AIが「妊婦も申し出がなければ重い作業OK・妊娠していない女性は制限なし・罰則は全部30万円以下」と答える2026|労基法64条の3は妊娠中なら24業務すべて禁止・重量物と有害物は全女性・坑内は64条の2で50万円以下
妊娠中の女性は女性労働基準規則の24業務すべてに申し出なしで就かせられません(労基法64条の3)。産後1年以内は一部が申し出制、重量物と有害物は全女性が対象です。坑内業務の罰則は50万円以下です。
妊娠中や産後の社員の配置をAIに相談すると、「本人から申し出があれば重い作業を外す」「妊娠していない女性には制限がない」といった答えが返ることがあります。どちらも労働基準法と女性労働基準規則の条文とは違います。
この記事では、労働基準法第64条の2(坑内業務)と第64条の3(危険有害業務)の条文と、その範囲を定めた女性労働基準規則第1条〜第3条を確認します。そのうえで、AIがよく間違える6つの答えを正します。
結論:就業制限の要点
- 妊娠中の女性は、女性労働基準規則第2条第1項の24業務すべてに就かせてはいけません。本人の申し出は条件ではありません。
- 産後1年を経過しない女性は、24業務のうち第13号・第14号を除く22業務が対象です。そのうち重量物(第1号)、有害物(第18号)、振動(第24号)の3業務は申し出がなくても禁止です。残りは本人が申し出た場合に限り禁止です。
- 妊産婦以外の女性も、重量物の取扱い(第1号)と有害物を発散する場所の業務(第18号)には就かせてはいけません(女性労働基準規則第3条)。
- 坑内業務は、妊娠中の女性はすべて禁止です。産後1年以内の女性は申し出た場合にすべて禁止です。それ以外の満18歳以上の女性は、掘削などの省令で定める業務だけが禁止です。
- 罰則は条によって違います。第64条の2違反は1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。第64条の3違反は6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。
条文を確認する
第64条の2(坑内業務の就業制限)
使用者は、次の女性を次の業務に就かせてはいけません。
- 第1号:妊娠中の女性と、坑内業務に従事しない旨を申し出た産後1年を経過しない女性 → 坑内で行われるすべての業務
- 第2号:それ以外の満18歳以上の女性 → 坑内業務のうち、人力による掘削の業務その他の厚生労働省令で定める業務
第2号の省令は女性労働基準規則第1条です。人力・動力・発破による鉱物等の掘削や掘採、それに付随するずりや資材の運搬などが挙がっています。動力による掘削のうち遠隔操作のものは除かれます。掘削に係る計画作成、工程管理、品質管理、安全管理などの技術上の管理や、技術上の指導監督の業務も除かれています。
第64条の3(危険有害業務の就業制限)
第1項は、妊娠中の女性と産後1年を経過しない女性を「妊産婦」と定めています。妊産婦を、重量物を取り扱う業務や有害ガスを発散する場所の業務など、妊娠・出産・哺育等に有害な業務に就かせてはいけません。
第2項は、このうち妊娠・出産の機能に有害な業務について、省令で妊産婦以外の女性にも準用できると定めています。第3項は、業務の範囲と対象者の範囲を省令に委ねています。
女性労働基準規則第2条・第3条(業務の範囲)
第2条第1項は、妊娠中の女性を就かせてはいけない業務として24の号を挙げています。主なものは次のとおりです。
- 第1号:一定の重量以上の重量物を取り扱う業務
- 第2号〜第12号:ボイラーの取扱い・溶接、つり上げ荷重5トン以上のクレーン等の運転、玉掛け、プレス機械等の業務など
- 第13号:土砂が崩壊するおそれのある場所、深さ5メートル以上の地穴における業務
- 第14号:高さ5メートル以上で墜落の危険がある場所の業務
- 第15号〜第17号:足場の組立て・解体、立木の伐採、木材の搬出の業務
- 第18号:鉛、有機溶剤、特定化学物質など、指定された有害物を発散する場所の業務(呼吸用保護具が必要な作業や、作業環境測定で第3管理区分とされた場所などに限ります)
- 第19号〜第23号:高熱物体・暑熱、低温物体・寒冷、異常気圧下の業務
- 第24号:さく岩機など身体に著しい振動を与える機械器具を使う業務
第1号の重量の基準は、年齢と作業の種類で決まっています。
| 年齢 | 断続作業 | 継続作業 |
|---|---|---|
| 満16歳未満 | 12kg以上 | 8kg以上 |
| 満16歳以上満18歳未満 | 25kg以上 | 15kg以上 |
| 満18歳以上 | 30kg以上 | 20kg以上 |
第2条第2項は、産後1年を経過しない女性について、第1号〜第12号と第15号〜第24号を対象にしています。ただし第2号〜第12号、第15号〜第17号、第19号〜第23号は、本人が従事しない旨を申し出た場合に限ります。
第3条は、妊産婦以外の女性について、第1号(重量物)と第18号(有害物)を準用すると定めています。
対象者ごとの整理
| 対象者 | 危険有害業務(第64条の3) | 坑内業務(第64条の2) |
|---|---|---|
| 妊娠中の女性 | 24業務すべて禁止(申し出不要) | すべて禁止 |
| 産後1年を経過しない女性 | 第1号・第18号・第24号は禁止。第2号〜第12号、第15号〜第17号、第19号〜第23号は申し出た場合に禁止。第13号・第14号は対象外 | 申し出た場合にすべて禁止 |
