AIが「計画的付与なら会社が有給休暇を全部指定できる・労基署に届出が要る」と答える2026|労基法39条6項は5日を超える部分だけ・過半数代表との書面協定・届出の定めなし・計画日は年5日義務に5日まで算入
AIに年休の計画的付与を聞くと「全日数を会社が指定できる」「協定は届出が必要」と答えることがあります。労基法39条6項・8項の条文で、5日を残すルール・協定の要件・年5日義務との関係と5つの誤答を解説します。
「お盆と年末に全社一斉で休みたいので、年次有給休暇をまとめて充てたい」とAIに相談すると、「計画的付与なら、会社が有給休暇の日数をすべて指定できます。就業規則に書いて、労働基準監督署に届け出れば導入できます」と返ってくることがあります。
この答えは条文と合いません。労働基準法第39条第6項で会社が時季を決められるのは、有給休暇の日数のうち5日を超える部分だけです。導入の要件は、過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)との書面による協定です。第39条第6項には、協定を届け出る規定がありません。
この記事では、e-Gov法令検索で取得した労働基準法第39条・第119条・第120条の条文をもとに、AIが取り違えやすい5つの点と、AIに正しく答えさせる手順をまとめます。通達や裁判例は確認していません。条文から当サイトが読み取った部分は、その都度「当サイトの読み」と書いています。
第39条第6項の基本ルール
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 導入の要件 | 過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)との書面による協定で、有給休暇を与える時季を定める | 第39条第6項 |
| 会社が時季を決められる日数 | 第1項から第3項までの有給休暇の日数のうち、5日を超える部分 | 第39条第6項 |
| 労働者の時季指定との関係 | 協定で定めた部分は「前項の規定にかかわらず」協定の定めで与えられる | 第39条第6項 |
| 年5日の取得義務との関係 | 計画的付与で与えた日数(5日が上限)は、会社が時季を指定して与える必要がない | 第39条第8項 |
| 協定の届出 | 第39条第6項に届出の定めはない | 第39条第6項・第120条 |
AIがよく間違える5つの答え
誤答1:「計画的付与なら、会社が有給休暇を全部指定できる」
第39条第6項は、協定で時季を定めたとき、有給休暇の日数のうち「五日を超える部分」について協定どおりに与えられると定めています。少なくとも5日は、労働者が自分で時季を選べる日として残ります。
付与日数ごとに、計画的付与に回せる日数の上限を計算すると次のとおりです(算術)。
| その年の付与日数 | 計画的付与に回せる上限 | 労働者が自分で選べる日数 |
|---|---|---|
| 10日(入社6か月) | 5日 | 5日 |
| 14日(6か月経過日から3年) | 9日 | 5日 |
| 20日(6か月経過日から6年以上) | 15日 | 5日 |
| 7日(比例付与の例) | 2日 | 5日 |
10日・14日・20日は、第39条第1項・第2項の表から求めた日数です。第6項は第3項(比例付与)の有給休暇も対象にしているため、付与日数が10日未満のパートタイマーでも、5日を超える部分は計画的付与に回せます。比例付与の日数の決め方は、比例付与の記事で扱っています。
前年からの繰越分を「5日を超える部分」の計算に含めるかどうかは、条文に直接の書き方がありません。今回は通達を確認していないため、この点は未確認です。繰越の基本は繰越と時効の記事をご覧ください。
誤答2:「就業規則に書けば導入できる」「社員一人ひとりの同意が必要」
第39条第6項が求めているのは、過半数労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者との書面による協定です。個々の労働者の同意は、条文の要件に入っていません。
逆に、就業規則に書くだけで協定を結ばない方法も、第6項には書かれていません。就業規則にも休暇の定めを置く必要があるかどうかは、今回第89条を取得していないため確認していません。
過半数代表者の選び方など、協定を結ぶ相手の要件は、就業規則の手続の記事と共通する論点です。
誤答3:「計画的付与の協定は労働基準監督署に届け出る」
第39条第6項の条文には、協定を行政官庁に届け出る定めがありません。第120条第1号は、届出に関係する規定として第32条の2第2項(第32条の3第4項・第32条の4第4項・第32条の5第3項で準用する場合を含む)を挙げています。この列挙に第39条第6項は入っていません。
当サイトが取得した第39条・第119条・第120条の範囲では、届出の義務は見当たりません。施行規則に届出の定めがあるかどうかは、今回確認していません。変形労働時間制の協定は届出が必要なので、同じ「労使協定」でも扱いが違います。1年単位の例は1年単位の変形労働時間制の記事で解説しています。
誤答4:「計画的付与の日は、年5日の取得義務には数えない」
