AIが月60時間超の残業を25%で計算する2026|50%割増の数え方・法定休日の除外・深夜75%・代替休暇を取り違えないための5つの手順
AIに残業代を任せると、月60時間を超えた分も25%で計算することがあります。50%割増の数え方、法定休日の除外、深夜との重なり、代替休暇の仕組みと5つの手順を解説します。
「今月の残業代を計算してください」。AIにこう頼むと、時間外労働のすべてに25%の割増率を掛けて返してくることがあります。しかし、1か月の時間外労働が60時間を超えた部分は、50%以上の割増率で払う必要があります。
この50%の割増は、2023年4月1日から中小企業にも適用されています。AIが古い情報や大企業だけの制度として扱うと、残業の多い月に支給額が不足します。
この記事では、AIが月60時間超の割増を取り違える原因と、ずれが出る場面、AIに正しく計算させる5つの手順をまとめます。
月60時間超の割増賃金の基本
労働基準法第37条では、1か月の時間外労働が60時間を超えた場合、超えた部分の割増率を50%以上と定めています。60時間までの部分は、これまでどおり25%以上です。
| 区分 | 割増率 | 数え方の注意点 |
|---|---|---|
| 時間外労働(月60時間まで) | 25%以上 | 1日8時間・週40時間を超えた時間 |
| 時間外労働(月60時間を超えた部分) | 50%以上 | その月の時間外労働の累計で判定 |
| 法定休日の労働 | 35%以上 | 60時間の累計には含めない |
| 時間外かつ深夜(60時間まで) | 50%以上 | 25%+深夜25% |
| 時間外かつ深夜(60時間超の部分) | 75%以上 | 50%+深夜25% |
この制度は2010年4月に始まりましたが、中小企業は長く適用を猶予されていました。猶予は2023年3月末で終わり、2023年4月1日からは会社の規模に関係なく50%以上の割増が必要です。
AIが取り違える4つの原因
原因1:中小企業の猶予が続いていると思っている
AIの学習データには、「中小企業は当分の間25%でよい」と書かれた古い解説が多く残っています。そのため、会社の規模を伝えると、AIが猶予を前提に25%で計算することがあります。
原因2:法定休日の労働を60時間に足してしまう
60時間の累計に入れるのは、法定時間外労働だけです。法定休日の労働は35%の割増で別に扱い、60時間の累計には含めません。一方、法定休日ではない所定休日の労働は、週40時間を超えていれば時間外労働として累計に入ります。AIはこの2種類の休日を区別せず、どちらも足したり、どちらも除いたりします。
原因3:1か月の起算日がずれる
「1か月」は、就業規則などで定めた起算日から数えます。賃金の計算期間の初日を起算日にする会社が多いです。AIは暦の1日から月末までで数えがちなので、締日が20日の会社では60時間を超えるタイミングがずれます。
原因4:深夜との重なりを50%で止める
60時間を超えた部分が深夜(22時から5時)にかかると、50%に深夜の25%を足して75%になります。AIは「60時間超は50%」だけを覚えていて、深夜の加算を忘れることがあります。
ずれが出る4つの場面
以下の金額は、仕組みを説明するための仮の数字です。割増の基礎となる1時間あたりの賃金を2,000円とします。実際の計算は、自社の就業規則と勤怠の実績で確認してください。
場面1:月80時間の時間外労働をすべて25%で計算する
ある月の時間外労働が80時間だったとします。正しくは、60時間までが2,000円×1.25×60時間で150,000円、超えた20時間が2,000円×1.5×20時間で60,000円、合計210,000円です。AIがすべて25%で計算すると2,000円×1.25×80時間で200,000円となり、10,000円不足します。
場面2:法定休日の労働を60時間に足す
時間外労働が55時間、法定休日の労働が8時間だったとします。時間外労働は60時間以内なので、55時間はすべて25%です。法定休日の8時間は35%で、2,000円×1.35×8時間で21,600円です。AIが8時間を累計に足して63時間と数えると、3時間分に50%を掛けて1,500円多く払います。さらに休日の8時間を25%で計算すると、21,600円が20,000円になり1,600円不足します。
場面3:起算日を暦の1日にする
締日が20日の会社で、21日から翌月20日までの時間外労働が65時間だったとします。この期間で数えれば、5時間分が50%です。AIが1日から月末で数え直すと、集計の範囲が変わるため、超えた時間数が5時間ではなくなります。締日をまたいで残業が偏っている月ほど、ずれは大きくなります。
場面4:60時間超の深夜労働を50%で計算する
