AIが「業務中の死亡でも会社は葬儀代の実費だけ・本人の不注意なら補償なし」と答える2026|労基法79条は遺族に平均賃金1,000日分・80条の葬祭料は60日分・78条の例外は認定が必要
労基法79条は業務上の死亡で遺族に平均賃金の1,000日分、80条は葬祭料60日分を使用者に求めます。78条の重大過失の例外は行政官庁の認定が必要で、対象は休業補償と障害補償だけです。
「仕事中の事故で亡くなっても、会社が払うのは葬儀代の実費だけです」「本人の不注意が原因なら、会社は補償をしなくてよい」とAIが答えることがあります。どちらも労働基準法の条文とは合いません。
この記事では、業務上のけがや病気で障害が残ったとき、または亡くなったときの補償を定める労働基準法第77条から第83条を条文で確認します。AIがよく間違える6つの答えを、条文の文言で正します。
結論:条文で確認できる6つのこと
- 業務上のけがや病気が治った後に障害が残ったとき、使用者は障害の程度に応じて、平均賃金に別表第二の日数を掛けた障害補償を行います(第77条)。日数は第1級の1,340日分から第14級の50日分までです。
- 労働者が業務上死亡したとき、使用者は遺族に平均賃金の1,000日分の遺族補償を行います(第79条)。
- 同じく、葬祭を行う者に平均賃金の60日分の葬祭料を支払います(第80条)。実費ではありません。
- 重大な過失による例外は、使用者が行政官庁の認定を受けた場合に、休業補償と障害補償だけが対象です(第78条)。遺族補償と葬祭料は対象外です。
- 分割で払えるのは障害補償と遺族補償だけで、支払能力の証明と本人側の同意が要ります(第82条)。
- 補償を受ける権利は退職しても変わらず、譲渡も差押えもできません(第83条)。
条文を確認する
労働基準法第77条(障害補償)
労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり、治つた場合において、その身体に障害が存するときは、使用者は、その障害の程度に応じて、平均賃金に別表第二に定める日数を乗じて得た金額の障害補償を行わなければならない。
別表第二の日数は次のとおりです。第1級1,340日分、第2級1,190日分、第3級1,050日分、第4級920日分、第5級790日分、第6級670日分、第7級560日分です。第8級は450日分、第9級は350日分、第10級は270日分です。第11級は200日分、第12級は140日分、第13級は90日分、第14級は50日分です。
労働基準法第78条(休業補償及び障害補償の例外)
労働者が重大な過失によつて業務上負傷し、又は疾病にかかり、且つ使用者がその過失について行政官庁の認定を受けた場合においては、休業補償又は障害補償を行わなくてもよい。
条文が挙げるのは「休業補償又は障害補償」の2つです。療養補償、遺族補償、葬祭料は書かれていません。
労働基準法第79条(遺族補償)
労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は、遺族に対して、平均賃金の千日分の遺族補償を行わなければならない。
労働基準法第80条(葬祭料)
労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は、葬祭を行う者に対して、平均賃金の六十日分の葬祭料を支払わなければならない。
支払う相手は「葬祭を行う者」です。遺族補償の相手である「遺族」とは書き分けられています。
労働基準法第82条(分割補償)
使用者は、支払能力のあることを証明し、補償を受けるべき者の同意を得た場合においては、第七十七条又は第七十九条の規定による補償に替え、平均賃金に別表第三に定める日数を乗じて得た金額を、六年にわたり毎年補償することができる。
別表第三では、遺族補償は毎年180日分、障害補償は第1級の毎年240日分から第14級の毎年9日分までです。
労働基準法第83条(補償を受ける権利)
補償を受ける権利は、労働者の退職によつて変更されることはない。
補償を受ける権利は、これを譲渡し、又は差し押えてはならない。
AIがよく間違える6つの答え
誤答1:「業務中に亡くなっても、会社が払うのは葬儀代の実費だけ」
第79条は遺族に平均賃金の1,000日分の遺族補償を、第80条は葬祭を行う者に平均賃金の60日分の葬祭料を、それぞれ使用者に求めています。
