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AIが残業代を基本給だけで計算してしまう2026|割増単価1,803円が実は2,296円になるのを防ぐ5つの手順

AIに残業代を聞くと基本給だけで計算しがちです。役職手当や一律の住宅手当は割増賃金の基礎に入り、月30時間なら1人あたり月1万4,790円ずれます。取り違えを防ぐ5つの手順を解説します。

#AI活用#業務効率化#品質管理#プロンプト#労務#給与計算

「基本給25万円の社員が月30時間残業しました。残業代はいくらですか」とAIに聞くと、「時給換算1,442円×1.25×30時間で約5万4,000円です」と返ってくることがあります。計算の筋は通っています。しかし、この社員に役職手当と一律の住宅手当が付いていれば、割増賃金の基礎に入れなければなりません。分母の月173時間も、法定の上限から出した数字で、会社の所定労働時間ではありません。計算し直すと、割増単価は1,803円ではなく2,296円になります。

1時間あたり493円、月30時間で1万4,790円のズレです。この記事では、AIが残業代を基本給だけで計算してしまう仕組みと、取り違えを防ぐ5つの手順を説明します。

同じ社員の割増単価が1,803円と2,296円に分かれる

割増賃金は、「1時間あたりの賃金」に割増率をかけて求めます。月給制の場合、1時間あたりの賃金は、月給を月平均所定労働時間で割った金額です。ここでいう月給には、基本給だけでなく、除外が認められた手当を除いたすべての手当が入ります。

例として、次のような給与の社員を考えます。数字は計算のための例で、特定の会社の実績ではありません。

項目月額割増賃金の基礎
基本給250,000円入る
役職手当30,000円入る
住宅手当(全員一律)20,000円入る
家族手当(扶養人数に応じて支給)15,000円入らない
通勤手当10,000円入らない
合計325,000円基礎は300,000円

会社の所定労働時間は1日8時間、年間の所定休日は120日とします。年間の所定労働日数は365日−120日で245日、年間所定労働時間は245日×8時間で1,960時間です。12で割った月平均所定労働時間は163.33時間になります。

計算項目AIの答え正しい計算
基礎となる賃金250,000円(基本給のみ)300,000円(除外手当以外を含む)
月の所定労働時間173.33時間(40時間×52週÷12)163.33時間(自社カレンダー)
1時間あたりの賃金1,442円1,837円
割増単価(×1.25)1,803円2,296円
月30時間の残業代54,090円68,880円

差は1時間あたり493円、月30時間で1万4,790円です。年間では17万7,480円、同じ条件の社員が10人いれば177万4,800円になります。

AIが基本給だけで計算しがちな2つの理由

ひとつは、「基本給」という言葉が計算式の入口になりやすいことです。解説記事の多くは「基本給÷所定労働時間×1.25」と書いており、手当の扱いは後回しになっています。AIは質問に「基本給25万円」とあれば、その数字をそのまま分子に置きます。

もうひとつは、分母に法定労働時間から作った数字を使いがちなことです。週40時間×52週÷12か月の173.33時間は、法定の上限から機械的に出した目安で、実際の会社の所定労働時間とは限りません。所定休日が120日ある会社なら163.33時間、125日なら160時間です。分母が大きいほど単価は小さくなるため、173.33時間を使うと残業代は少なめに出ます。

除外できる手当は7種類だけ、しかも名前ではなく実態で決まる

労働基準法第37条と労働基準法施行規則第21条で、割増賃金の基礎から除外できる賃金は次の7種類に限られています。

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

これ以外の手当、たとえば役職手当、資格手当、皆勤手当、営業手当、固定の職務手当などは、名称にかかわらず基礎に入ります。

さらに、7種類に入っていても、名前だけでは除外できません。住宅手当は、家賃や住宅ローンの額に応じて支給額が決まるものだけが除外の対象です。全員に一律2万円を支給する住宅手当は、名前が住宅手当でも基礎に入ります。家族手当も同じで、扶養家族の人数に関係なく一律に払っているものは除外できません。AIに「住宅手当は除外」とだけ覚えさせていると、ここで間違えます。

月1万4,790円のズレが何に響くか

まず、未払い残業代の請求リスクです。賃金の請求権の消滅時効は、2020年4月以降に支払期日が来た分から当分の間3年です。1人あたり月1万4,790円の不足が3年続けば53万2,440円、10人なら532万4,400円になります。労働基準監督署の調査や退職者からの請求で、まとめて遡って払うことになります。

