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AIが「療養3年で補償は自動終了・労災受給者に打切補償は使えない・払えば解雇は有効」と答える2026|労基法81条は平均賃金1,200日分の支払いが要件・労災法19条のみなし・解雇の有効性は別判断

労働基準法第81条の打切補償は、療養開始後3年を経過しても治らない場合に平均賃金の1,200日分を行う制度です。3年の経過だけでは終わりません。労災保険法第19条のみなしと最高裁判決も確認します。

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業務上のけがで療養が3年を超えた社員について、AIに聞くと「3年たったので会社の補償は自動的に終わります」「労災保険を受けている人には打切補償は使えません」と答えることがあります。「打切補償を払えば解雇は有効です」という答えもあります。どれも条文や判例の内容とずれています。

この記事では、労働基準法第81条を中心に、第19条、第20条、第82条、第83条、第84条、施行規則第48条、労災保険法第18条・第19条、労働契約法第16条を条文で確認します。解雇制限の全体は第19条の記事、療養補償は第75条の記事、障害補償と遺族補償は第77条〜第80条の記事で扱っています。

結論:確認できる6つのこと

  • 打切補償の要件は、第75条の補償を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても治らないことです。額は平均賃金の1,200日分です(第81条)。
  • 3年の経過だけで補償は終わりません。打切補償を行って初めて、その後は労働基準法の補償を行わなくてもよくなります。
  • 療養開始後3年を経過した日に傷病補償年金を受けている場合などは、打切補償を支払ったものとみなされます(労災保険法第19条)。みなしの対象は第19条第1項の適用です。
  • 労災保険の療養補償給付を受けている労働者にも、打切補償を支払って解雇制限を外すことができます(最高裁平成27年6月8日判決)。
  • 第81条で行わなくてよくなるのは「この法律の規定による補償」です。分割払いを定めた第82条の対象にも、打切補償は入っていません。
  • 打切補償で外れるのは第19条の解雇制限です。解雇の有効性は、労働契約法第16条で別に判断されます。

条文を確認する

労働基準法第81条(打切補償)

第七十五条の規定によつて補償を受ける労働者が、療養開始後三年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の千二百日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。

「打切補償を行い、その後は」という順番で書かれています。平均賃金が1万円の場合で計算すると、1万円×1,200日で1,200万円です。この例の金額は説明用です。

労働基準法第19条第1項(解雇制限)

使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。

労災保険法第19条

業務上負傷し、又は疾病にかかつた労働者が、当該負傷又は疾病に係る療養の開始後三年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合又は同日後において傷病補償年金を受けることとなつた場合には、労働基準法第十九条第一項の規定の適用については、当該使用者は、それぞれ、当該三年を経過した日又は傷病補償年金を受けることとなつた日において、同法第八十一条の規定により打切補償を支払つたものとみなす。

みなしの対象は傷病補償年金です。療養補償給付や休業補償給付を受けているだけでは、この条文のみなしには当たりません。

最高裁平成27年6月8日第二小法廷判決

労災保険の療養補償給付を受けて休業していた労働者に、使用者が平均賃金1,200日分を支払って解雇した事件です。一審と二審は、使用者自身が災害補償をしていないので打切補償の条件を満たさないと判断しました。最高裁は、労災保険給付は使用者の補償と実質的に同じであるとして、解雇の効力を審理させるために事件を差し戻しました。

厚生労働省の通達(基発0609第4号・平成27年6月9日)も、労災保険給付が行われていれば、打切補償が支払われても傷病が治るまで必要な給付が続くため、労働者の保護に欠けるとはいえないと整理しています。

AIが取り違えやすい6つの答え

1. 「療養が3年を超えたら、会社の補償は自動的に終わります」

第81条は、平均賃金の1,200日分の打切補償を「行い」、その後は補償を行わなくてもよいと書いています。3年の経過は要件の一つで、経過しただけでは第81条の効果は生じません。なお、労災保険で相当する給付が行われるべき場合は、3年とは関係なく、第84条第1項により使用者は補償の責を免れます。

2. 「打切補償を払うと、労災保険の給付も終わります」

第81条で行わなくてよくなるのは「この法律の規定による補償」、つまり労働基準法の補償です。上記の通達も、労災保険給付が行われている場合は傷病が治るまで必要な給付が続くと述べています。

3. 「労災保険を受けている人には、打切補償は使えません」

一審と二審はこの考え方でしたが、最高裁は採りませんでした。第84条第1項は、労災保険法で相当する給付が行われるべき場合に使用者は補償の責を免れると定めています。そのうえで最高裁は、労災保険給付を使用者の補償と実質的に同じと判断しました。

4. 「傷病補償年金を受けている人にも、1,200日分を払わないと解雇制限は外れません」

療養開始後3年を経過した日に傷病補償年金を受けている場合、または同日後に受けることとなった場合は、労災保険法第19条で打切補償を支払ったものとみなされます。逆に、傷病補償年金を受けていなければ、このみなしは使えません。第18条第2項のとおり、傷病補償年金を受ける人に休業補償給付は行われないので、どちらの給付を受けているかを確認できます。