60時間を超えた部分のうち、5時間が深夜にかかっていたとします。正しくは2,000円×1.75×5時間で17,500円です。AIが50%で止めると2,000円×1.5×5時間で15,000円となり、2,500円不足します。
代替休暇という選択肢
労使協定を結べば、60時間を超えた部分の割増率の引き上げ分(50%と25%の差の25%)の支払いに代えて、有給の休暇を与えることができます。これを代替休暇と呼びます。
代替休暇の時間数は、60時間を超えた時間数に換算率を掛けて求めます。換算率は、60時間超の割増率から通常の割増率を引いた値で、法定どおりなら0.25です。たとえば20時間超過なら、20時間×0.25で5時間分の休暇になります。休暇は1日または半日の単位で、時間外労働が60時間を超えた月の末日の翌日から2か月以内に与えます。
注意したいのは、代替休暇で置き換えられるのは引き上げ分だけという点です。25%の割増賃金は、代替休暇を取っても払います。また、社員が代替休暇を取らなかった場合は、引き上げ分の割増賃金を払う必要があります。AIは「代替休暇があれば60時間超の割増は不要」と単純化しがちなので、協定の内容を渡して計算させます。
AIに正しく計算させる5つの手順
手順1:会社規模に関係なく50%だと明記する
指示の最初に「2023年4月から中小企業も月60時間超は50%以上。当社も対象」と書きます。会社の規模を伝える場合でも、猶予は終わっていると明示し、AIに古い情報を使わせないようにします。
手順2:法定休日と所定休日を分けて渡す
勤怠データに「法定休日」「所定休日」「所定労働日」の区分を付けて渡します。そのうえで「法定休日の労働は35%で別計算とし、60時間の累計に含めない。所定休日の労働で週40時間を超えた分は時間外として累計に含める」と指示します。
手順3:起算日と計算期間を指定する
「計算期間は毎月21日から翌月20日まで。60時間の判定はこの期間の累計で行う」のように、就業規則で定めた起算日を数字で書きます。暦の1日から数えさせないことがポイントです。
手順4:割増率の表と深夜の重なりを渡す
この記事の表のように、区分ごとの割増率を指示に貼ります。特に「60時間超かつ深夜は75%」を1行で明示します。時刻の記録があれば、22時から5時の時間を先に切り出させると、重なりの計算が安定します。
手順5:60時間の境界を月ごとに出させて検算する
社員ごとに「時間外労働の累計」「60時間までの時間数」「60時間超の時間数」「法定休日の時間数」「深夜との重なり」を1行ずつ出させます。累計が60時間を超えている社員だけ、計算式を手で検算します。最終判断は、厚生労働省の案内と照らして自分で確認します。
検算のチェックリスト
- 月60時間を超えた部分に、50%以上の割増率を使っているか
- 法定休日の労働を、60時間の累計から除いているか
- 所定休日の労働で週40時間を超えた分を、累計に入れているか
- 就業規則で定めた起算日から1か月を数えているか
- 60時間超かつ深夜の時間に、75%を使っているか
- 代替休暇を使う場合、労使協定があり、25%分の割増賃金は払っているか
- 36協定の上限(月45時間など)の判定と、割増率の判定を混同していないか
給与計算ソフトとの役割分担
給与計算ソフトや勤怠管理ソフトの多くは、月60時間超の割増率を自動で切り替えます。ただし、起算日の設定や、法定休日と所定休日の区分の登録が間違っていると、切り替えのタイミングがずれます。AIは、設定と勤怠データの区分が就業規則と合っているかを点検する用途に使うと効果的です。
ChatGPTやClaudeなどの対話型AIを使う場合も、割増率の表と起算日を明示することが前提です。深夜との重なりは深夜割増の重複の記事、36協定の上限の数え方は36協定の記事、割増の基礎となる賃金は基礎単価の記事もあわせて確認してください。
まとめ
1か月の時間外労働が60時間を超えた部分は、50%以上の割増率で払います。2023年4月からは中小企業も対象です。AIは古い猶予の情報を使ったり、法定休日の労働を累計に足したり、起算日を暦の1日にしたり、深夜の加算を忘れたりしがちです。
防ぐ手順は、会社規模に関係なく50%だと明記する、法定休日と所定休日を分けて渡す、起算日と計算期間を指定する、割増率の表と深夜の重なりを渡す、60時間の境界を月ごとに出させて検算する、の5つです。
なお、変形労働時間制やフレックスタイム制では、時間外労働の数え方自体が通常と違います。個別の判断は、社会保険労務士や管轄の労働基準監督署に確認することをおすすめします。
AI Scout編集部
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