AIが「強制労働は暴力の場合だけ・罰則は30万円以下・中間搾取は会社だけの禁止」と答える2026|労基法5条は精神又は身体の自由を不当に拘束する手段も対象・罰則は1年以上10年以下の拘禁刑・6条は「何人も」で法律に基づく場合は例外
労基法5条は暴行に限らず精神又は身体の自由を不当に拘束する手段による強制労働を禁止し、罰則は1年以上10年以下の拘禁刑等です。6条の中間搾取は「何人も」が対象で法律に基づく場合は例外です。
「労働基準法の強制労働の禁止と中間搾取の禁止について教えて」とAIに聞くと、「強制労働は暴力をふるった場合だけが対象です」「罰則は30万円以下の罰金です」「中間搾取の禁止は会社(使用者)だけが守る義務です」「仲介料を取る人材紹介はすべて違法です」といった答えが返ってくることがあります。
どれも労働基準法第5条・第6条と罰則の条文とずれています。第5条は暴行に限らず「精神又は身体の自由を不当に拘束する手段」を広く挙げています。罰則(第117条)は1年以上10年以下の拘禁刑または20万円以上300万円以下の罰金で、第117条〜第120条の罰則の中で最も重い規定です。第6条の主語は「使用者」ではなく「何人も」で、「法律に基いて許される場合」は除かれています。この記事では、e-Gov法令検索の現行条文をもとに、AIの誤答を6つに分けて正します。
結論:第5条と第6条の要点
| 項目 | 第5条(強制労働の禁止) | 第6条(中間搾取の排除) |
|---|---|---|
| 義務を負う者 | 使用者 | 何人も(使用者に限らない) |
| 禁止される行為 | 暴行・脅迫・監禁その他、精神または身体の自由を不当に拘束する手段で、労働者の意思に反して労働を強制すること | 業として他人の就業に介入して利益を得ること |
| 例外 | 条文上の例外はなし | 法律に基づいて許される場合 |
| 罰則 | 1年以上10年以下の拘禁刑、または20万円以上300万円以下の罰金(第117条) | 1年以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金(第118条第1項) |
どちらの違反にも、第121条の両罰規定により事業主へ罰金刑が科される場合があります。
条文を確認する
労働基準法第5条(強制労働の禁止)
使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
暴行・脅迫・監禁は例示です。「その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段」とあるため、手段は物理的な暴力に限られません。一方で、要件は「労働者の意思に反して」労働を強制することです。
労働基準法第6条(中間搾取の排除)
何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。
主語は「何人も」です。雇い主だけでなく、ブローカーや仲介者なども対象に入ります。「業として」「介入して」「利益を得て」がそろった場合が禁止の対象で、法律で許された場合は除かれます。
罰則(第117条・第118条・第121条)
第百十七条 第五条の規定に違反した者は、一年以上十年以下の拘禁刑又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処する。
第百十八条 第六条、第五十六条、第六十三条又は第六十四条の二の規定に違反した者は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
第117条〜第120条のうち、拘禁刑と罰金の両方に下限があるのは第117条だけです。第118条は上限だけで、第119条(6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)、第120条(30万円以下の罰金)と続きます。第121条は、従業者が事業主のために違反したとき、事業主にも各本条の罰金刑を科す両罰規定です。
AIがよく間違える6つの答え
誤答1:「強制労働は暴力をふるった場合だけが対象」
第5条が挙げる手段は「暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段」です。暴行は例の一つで、脅迫のような精神的な手段も条文に書かれています。具体的にどの行為が「不当に拘束する手段」に当たるかは個別の判断で、この記事では通達や裁判例を確認していません。