第39条第7項は、付与日数が10日以上の労働者について、5日分は会社が時季を指定して与えなければならないと定めています。そのうえで第8項は、第5項(労働者の請求)または第6項(計画的付与)で与えた日数分は、時季を指定して与えなくてよいとしています。数えられる日数は5日が上限です。
- 計画的付与で5日以上与えた場合:会社が別に時季を指定する必要はありません。
- 計画的付与で3日与え、本人の請求による取得が0日の場合:残り2日を会社が時季を指定して与えます(算術)。
第7項の違反は第120条で30万円以下の罰金の対象です。年5日の取得義務の数え方は、年5日の取得義務の記事で詳しく扱っています。
誤答5:「計画日でも、会社は時季変更権で別の日にずらせる」
時季変更権は第39条第5項ただし書の規定です。請求された時季に休ませると事業の正常な運営を妨げる場合に、会社がほかの時季に与えられるというものです。
第6項は、協定で定めた部分を「前項の規定にかかわらず、その定めにより」与えられるとしています。このため、計画的付与の日は第5項の請求と時季変更の仕組みから外れ、協定で決めた日に与えるものと読めます(当サイトの読み)。労働者が計画日を自分の都合で別の日に替える場合も、会社が一方的に動かす場合も、協定の定めが基準になります。協定に変更の手続を書いておくと、運用で迷いにくくなります。
違反したときの罰則
| 違反の内容 | 罰則 | 根拠 |
|---|---|---|
| 第39条の違反(第7項を除く) | 6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 | 第119条第1号 |
| 年5日の時季指定(第39条第7項)の違反 | 30万円以下の罰金 | 第120条第1号 |
協定が5日を残さずに全日数を指定していた場合、5日を超えない部分には第6項の効果が及ばないと読めます(当サイトの読み)。その日に休ませても、計画的付与として有給休暇を与えたことにはならない可能性があります。協定を作るときは、付与日数が最も少ない人でも5日が残るかを確かめてください。
AIに正しく答えさせる手順
- 付与日数を人ごとに伝える:「入社1年6か月の正社員は11日、週3日のパートは5日」のように書きます。AIが「5日を超える部分」を人ごとに計算できます。
- 条文の確認を指示する:「労働基準法第39条第5項から第8項を確認して答えてください」と書きます。第6項と第8項をセットで読ませると、取得義務との関係を落としにくくなります。
- 導入の要件を分けて聞く:「協定の相手」「個人の同意の要否」「届出の要否」を別々に答えさせます。変形労働時間制の協定と混ぜた答えを見分けられます。
- 計画日数の案を検算させる:一斉休業の日数案を渡し、全員に5日以上が残るか、年5日の取得義務がいくつ満たされるかを計算させます。
- 未確認の点を言わせる:繰越分の扱いや通達の内容は、「条文に書かれていない点は、未確認と明記してください」と頼みます。
プロンプト例:「当社は年末に3日、夏に2日の一斉休業を年次有給休暇の計画的付与で行いたいと考えています。付与日数は正社員が10日から20日、週3日勤務のパートが5日から11日です。労働基準法第39条第5項から第8項・第119条・第120条を確認し、計画的付与に回せる日数の上限を人ごとに計算してください。あわせて、協定の相手と届出の要否、年5日の取得義務にどう数えるかを根拠条文つきで答え、条文に書かれていない点は未確認と明記してください。」
この例では、週3日勤務で付与日数が5日のパートには、5日を超える部分がありません(算術)。一斉休業の日をそのまま計画的付与に充てることはできないため、別の扱いを決める必要があります。どう扱うかは条文に書かれていないため、今回は確認していません。
まとめ
- 計画的付与で会社が時季を決められるのは、有給休暇の日数のうち5日を超える部分だけです。20日なら15日、10日なら5日が上限です。
- 導入の要件は、過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)との書面による協定です。個人の同意は条文の要件ではありません。
- 第39条第6項には協定の届出の定めがなく、第120条の届出関係の列挙にも入っていません。
- 計画的付与で与えた日数は、5日を上限に年5日の取得義務に数えられます(第39条第8項)。
- 計画日は、労働者の請求と時季変更権の仕組み(第5項)から外れ、協定の定めで与えると読めます(当サイトの読み)。
出典:労働基準法 第39条・第119条・第120条(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049、2026年7月17日施行版)。2026年10月19日に取得しました。通達・裁判例・施行規則は確認していません。具体的な運用は、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士にご確認ください。
AI Scout編集部
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