AIが「休業手当は月給の6割・6割払えば残りは請求できない・払わなくても罰則なし」と答える2026|労基法26条は平均賃金の100分の60以上・民法536条2項は別の定め・違反は120条で30万円以下の罰金
休業手当は月給の6割ではなく、第12条の平均賃金の100分の60以上です。「以上」は最低基準を示し、民法536条2項は別の定めです。対象は使用者の責に帰すべき休業で、違反は第120条の罰金と第114条の付加金の対象です。
会社の都合で仕事を休ませたとき、「休業手当は月給の6割です」「6割払えば、残りの4割は請求できません」とAIが答えることがあります。どちらも労働基準法の条文とは合いません。
この記事では、休業手当を定めた第26条を中心に、平均賃金の第12条、罰則の第120条、付加金の第114条を条文で確認します。あわせて民法第536条第2項との関係も整理し、AIがよく間違える6つの答えを正します。
結論:休業手当について条文が定めていること
- 休業手当の対象は「使用者の責に帰すべき事由による休業」です(第26条)。
- 金額は「平均賃金の百分の六十以上」です。月給や日給の6割ではありません(第26条)。
- 平均賃金は、原則として直前3か月の賃金総額をその期間の「総日数」で割った金額です(第12条第1項)。
- 条文は「以上」と書いています。60%は下限で、上限ではありません。
- 第26条に違反した者は、30万円以下の罰金に処されます(第120条第1号)。
- 第26条の違反は、裁判所が未払金と同一額の付加金の支払を命じることができる対象です(第114条)。
条文を確認する
労働基準法第26条(休業手当)
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
短い条文ですが、要件は3つに分かれます。①使用者の責に帰すべき事由がある、②休業である、③休業期間中に平均賃金の60%以上を払う、です。
労働基準法第12条第1項(平均賃金)
この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。
同じ項のただし書には、日給・時給・出来高払制などの場合の最低保障額があります。賃金総額を「労働した日数」で割った金額の100分の60を下回ってはならない、という定めです(第12条第1項第1号)。
第12条第3項第3号は、「使用者の責めに帰すべき事由によつて休業した期間」の日数と賃金を、平均賃金の計算期間と賃金総額から除くと定めています。休業が続いたあとに別の手当を計算するとき、平均賃金が不当に下がらないようにするための定めです。
労働基準法第120条第1号(罰則)
第120条は「三十万円以下の罰金」に処する違反を並べています。その第1号に「第二十三条から第二十七条まで」とあり、第26条が含まれます。
労働基準法第114条(付加金)
裁判所は、第二十条、第二十六条若しくは第三十七条の規定に違反した使用者又は第三十九条第九項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。(以下略)
ただし書の請求期限は「五年」ですが、第143条第2項により当分の間は「三年」と読み替えます。
民法第536条第2項(債権者の責めに帰すべき事由)
債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。(以下略)
雇用に当てはめると、働けなくなった原因が会社(労務を受け取る側)の責めに帰すべき事由にあるとき、会社は賃金の支払を拒めない、という定めです。労働基準法第26条とは別の法律の、別の条文です。
AIがよく間違える6つの答え
| AIの答え | 条文で確認できること | 根拠 |
|---|---|---|
| 休業手当は月給の6割 | 基準は平均賃金です。月給ではありません | 第26条・第12条第1項 |
| 平均賃金は働いた日数で割る | 原則は期間の総日数で割ります。労働日数で割るのは最低保障額の計算です | 第12条第1項 |
| 6割払えば残りは請求できない | 第26条は「以上」で下限を定めています。民法第536条第2項は別の定めです | 第26条・民法第536条第2項 |
| 休業ならどんな理由でも払う | 条文の対象は「使用者の責に帰すべき事由による休業」に限られます | 第26条 |
| 払わなくても罰則はない | 30万円以下の罰金の対象です | 第120条第1号 |
| 裁判で求められるのは未払分だけ | 同一額の付加金を命じることができます。請求は当分の間3年以内です | 第114条・第143条第2項 |
誤答1:「休業手当は月給の6割」
第26条の基準は「平均賃金」です。平均賃金は、直前3か月の賃金総額を、その期間の総日数で割った1日あたりの金額です。休業1日ごとに、その60%以上を払います。
「月給30万円の6割で18万円」という計算は、条文のどこにも出てきません。休んだ日数に関係なく月額で答えている時点で、計算の単位が違っています。
誤答2:「平均賃金は働いた日数で割る」
第12条第1項本文は「その期間の総日数で除した金額」と書いています。土日や休日も含めた暦の日数です。
働いた日数で割るのは、日給・時給・出来高払制などの最低保障額を計算するときです。この場合は、労働日数で割った金額に「百分の六十」を掛けます(第12条第1項第1号)。本文の金額と最低保障額を比べ、高い方を使います。
具体的な計算手順は、平均賃金を労働日数で割る誤りの記事にまとめています。
誤答3:「6割払えば、残りの4割は請求できない」
