AIが「帰郷の旅費は本人負担・本人が悪ければ会社判断で払わない・自己都合退職も対象」と答える2026|労基法64条は18歳未満の解雇から14日以内の帰郷で使用者が負担・除外は監督署の認定・年少則10条
労働基準法第64条は、18歳未満の人を解雇し、解雇の日から14日以内に帰郷するとき、必要な旅費を使用者が負担すると定めます。本人の責任による解雇で払わないには監督署の認定が必要です。
18歳未満のアルバイトや住み込みの見習いを解雇したとき、実家へ帰る旅費は誰が払うのでしょうか。AIに聞くと「旅費は本人の負担です」「本人に落ち度があれば、会社の判断で払わなくてよいです」と答えることがあります。「自己都合で辞めた場合も会社が払います」と広げる答えもあります。どれも労働基準法第64条の文言と合いません。
この記事では、第64条の本文とただし書、認定の手続を定めた年少者労働基準規則第10条、罰則の第120条を、条文の文言で確認します。年少者の労働時間の制限は第60条・第61条の記事で、最低年齢と親の代理契約の禁止は第56条〜第59条の記事で扱いました。
結論:条文で確認できる6つのこと
- 対象は満18歳に満たない人です。解雇の日から14日以内に帰郷する場合、使用者は必要な旅費を負担しなければなりません(第64条本文)。
- きっかけは「解雇」です。条文に自己都合退職や契約期間の満了は書かれていません。
- 第64条には、第15条第3項にある「就業のために住居を変更した」という要件がありません。
- 本人の責めに帰すべき事由による解雇でも、払わずに済むのは使用者が行政官庁の認定を受けたときだけです(第64条ただし書)。
- 認定は様式第4号の申請書で、所轄労働基準監督署長から受けます。解雇予告の除外認定(施行規則第7条)を受けていれば、第64条の認定を受けたものとされます(年少者労働基準規則第10条)。
- 第64条に違反すると、30万円以下の罰金の対象です(第120条第1号)。
条文を確認する
労働基準法第64条(帰郷旅費)
満十八才に満たない者が解雇の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。ただし、満十八才に満たない者がその責めに帰すべき事由に基づいて解雇され、使用者がその事由について行政官庁の認定を受けたときは、この限りでない。
本文は「負担しなければならない」と義務の形で書かれています。会社が払うかどうかを選べる書き方ではありません。期限は「解雇の日から十四日以内」に帰郷する場合で、起点は解雇の日です。
年少者労働基準規則第10条(帰郷旅費支給除外認定の申請)
法第六十四条ただし書の規定による認定は、様式第四号の帰郷旅費支給除外認定申請書により、所轄労働基準監督署長から受けなければならない。
2 労働基準法施行規則(昭和二十二年厚生省令第二十三号)第七条の規定による認定を受けた場合においては、前項の規定にかかわらず、法第六十四条ただし書の規定による認定を受けたものとする。
施行規則第7条は、解雇予告の除外認定などの様式を定めた条文です。労働者の責に帰すべき事由による解雇の予告除外(第20条第1項ただし書後段)は、様式第3号で認定を受けます。この認定を受けていれば、帰郷旅費の認定を別に取り直す必要はありません。解雇予告の除外認定については第20条・第21条の記事で整理しています。
労働基準法第15条第3項(比較用)
前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
同じ「14日以内」「必要な旅費」でも、第15条第3項は年齢を問いません。その代わり、明示された労働条件が事実と違ったことによる契約解除と、住居の変更が要件です。詳しくは第15条の記事をご覧ください。
労働基準法第120条(罰則・抜粋)
次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 (略)第五十七条から第五十九条まで、第六十四条、第六十八条(略)の規定に違反した者
AIが取り違えやすい5つの答え
1. 「帰郷の旅費は本人の自己負担です」
18歳未満の人を解雇し、その人が14日以内に帰郷する場合は、使用者の負担です(第64条本文)。「就業規則に定めがないから払わない」という扱いも、条文の義務の形とは合いません。
2. 「本人に落ち度があれば、会社の判断で払わなくてよい」
ただし書は2つの条件を並べています。本人の責めに帰すべき事由による解雇であることと、使用者がその事由について行政官庁の認定を受けたことです。会社が「本人が悪い」と判断しただけでは、ただし書に当たりません。
3. 「自己都合で辞めた18歳未満の人にも旅費を払う義務がある」
第64条の文言は「解雇の日から十四日以内に帰郷する場合」です。自己都合退職や期間満了は条文に書かれていません。ただし、明示された労働条件と実際が違って契約を解除し、就業のために住居を変えていた場合は、年齢を問わず第15条第3項の対象になります。
4. 「住み込みや転居した人だけが対象です」
住居の変更を要件にしているのは第15条第3項です。第64条の本文には住居の変更という文言がありません。2つの条文の要件を混ぜた答えが出たら、条文番号を分けて聞き直してください。
5. 「帰郷旅費には罰則がありません」
第120条第1号に第64条が挙がっており、違反は30万円以下の罰金の対象です。
実務で確かめる順番
- 解雇の日の時点で満18歳に満たないかを、備え付けの戸籍証明書(第57条)で確かめる
- 退職の理由が「解雇」か、自己都合・期間満了かを分ける
- 本人の責任による解雇で旅費を払わない方針なら、先に監督署の認定(様式第4号、または解雇予告の除外認定)を受ける
- 解雇の日から14日以内の帰郷かを確かめる
- 「必要な旅費」の範囲(交通手段・区間など)は条文に細目がないため、監督署か専門家に確認する
解雇予告手当の日数の数え方は解雇予告30日の記事で扱っています。
AIに確認させるときの手順
- 年齢、退職の理由(解雇か自己都合か)、解雇の日、帰郷の予定日をそろえて渡す
- 「労働基準法第64条の本文とただし書に分けて当てはめて」と条文番号を指定する
- ただし書を使う答えには「行政官庁の認定を受けたか」を条件に入れたかを確かめる
- 第15条第3項の話が混ざったら、住居の変更と契約解除の理由を別の質問に分ける
- 出力の条文の文言を、e-Gov法令検索の原文と突き合わせる
条文の引用を確かめる作業には、ChatGPTやClaudeのような対話型AIも使えます。その場合も、条文番号と文言は原文で確認してください。
まとめ
- 18歳未満の人を解雇し、解雇の日から14日以内に帰郷するときは、使用者が必要な旅費を負担します(第64条)。
- 本人の責任による解雇でも、払わずに済むのは監督署の認定を受けたときだけです(第64条ただし書)。
- 認定は様式第4号で受けます。解雇予告の除外認定を受けていれば、第64条の認定を受けたものとされます(年少者労働基準規則第10条)。
- 第64条は解雇が対象で、住居変更の要件はありません。年齢を問わず住居変更を要件とするのは第15条第3項です。
- 違反は30万円以下の罰金の対象です(第120条)。
出典:労働基準法 第15条・第20条・第57条・第64条・第120条、労働基準法施行規則 第7条、年少者労働基準規則 第10条(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049 ・ https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023 ・ https://laws.e-gov.go.jp/law/329M50002000013 、e-Gov法令API v2で2026-11-03に取得)。
AI Scout編集部
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