葬祭料は「平均賃金の六十日分」と額で決まっています。かかった費用の実費とは書かれていません。
誤答2:「本人の不注意が原因なら、会社はどの補償もしなくてよい」
第78条の例外には2つの条件があります。過失が「重大な過失」であること、そして使用者が行政官庁の認定を受けることです。会社が自分で判断するだけでは足りません。
認定を受けても、免れるのは休業補償と障害補償だけです。療養補償、遺族補償、葬祭料はこの条文の対象に入っていません。
誤答3:「障害補償は障害の重さに関係なく一律」
第77条は「その障害の程度に応じて」別表第二の日数を掛けると定めています。第1級の1,340日分と第14級の50日分では、約27倍の差があります。
平均賃金の出し方は平均賃金の記事で整理しています。
誤答4:「会社の都合で、葬祭料も含めて何年かに分けて払える」
第82条の分割補償が使えるのは、第77条の障害補償と第79条の遺族補償だけです。葬祭料は入っていません。
分割にするには、使用者が支払能力のあることを証明し、補償を受ける側の同意を得る必要があります。期間は6年で、毎年の額は別表第三の日数で決まります。
誤答5:「退職したら、補償を受ける権利もなくなる」
第83条第1項は、補償を受ける権利は労働者の退職によって変更されないと定めています。退職を理由に補償を打ち切ることはできません。
同条第2項により、補償を受ける権利は譲渡も差押えもできません。
誤答6:「労災保険に入っていても、会社は別に遺族補償を払う」
第84条第1項は、労災保険法などから災害補償に相当する給付が行われるべき場合、使用者は補償の責任を免れると定めています。労災保険から相当する給付が出る範囲では、二重には払いません。
一方、第84条第2項で民法の損害賠償を免れるのは、同じ事由について補償の価額の限度までです。休業補償の日数との関係は休業補償の記事で扱っています。
違反したときの罰則
第119条第1号は、第75条から第77条まで、第79条、第80条の違反を、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象にしています。障害補償、遺族補償、葬祭料のいずれも含まれます。
誰が罰せられるかは両罰規定の記事で整理しています。
早見表
| 場面 | 使用者の補償 | 相手 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 治った後に障害が残った | 平均賃金×50〜1,340日分(等級による) | 労働者 | 第77条・別表第二 |
| 業務上死亡した | 平均賃金の1,000日分 | 遺族 | 第79条 |
| 業務上死亡した(葬祭) | 平均賃金の60日分 | 葬祭を行う者 | 第80条 |
| 重大な過失+行政官庁の認定 | 休業補償・障害補償だけ免除 | ― | 第78条 |
| 分割払い | 障害補償・遺族補償だけ、6年・同意が必要 | ― | 第82条・別表第三 |
| 退職後 | 権利は変わらない・譲渡と差押えは不可 | ― | 第83条 |
AIに質問するときのコツ
- 「労働基準法第77条から第83条の条文を引用して答えて」と根拠を指定する
- 障害が残ったのか、亡くなったのか、どの補償を聞きたいのかを分けて伝える
- 「本人の過失なら払わなくてよい」という答えには、第78条の行政官庁の認定と対象の2つに触れているかを確かめる
まとめ
- 障害補償は障害の程度に応じて平均賃金の50日分から1,340日分です(第77条・別表第二)。
- 遺族補償は遺族に平均賃金の1,000日分です(第79条)。
- 葬祭料は葬祭を行う者に平均賃金の60日分です(第80条)。
- 重大な過失の例外は行政官庁の認定が必要で、対象は休業補償と障害補償だけです(第78条)。
- 分割補償は障害補償と遺族補償だけで、支払能力の証明と同意が要ります(第82条)。
- 補償を受ける権利は退職で変わらず、譲渡も差押えもできません(第83条)。
- 第77条・第79条・第80条の違反は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です(第119条第1号)。
AI Scout編集部
AIツール・SaaS専門のレビューチーム。最新のAI技術動向を追い、実際にツールを使用した上で、正確で信頼性の高い情報を提供しています。