第26条の文言は「百分の六十以上」です。60%は使用者に義務づけた最低限の額で、60%を超えて払うことを禁じてはいません。就業規則や労働契約で100%と定めていれば、その定めが適用されます。
また、民法第536条第2項は、債権者(会社)の責めに帰すべき事由で働けなくなったとき、会社は反対給付(賃金)の支払を拒めないと定めています。労働基準法第26条は、この民法の定めを置き換える条文ではありません。
両者の関係について、最高裁判所は、第26条の「使用者の責に帰すべき事由」は民法の「債権者の責めに帰すべき事由」より広く、使用者側に起因する経営・管理上の障害も含むと判断しています(最高裁第二小法廷 昭和62年7月17日判決、ノース・ウエスト航空事件)。民法で賃金の全額を請求できる場合と、第26条の60%以上だけが義務になる場合があるということです。どちらに当たるかは事案ごとの判断なので、個別の事案は弁護士に確認してください。
誤答4:「休業なら、どんな理由でも休業手当が必要」
第26条の対象は「使用者の責に帰すべき事由による休業」です。条文はすべての休業を対象にしていません。
反対に、「天災のような原因でなければ払わなくてよい」とも条文には書かれていません。取引先の事情や資材の不足など、会社の外にきっかけがある休業がどこまで含まれるかは、個別の事情で判断されます。AIが「この場合は不要です」と言い切ったら、労働基準監督署に確認してください。
誤答5:「休業手当を払わなくても罰則はない」
第120条第1号は「第二十三条から第二十七条まで」の違反を30万円以下の罰金としています。第26条はこの範囲に入ります。
罰せられるのは「違反した者」で、事業主にも第121条で罰金刑が科されます。誰が罰せられるかは、両罰規定の記事で解説しています。
誤答6:「裁判で請求できるのは未払分だけ」
第114条は、第26条に違反した使用者に対して、裁判所が未払金と同一額の付加金の支払を命じることができると定めています。命じるのは裁判所で、労働者の請求が必要です。
請求は違反のあった時から行う必要があり、期限は条文上5年、当分の間は3年です(第143条第2項)。付加金の要件は付加金の記事で整理しています。
計算例:月給30万円の人が10日間休業した場合
次の条件で、条文どおりに計算します。数字は説明用の仮の値です。
- 直前3か月の賃金総額:90万円(月給30万円×3か月)
- 直前3か月の総日数:92日
- 会社の都合による休業:10日
| 計算 | 金額 |
|---|---|
| 平均賃金(90万円÷92日) | 約9,782円 |
| 休業1日あたりの最低額(×60%) | 約5,869円 |
| 10日分の最低額 | 約58,696円 |
| AIの誤答「月給の6割」 | 180,000円 |
月給の6割で答えると、10日間の休業に対して約3倍の金額になります。逆に、休業が1か月を超える場合などは、月給の6割より多くなることもあります。どちらにしても、月額で答える計算は条文の基準と別物です。
月給制でも、手当の一部が日給や時給で決まっている場合は、第12条第1項第2号の最低保障額も比べます。円未満の端数処理など、条文にない細かい扱いは労働基準監督署で確認してください。
AIに休業手当を聞くときのプロンプト
条文と計算の材料を先に渡すと、誤答を減らせます。
次の条件で、労働基準法第26条の休業手当の最低額を計算してください。
・直前3か月の賃金総額:〇円(月ごとの内訳:〇円・〇円・〇円)
・直前3か月の総日数:〇日/うち労働日数:〇日
・賃金のうち日給・時給・出来高で決まる部分:〇円
・休業日数:〇日
守ること:
・平均賃金は第12条第1項本文(総日数で割る)と第1号・第2号の最低保障額を両方計算し、高い方を使う
・第26条の「百分の六十以上」は下限であり、上限ではないと明記する
・休業が「使用者の責に帰すべき事由」に当たるかは判断せず、確認が必要と書く
・民法第536条第2項との関係は、条文の文言だけを示し、断定しない
社内で確認しておきたいこと
- 就業規則に休業時の手当の割合を定めているか。60%を超える割合を定めている場合、その割合で計算しているか。
- 休業手当を、平均賃金ではなく月給や基本給から計算していないか。
- 休業期間を、次に平均賃金を計算するときの期間と賃金総額から除いているか(第12条第3項第3号)。
- 休業の理由と日数を記録し、使用者の責に帰すべき事由かどうかを誰が判断したか残しているか。
まとめ
休業手当は、使用者の責に帰すべき事由による休業について、平均賃金の100分の60以上を払う義務です(第26条)。月給の6割ではなく、60%は下限です。賃金全額の請求ができるかは民法第536条第2項の問題で、第26条とは別に判断されます。払わなければ第120条で30万円以下の罰金の対象となり、第114条の付加金も命じられることがあります。AIが「月給の6割」「6割で終わり」と答えたら、第26条と第12条の文言で確かめてください。
個別の事案の判断は、労働基準監督署や弁護士・社会保険労務士に相談してください。
出典
労働基準法(昭和22年法律第49号)第12条・第26条・第114条・第120条・第143条(e-Gov法令検索API v2、322AC0000000049_20260717_508AC0000000060)。民法(明治29年法律第89号)第536条(e-Gov法令検索API v2、129AC0000000089_20260624_508AC0000000045)。いずれも2026年10月28日に取得。判例:最高裁判所第二小法廷 昭和62年7月17日判決(ノース・ウエスト航空事件)。
AI Scout編集部
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