| 上記以外の女性(満18歳以上) | 第1号(重量物)と第18号(有害物)が禁止 | 掘削などの省令の業務だけ禁止 |
なお満18歳未満の者には、性別にかかわらず別の条文があります。坑内労働は第63条ですべて禁止です。危険有害業務は第62条で制限されています。
AIによくある誤答6つ
誤答1:「妊娠中でも、本人から申し出がなければ重い作業をさせてよい」
妊娠中の女性については、申し出は条件になっていません。第64条の3第1項と女性労働基準規則第2条第1項により、24業務すべてに就かせてはいけません。申し出が条件になるのは、産後1年を経過しない女性の一部の業務です。
誤答2:「産後1年以内なら、妊娠中と同じく24業務すべてが禁止」
産後の女性の対象は22業務です。第13号(土砂崩壊のおそれがある場所・深い地穴)と第14号(高所)は入っていません。さらに22業務のうち19業務は、本人が申し出た場合に限り禁止です。申し出がなくても禁止なのは、重量物(第1号)、有害物(第18号)、振動(第24号)の3業務です。
誤答3:「妊娠していない女性には、就業制限は何もない」
女性労働基準規則第3条により、妊産婦以外の女性も、重量物を取り扱う業務と有害物を発散する場所の業務には就かせてはいけません。満18歳以上なら、断続作業で30kg以上、継続作業で20kg以上の重量物が対象です。
誤答4:「女性は坑内で働くことが一切できない」
妊娠中の女性と、申し出た産後1年以内の女性を除けば、満18歳以上の女性で禁止されるのは掘削などの省令の業務だけです。掘削の計画作成や安全管理などの技術上の管理、指導監督の業務は、女性労働基準規則第1条で除かれています。
誤答5:「就業制限の違反は、どれも30万円以下の罰金」
第64条の2(坑内業務)違反は第118条で、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。第64条の3(危険有害業務)違反は第119条で、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。どちらも拘禁刑があります。
誤答6:「18歳未満の扱いも、女性の規定と同じ」
満18歳未満の者は、男女を問わず第63条で坑内労働がすべて禁止です。女性の規定のように、業務や申し出で分かれていません。危険有害業務は第62条で別に制限されています。第62条の具体的な業務の範囲は別の省令で定められており、今回は確認していません。
AIに点検させるときのプロンプト例
AIに配置を相談するときは、対象者の区分と根拠条文を分けて答えさせると誤りを見つけやすくなります。
次の社員の配置案を、労働基準法第64条の2・第64条の3と女性労働基準規則第1条〜第3条に照らして点検してください。対象者を「妊娠中」「産後1年以内」「それ以外の女性」に分け、業務ごとに号番号と、本人の申し出が条件かどうかを示してください。条文で確認できない点は「不明」と書いてください。
返ってきた答えは、号番号と条文を突き合わせて確認してください。AIが号番号を取り違えることもあります。
点検チェックリスト
- 妊娠中の女性を、申し出の有無に関係なく24業務から外しているか
- 産後1年以内の女性について、申し出がなくても禁止の3業務(重量物・有害物・振動)から外しているか
- 産後1年以内の女性から申し出を受けたとき、対象の業務から外す手順があるか
- 妊産婦以外の女性について、重量物(満18歳以上は断続30kg・継続20kg以上)と有害物の業務を把握しているか
- 坑内業務がある事業で、対象者ごとの制限を区別しているか
- 満18歳未満の者を、第62条・第63条で別に確認しているか
今回確認していないこと
- 第64条の3以外の母性保護の規定(産前産後休業の第65条など)の詳しい内容
- 申し出の方法や時期、妊娠の把握方法について示した通達
- 第18号の有害物の場所かどうかの判定方法(作業環境測定の実務)
- 男女雇用機会均等法にもとづく母性健康管理の措置
上の点は条文だけでは判断できません。実務で判断が必要なときは、所轄の労働基準監督署に確認してください。
まとめ
- 妊娠中の女性は、危険有害な24業務と坑内のすべての業務に、申し出の有無にかかわらず就かせてはいけません。
- 産後1年以内の女性は、重量物・有害物・振動の3業務が常に禁止で、その他の多くは申し出た場合に禁止です。
- 妊産婦以外の女性も、重量物と有害物の業務には就かせてはいけません。
- 罰則は、坑内業務(第118条)が1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、危険有害業務(第119条)が6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。
出典:労働基準法(昭和22年法律第49号)第62条・第63条・第64条の2・第64条の3・第118条・第119条。e-Gov法令検索API v2、2026年7月17日施行版(322AC0000000049_20260717_508AC0000000060)から取得しました。女性労働基準規則(昭和61年労働省令第3号)第1条〜第3条。e-Gov法令検索API v2(361M50002000003_20190507_501M60000100001)から取得しました。
AI Scout編集部
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