なお、足止めにつながりやすい行為は別の条文でも個別に禁止されています。違約金・損害賠償額の予定は第16条(別記事)、前借金と賃金の相殺は第17条(別記事)、強制貯金は第18条(別記事)です。
誤答2:「強制労働の罰則は30万円以下の罰金」
第5条違反の罰則は第117条で、1年以上10年以下の拘禁刑、または20万円以上300万円以下の罰金です。30万円以下の罰金は第120条で、就業規則の届出(第89条)などに対する罰則です。罰則の条文を取り違えた答えです。
誤答3:「罰則は懲役刑」
2026年7月17日施行版の条文では、第117条・第118条とも「拘禁刑」と書かれています。古い資料をもとにした答えでは「懲役」と出ることがあります。AIの答えに「懲役」とあったら、参照した条文の版を確認してください。
誤答4:「中間搾取の禁止は使用者(会社)だけの義務」
第6条の主語は「何人も」です。第5条の主語が「使用者」なのと違い、雇用関係にない第三者も対象です。労働者を紹介して手数料を取る個人やブローカーも、要件に当たれば第118条の罰則の対象になります。
誤答5:「仲介料を取る人材紹介はすべて違法」
第6条には「法律に基いて許される場合の外」という例外があります。法律に基づいて許された仲介は、第6条の禁止に当たりません。例としては職業安定法の許可を受けた有料職業紹介事業が挙げられますが、この記事では職業安定法の条文は取得していません。労働者派遣が第6条の「介入」に当たるかどうかの解釈資料も、確認していません。
誤答6:「違反しても罰せられるのは担当者だけで、会社は罰せられない」
第121条は、代理人・使用人などの従業者が事業主のために違反した場合、事業主にも「各本条の罰金刑」を科すと定めています。第5条違反なら第117条の罰金、第6条違反なら第118条の罰金です。事業主が違反の防止に必要な措置をしていた場合は除かれます(第121条第1項ただし書)。
AIに点検させるときのプロンプト例
AIに労務の相談をするときは、条文番号と罰則の条を先に渡すと、罰則の取り違えが起きにくくなります。
次の状況が、労働基準法第5条(強制労働の禁止)または第6条(中間搾取の排除)に当たるかを検討してください。
前提:
・第5条の主語は「使用者」、手段は「暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段」
・第6条の主語は「何人も」、例外は「法律に基いて許される場合」
・罰則は第117条(第5条)、第118条第1項(第6条)、両罰規定は第121条
ルール:
・罰則は条番号と刑の上限・下限を条文どおりに書く
・「拘禁刑」と「懲役」を混同しない
・通達や判例が必要な判断は「未確認」と書く
状況:(ここに書く)
AIの答えは必ず条文と突き合わせてください。個別の事案は、労働基準監督署や弁護士・社会保険労務士に確認するのが確実です。
点検チェックリスト
- 第5条の手段を暴行だけに限定していない
- 第5条違反の罰則を第117条(1年以上10年以下の拘禁刑、または20万円以上300万円以下の罰金)で書いている
- 刑の名前が「拘禁刑」になっている
- 第6条の対象を使用者に限定していない(「何人も」)
- 第6条の例外「法律に基いて許される場合」を落としていない
- 両罰規定(第121条)で事業主も罰金刑の対象になることを書いている
まとめ
- 第5条は、暴行・脅迫・監禁その他、精神または身体の自由を不当に拘束する手段による労働の強制を禁じています。
- 第5条違反は1年以上10年以下の拘禁刑、または20万円以上300万円以下の罰金です(第117条)。
- 第6条の主語は「何人も」で、法律に基づいて許される場合を除き、業として他人の就業に介入して利益を得ることを禁じています。
- 第6条違反は1年以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金です(第118条第1項)。
- どちらも第121条の両罰規定により、事業主に罰金刑が科される場合があります。
出典:労働基準法 第5条・第6条・第117条〜第121条(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049、2026年7月17日施行版、2026年10月25日取得)。
AI Scout編集部
AIツール・SaaS専門のレビューチーム。最新のAI技術動向を追い、実際にツールを使用した上で、正確で信頼性の高い情報を提供しています。