次に、付加金と遅延損害金です。未払いが訴訟になると、裁判所は未払額と同じ額までの付加金の支払いを命じることができます。不足額そのものより、後から積み上がる金額の方が大きくなることがあります。

最後に、人件費の見積もりが狂うことです。採用計画や予算で「残業代は基本給の何割」と置いていると、手当の多い職種ほど実際の支払いが上振れします。採用コストを年収そのままで見積もる取り違えと同じ構造です。

取り違えを防ぐ5つの手順

1. 手当を全部書き出し、除外できるものに印を付けてから渡す

「基本給25万円」ではなく、給与明細の項目をすべて並べます。そのうえで、家族手当・通勤手当など7種類に該当し、かつ実態としても除外できるものに印を付けます。判断が付かない手当は「基礎に入れる」側に置いてAIに渡すのが安全です。

2. 月平均所定労働時間は自社の年間カレンダーから出す

「(365日−年間所定休日)×1日の所定労働時間÷12」で自社の数字を出し、「分母は163.33時間で計算してください」と数値で指定します。173.33時間や160時間といった一般的な値をAIに選ばせないことが大切です。うるう年は366日で数えます。

3. 法定内残業と法定外残業を分けて伝える

所定労働時間が1日7時間の会社では、8時間目までは法定内残業で、法律上の割増は不要です(通常の時間単価の1.0倍)。ただし就業規則で法定内も割増を払うと定めていれば、その規定が優先します。「1日の所定は7時間、就業規則では法定内も1.25倍」のように、両方を書いて渡します。

4. 割増率を時間帯・日ごとに指定する

時間外は25%以上、月60時間を超えた分は50%以上(2023年4月から中小企業も対象)、深夜(22時〜5時)は25%以上の加算、法定休日は35%以上です。時間外かつ深夜なら合わせて50%になります。「月30時間の残業」とまとめて渡すと、AIは全部を1.25倍で計算します。時間帯別の内訳を渡してください。

5. 端数処理のルールを指定し、月合計で検算させる

認められている端数処理は、1時間あたりの賃金と割増賃金の額の円未満四捨五入、1か月の時間外労働時間の合計の30分未満切り捨て・30分以上切り上げです。日ごとに15分未満を切り捨てるような処理は認められていません。「日ごとの切り捨てはしない」「基礎賃金÷月平均所定労働時間×割増率×時間数の合計が、明細の残業代と一致するか確認してください」と指示します。

AIツールと給与計算ソフトで役割を分ける

手当の性質の整理や、就業規則の該当条文の読み解きはChatGPTClaudeといったAIアシスタントが得意です。一方、毎月の残業代の確定計算は、勤怠データと連動した給与計算ソフトに任せる方が確実です。ソフト側は月平均所定労働時間と割増率をマスタとして持っており、時間帯別の集計も自動で行います。

AIには「この手当は基礎に入るか」という前提の整理と検算の観点出しを任せ、確定値はソフトで出す。この分担にすると、あとから誰が見ても追いかけられます。人事・労務まわりのツールはAI採用・人事ツールの比較も参考にしてください。

数字の取り違えは残業代だけではありません。人日と人月の取り違えや、営業日と暦日の取り違えもあわせて確認しておくと安心です。

なお、個別の手当が除外できるかどうかや、未払いが生じた場合の対応は、社会保険労務士や弁護士に確認してください。この記事は計算の仕組みを説明するもので、個別の労務判断を示すものではありません。

まとめ

AIに残業代を聞くと、基本給だけを分子に置き、分母に173.33時間を使って答えることがあります。本記事の例では、基本給25万円に役職手当3万円と一律の住宅手当2万円が付く社員で、AIの割増単価は1,803円、正しい計算では2,296円でした。月30時間の残業で1万4,790円、年間で17万7,480円、10人・3年分なら532万4,400円のズレになります。

割増賃金の基礎から除外できるのは7種類の賃金だけで、しかも名前ではなく実態で判断します。防ぐ手順は5つです。手当を全部書き出して除外に印を付ける、月平均所定労働時間を自社のカレンダーから出す、法定内と法定外を分ける、割増率を時間帯別に指定する、端数処理を指定して月合計で検算させる、の5つです。「残業代」と書かれた数字は、分子に何が入り、分母が何時間かを確かめてから読むようにしましょう。

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執筆・監修

AI Scout編集部

AIツール・SaaS専門のレビューチーム。最新のAI技術動向を追い、実際にツールを使用した上で、正確で信頼性の高い情報を提供しています。

公開日: 2026年9月18日
最終更新: 2026年9月18日