう配慮することが望ましいとしています。「関係ない」で終わらせる答えは不十分です。
AIに正しく答えさせる手順
手順1:条文とガイドラインを貼ってから聞く
e-Gov法令検索から労基法第38条第1項と第36条第6項の本文をコピーします。厚生労働省のガイドラインの「労働時間管理」の節も一緒に貼り、「この資料だけを根拠に答えてください」と指示します。
手順2:「通算する規定」と「通算しない規定」を表にさせる
「法定労働時間、36協定の限度時間、単月100時間未満、休憩、休日、有給休暇のそれぞれについて、通算するかを根拠つきで表にしてください」と指示します。分けさせると、誤答3と誤答4が起きにくくなります。
手順3:契約の順番と働いた順番を渡す
割増賃金の負担は、契約を結んだ順と所定外労働の発生順で変わります。「A社と先に契約、B社は後から契約。この日はA社6時間、その後B社3時間」のように、順番を質問に書きます。
手順4:確認用の質問で答えを試す
- 別の会社で働く時間は、第38条第1項の通算の対象になりますか。根拠も答えてください。
- A社と先に契約し、同じ日にA社で6時間、B社で3時間働きました。法定労働時間を超える1時間は、どちらの時間外労働ですか。
- 36協定の月45時間の限度時間は、他社の労働時間と通算しますか。単月100時間未満の要件はどうですか。
- 休憩と年次有給休暇は、副業先の労働時間と通算しますか。
1問でも外れたら、そのプロンプトは使いません。
手順5:判断が分かれる点は専門家に確認する
副業先が雇用か業務委託かの判断や、ガイドラインの「管理モデル」を使うかどうかは、個別の事情で変わります。就業規則の届出制を整える前に、社会保険労務士や労働基準監督署に確認します。
まとめ
- 労働時間は、事業場を異にする場合も通算します(労基法第38条第1項)。別の会社の場合も含みます(ガイドラインが示す通達)。
- 通算して法定労働時間を超える部分は、まず後から契約した使用者の時間外労働になります。所定外労働は発生順に通算します。
- 単月100時間未満・複数月平均80時間以内は通算します。36協定の限度時間と年720時間の上限は通算しません。
- 休憩・休日・年次有給休暇は通算しません。
- フリーランスや管理監督者などは通算の対象外ですが、就業時間への配慮が望まれます。
36協定の上限と休日労働の関係は、36協定の上限の記事で解説しています。月60時間超の割増率は、60時間超の割増賃金の記事をご覧ください。
出典:労働基準法 第32条・第36条・第38条・第119条(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049、2026年7月17日施行版)、厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」令和4年7月8日改定版(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000962665.pdf)。いずれも2026年10月14日取得。
AI Scout編集部
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