5. 「打切補償を払えば、解雇は必ず有効です」

第19条ただし書は、解雇してはならないという制限を外すだけです。労働契約法第16条は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇を無効としています。最高裁の判決も、解雇の効力を審理させるために事件を差し戻しました。また、第20条の解雇予告は別の条文で、例外は天災事変等と労働者の責めに帰すべき事由の2つです。打切補償はこの例外に挙がっていません。

6. 「1,200日分は分割で払えます。平均賃金は解雇直前の3か月で計算します」

第82条の分割補償が対象にしているのは、第77条の障害補償と第79条の遺族補償です。第81条は挙がっていません。平均賃金を算定すべき事由の発生日は、施行規則第48条で、事故発生の日または診断によって疾病の発生が確定した日と定められています。平均賃金の計算方法は平均賃金の記事で扱っています。

状況別の整理

状況条文上の扱い
療養開始後3年を経過し、治っていない。打切補償は未払いで、傷病補償年金も受けていない第19条の解雇制限は残る。使用者が自ら補償している場合は、その補償も続く(労災保険の給付が行われるべき場合は、第84条第1項で使用者は補償の責を免れる)
使用者が療養補償を行っている。1,200日分を支払ったその後の労働基準法の補償は不要。第19条の制限は外れる
労災保険の療養補償給付を受けている。1,200日分を支払った第19条の制限は外れる(最高裁平成27年6月8日判決)
3年経過日に傷病補償年金を受けている打切補償を支払ったものとみなされ、第19条の制限は外れる(労災保険法第19条)
第19条の制限が外れたあとに解雇する解雇予告(第20条)と解雇の有効性(労働契約法第16条)を別に確認する

第83条第1項は、補償を受ける権利は退職によって変更されないと定めています。「退職したから補償も終わり」と扱わないよう注意してください。

実務で確かめる順番

  1. 療養の開始日と、3年を経過する日を確認する
  2. 現在治っていないこと、受けている給付の種類(療養補償給付・休業補償給付・傷病補償年金)を確認する
  3. 傷病補償年金を受けていれば、労災保険法第19条のみなしの日を確認する
  4. 受けていなければ、事故発生の日または診断確定の日を基準に平均賃金を計算し、1,200日分の額を出す
  5. 解雇を検討する場合は、合理的な理由と相当性、解雇予告の扱いを別に検討する
  6. 個別の案件は、労働基準監督署か弁護士・社会保険労務士に確認する

AIに確認させるときの手順

  1. 療養開始日、現在の給付の種類、治っているかどうかをそろえて渡す
  2. 第81条、第19条第1項、労災保険法第19条の原文を貼り、「この条文に分けて当てはめて」と指定する
  3. 「補償が終わるか」と「解雇制限が外れるか」と「解雇が有効か」を別々に答えさせる
  4. 「この法律の規定による補償」が何を指すかを聞き、労災保険給付と混同していないか確かめる
  5. 判例に触れたら、裁判所名と判決日を出させ、裁判所の判決文で確認する

条文の当てはめの下書きには、ChatGPTやClaudeのような対話型AIも使えます。その場合も、条文番号と文言は原文で確認してください。

まとめ

  • 打切補償は、療養開始後3年を経過しても治らない場合に平均賃金の1,200日分を行う制度です。3年の経過だけでは補償は終わりません。
  • 終わるのは労働基準法の補償です。労災保険の給付とは分けて考えます。
  • 労災保険の療養補償給付を受けている労働者にも、打切補償の支払いで解雇制限を外せます。
  • 傷病補償年金を受けている場合は、打切補償を支払ったものとみなされます。
  • 解雇の有効性と解雇予告は、打切補償とは別に確認します。
  • 第82条の分割補償に第81条は挙がっていません。平均賃金の起算は事故発生の日または診断確定の日です。

出典:労働基準法 第19条・第20条・第75条・第77条・第79条・第81条・第82条・第83条・第84条(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049 )、労働基準法施行規則 第48条(https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023 )、労働者災害補償保険法 第18条・第19条(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000050 )、労働契約法 第16条(https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128 )。いずれもe-Gov法令API v2で2026-11-04に取得。判決と通達は労働新聞社の掲載内容で確認(https://www.rodo.co.jp/precedent/11920/ 、https://www.rodo.co.jp/notification/56618/ )。裁判所サイトの判決文原文は、確認時にメンテナンス中で照合できていません。

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執筆・監修

AI Scout編集部

AIツール・SaaS専門のレビューチーム。最新のAI技術動向を追い、実際にツールを使用した上で、正確で信頼性の高い情報を提供しています。

公開日: 2026年11月4日
最終更新: 2026年11月4日