AIが「有給は会社の承認が必要・繁忙期なら拒否できる・取った人の手当は減らせる」と答える2026|労基法39条5項は請求した時季に付与・会社は他の時季に変えられるだけ・136条は不利益取扱いを禁止
労基法39条5項は、有給休暇を労働者の請求する時季に与えると定めます。会社は事業の正常な運営を妨げる場合に他の時季へ変えられるだけです。136条は取得者への不利益取扱いを禁じ、39条違反は6か月以下の拘禁刑等です。
「有給休暇は会社の承認がないと取れません」「繁忙期なら会社は有給を断れます」「有給を使った人の皆勤手当を外しても問題ありません」とAIが答えることがあります。どれも労働基準法第39条第5項と第136条の条文とは合いません。
この記事では、年次有給休暇の時季を決める第39条第5項(時季指定と時季変更)と、取得者への不利益取扱いを定める第136条を条文で確認します。AIがよく間違える7つの答えを、条文の文言で正します。
結論:条文で確認できる6つのこと
- 有給休暇は「労働者の請求する時季」に与えます。条文に会社の承認を条件とする文言はありません(第39条第5項本文)。
- 会社ができるのは「他の時季にこれを与える」ことです。休暇そのものを与えないことではありません(第39条第5項ただし書)。
- 時季を変えられるのは「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られます(第39条第5項ただし書)。
- 条文には、休暇の理由を申し出る要件は書かれていません(第39条第5項)。
- 有給休暇を取った人への賃金の減額その他の不利益な取扱いは、しないようにしなければなりません(第136条)。
- 第39条(第7項を除く)に違反すると、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です(第119条第1号)。
条文を確認する
労働基準法第39条第5項(時季指定と時季変更)
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
本文は「与えなければならない」です。時季を決めるのは「労働者の請求」で、使用者の承認や許可を求める文言はありません。
ただし書は「他の時季にこれを与えることができる」です。認められているのは時季をずらすことで、有給休暇を消すことではありません。
労働基準法第136条(不利益取扱い)
使用者は、第三十九条第一項から第四項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。
対象は第39条第1項から第4項までの有給休暇です。時間単位の有給休暇(第4項)も含まれます。
なお、第136条は第119条・第120条の罰則の列挙には入っていません。罰則の対象かどうかと、してよいかどうかは別の問題です。
AIがよく間違える7つの答え
誤答1:「有給休暇は会社の承認が必要です」
第39条第5項本文は「労働者の請求する時季に与えなければならない」です。承認を条件にする文言はありません。
社内で申請書や締切を決めることはありますが、それは手続の話です。条文上、時季を決める起点は労働者の請求です。
誤答2:「忙しい時期なら会社は有給を拒否できます」
ただし書が認めるのは「他の時季にこれを与える」ことです。拒否して与えないことは条文に書かれていません。
要件も「事業の正常な運営を妨げる場合」です。単に「忙しい」「人が足りない」と書かれているわけではありません。どこまでが該当するかは個別の事情で判断されるため、迷う場合は所轄の労働基準監督署に確認してください。
誤答3:「有給の理由を言わないと取れません」
第39条第5項に、理由の申告を条件とする文言はありません。時季を決める要素は「労働者の請求する時季」だけです。
誤答4:「時季変更をすれば、その分の有給は消えます」
ただし書は「他の時季にこれを与える」です。日数はそのまま残り、別の時季に与えます。
未使用の有給休暇は、第115条により2年で時効になります。繰越しの考え方は繰越しと時効の記事で整理しています。
誤答5:「会社は好きな日に有給を割り振れます」
会社が時季を決められるのは、条文で定められた2つの場合です。
- 労使協定で時季を定めた場合(計画的付与)。対象は5日を超える部分だけです(第39条第6項)。
- 年10日以上付与される労働者に、基準日から1年以内に5日を取らせる場合(第39条第7項)。
どちらも条件付きの例外です。詳しくは計画的付与の記事と年5日の時季指定の記事をご覧ください。
誤答6:「有給を使った人の皆勤手当や賞与を減らしても違法ではありません」
第136条は、有給休暇を取った労働者への「賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」と定めています。
第136条には罰則がありません。それでも、条文が求めているのは不利益な取扱いをしないことです。「罰則がない=してよい」という答えは、条文の文言と合いません。
誤答7:「有給を与えなくても罰則はありません」
第119条第1号は「第三十九条(第七項を除く。)」の違反を、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金としています。第5項に反して請求された時季に与えない場合も、この範囲に入ります。
第39条第7項(年5日の時季指定)の違反は、第120条第1号で30万円以下の罰金です。罰則の重さが項によって違う点に注意してください。
早見表:会社ができること・できないこと
| 場面 | 条文 | 会社ができること |
|---|---|---|
| 労働者が時季を請求した | 第39条第5項本文 | その時季に与える |
| その時季では事業の正常な運営を妨げる | 第39条第5項ただし書 | 他の時季に与える(日数は残る) |
| 労使協定で時季を定めた | 第39条第6項 | 5日を超える部分だけ、協定の時季に与える |
| 年10日以上付与される労働者 | 第39条第7項 | 基準日から1年以内に5日を時季指定して与える |
| 有給を取った労働者 | 第136条 | 賃金の減額その他不利益な取扱いをしない |
罰則
- 第39条(第7項を除く)の違反:6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(第119条第1号)
- 第39条第7項の違反:30万円以下の罰金(第120条第1号)
- 事業主にも罰金刑が科されます(第121条第1項)
- 第136条の違反:第119条・第120条の列挙に含まれていません
誰が罰せられるかは両罰規定の記事で整理しています。有給休暇中の賃金の計算は有給休暇の賃金の記事をご覧ください。
AIに質問するときのコツ
有給休暇の取り方をAIに聞くときは、次の3点を指示すると誤答が減ります。
- 「労働基準法第39条第5項と第136条の条文を引用して答えて」と根拠を指定する
- 「拒否」と「他の時季に変更」を分けて答えるよう求める
- 答えに条文番号がない部分は、e-Gov法令検索で原文を確認する
シフトと休暇の調整をAIツールに任せる場合も、時季変更の判断は人が行います。シフト作成を支援するツールの例として、TeamSpirit AIシフトエージェントがあります。
まとめ
- 有給休暇は労働者の請求する時季に与えます。条文に承認を条件とする文言はありません(第39条第5項本文)。
- 会社にできるのは、事業の正常な運営を妨げる場合に他の時季に与えることだけです(第39条第5項ただし書)。
- 時季変更をしても日数は残ります。未使用分は2年で時効です(第115条)。
- 会社が時季を決められるのは、計画的付与(第6項)と年5日の時季指定(第7項)の場合です。
- 有給を取った人への賃金の減額その他不利益な取扱いは、しないようにしなければなりません(第136条)。
- 第39条(第7項を除く)の違反は6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です(第119条第1号)。
出典:e-Gov法令検索 法令API v2(労働基準法 322AC0000000049_20260717_508AC0000000060 第39条・第115条・第119条・第120条・第121条・第136条)、2026年10月29日取得。本記事は条文の文言の確認であり、個別の事案の判断は所轄の労働基準監督署や専門家にご確認ください。
AI Scout編集部
AIツール・SaaS専門のレビューチーム。最新のAI技術動向を追い、実際にツールを使用した上で、正確で信頼性の高い情報を提供しています。