AIが年平均成長率を単純平均で出してしまう2026|年25%が実は18.9%になるのを防ぐ5つの手順
AIに年平均成長率を計算させると、複利のCAGRでなく単純平均で出し、売上予測を誤りがちです。年25%が実は18.9%になる例と、防ぐ5つの手順を解説します。
「過去4年の売上から年平均成長率を出して、5年後の売上を予測して」とAIに頼むと、すぐに答えが返ってきます。「4年で売上が2倍になったので、年平均成長率は25%です。このペースが続くと、5年後は約6.1億円です」という回答は、一見もっともらしく見えます。
しかし、この25%は増加率を年数で割っただけの単純平均です。複利で計算し直すと、年平均成長率は約18.9%で、5年後の予測は約4.8億円になります。この記事では、AIが成長率を単純平均で計算してしまう仕組みと、正しい数字を出させる5つの手順を紹介します。
年25%成長が、実は18.9%だった
年平均成長率(CAGR)は、毎年同じ割合で成長したと仮定したときの1年あたりの成長率です。説明のための例として、次の売上推移を考えます。数字はすべて架空の設定です。
- 2021年度の売上: 1.0億円
- 2025年度の売上: 2.0億円
- 期間: 2021年度から2025年度までの4年間
単純平均では25%、複利では18.9%
単純平均は「増加率100%÷4年=25%」と計算します。一方でCAGRは「(2.0÷1.0)の4乗根−1」で求め、約18.9%になります。成長は前年の売上を土台に積み重なるため、複利で考えるのが正しい計算です。
検算すると違いがはっきりします。1.0億円が毎年25%成長すると、4年後は約2.44億円です。実績の2.0億円より約4,400万円多く、25%は実績を説明できていません。18.9%で計算すると、4年後はちょうど2.0億円になります。
5年後の予測が1.3億円以上ずれる
2025年度の2.0億円から、同じ成長率が5年続くと仮定して2030年度を予測します。
- 単純平均25%で複利計算: 約6.10億円
- CAGR 18.9%で複利計算: 約4.76億円
差は約1.35億円です。この予測をもとに採用や設備投資の計画を立てると、売上が計画に届かず、固定費だけが先に増える事態になりかねません。
AIが成長率を単純平均で計算してしまう3つの理由
理由1: 「年平均」という言葉が単純平均を連想させる
「平均」と聞くと、多くの人は足して割る計算を思い浮かべます。AIも「年平均成長率を出して」と頼まれると、増加率を年数で割る計算をすることがあります。CAGRという用語や式を指定しないと、どちらの計算かが曖昧なまま答えが返ってきます。
理由2: 期間の数え方を取り違える
2021年度から2025年度までは、データが5年分あっても成長した期間は4年です。AIが「5年間」と数えると、CAGRは約14.9%になります。この14.9%で2030年度を予測すると約4.0億円となり、今度は予測が小さくなりすぎます。
理由3: 年ごとの成長率を足して割ってしまう
年ごとの成長率が並んだ表を渡すと、AIはその数字を単純に平均することがあります。増減の大きい事業では、この計算が実態と逆の結論を生みます。次の章で具体例を示します。
増減が大きいと、平均プラスでも実は減少している
売上1.0億円の事業が、4年間で「+60%、−40%、+60%、−40%」と推移した場合を考えます。これも架空の設定です。
- 1年目: 1.0億円×1.6=1.60億円
- 2年目: 1.60億円×0.6=0.96億円
- 3年目: 0.96億円×1.6=1.536億円
- 4年目: 1.536億円×0.6=約0.92億円
年ごとの成長率を単純平均すると、(60−40+60−40)÷4=+10%です。しかし実際の売上は1.0億円から約0.92億円に減っており、CAGRは約−2.0%です。「平均10%成長」という報告は、事業が縮小している事実を隠してしまいます。
取り違えを防ぐ5つの手順
手順1: CAGRの式をプロンプトに書く
「年平均成長率はCAGR=(最終年の値÷初年の値)の(1÷年数)乗−1で計算してください」と式で指定します。単純平均で計算する余地がなくなります。回答の冒頭に、使った式と代入した数字を書き出させるのも効果的です。
手順2: 期間の年数を明示する
「2021年度から2025年度までの4年間」のように、始点と終点と年数をセットで書きます。データの件数と期間の年数は1つずれることを、プロンプトに書いておくと安全です。年数を取り違えると、成長率が数ポイント単位でずれます。
手順3: 算出した成長率で実績を再現させる
最も確実な検算は、出てきた成長率で初年の値を複利計算し、最終年の実績と一致するかを確かめる方法です。この例では、25%なら約2.44億円、18.9%なら2.0億円になります。「計算した成長率で初年度から複利計算し、最終年度の実績との差を示してください」と指示します。
手順4: 年ごとの推移も並べて出させる
CAGRは始点と終点しか使わないため、途中の増減が見えなくなります。年ごとの売上と前年比を表にして、CAGRと並べて出させます。増減が激しい場合は、CAGRだけで将来を予測するのは危険だと判断できます。
手順5: 目標から必要な成長率を逆算させる
計画づくりでは、目標値から必要な成長率を逆算する場面もよくあります。2025年度の2.0億円を2030年度に5.0億円にするなら、必要なCAGRは約20.1%です。
単純平均で「増加率150%÷5年=年30%必要」と計算すると、目標を過大に難しく見積もります。年30%の成長を5年続けると約7.43億円になり、目標の5.0億円を大きく超えます。逆算でも複利の式を使い、結果を複利計算で検算させます。
そのまま使えるプロンプト例
次の文面を、数字を差し替えて使えます。
- 年平均成長率は「(最終年度の値÷初年度の値)の(1÷年数)乗−1」で計算してください。増加率を年数で割る単純平均は使わないでください。
- 期間は2021年度から2025年度までの4年間です。データの件数ではなく、成長した年数で計算してください。
- 算出した成長率で初年度の値から複利計算し、最終年度の実績との差を示してください。
- 年ごとの売上と前年比を表にして、CAGRと並べてください。
- 将来予測は、CAGRで複利計算した値と、計算に使った前提をあわせて示してください。
回答を受け取ったときのチェックリスト
- 成長率の式にべき乗(n乗根)が使われているか
- 期間の年数が「終点−始点」になっているか
- 成長率で初年度から複利計算すると、実績と一致するか
- 年ごとの成長率を足して割った数字が使われていないか
- 途中で大きな減少がある年を見落としていないか
- 将来予測に使った成長率と期間が明記されているか
よくある質問
単純平均の成長率を使ってよい場面はありますか
成長率が毎年ほぼ一定で、期間が1〜2年と短い場合は、単純平均との差は小さくなります。ただし、期間が長いほど、また成長率が高いほど差は広がります。社外に出す資料や投資判断には、CAGRを使うのが安全です。
Excelで検算するにはどうすればよいですか
最終値をB2、初年の値をA2、年数をC2に入れると、「=(B2/A2)^(1/C2)-1」でCAGRを計算できます。AIが出した成長率と、この式の結果を比べると取り違えにすぐ気づけます。関数のRRIでも同じ値を求められます。
CAGRだけ見ていれば将来予測は十分ですか
十分ではありません。CAGRは始点と終点だけで決まるため、途中の急成長や急減速を反映しません。直近の前年比や、市場全体の成長率とあわせて確認し、予測は複数のシナリオで出させるのが実務的です。
まとめ
AIに年平均成長率を計算させると、式を指定しない限り、増加率を年数で割る単純平均で答えることがあります。この記事の例では、4年で2倍になった売上の成長率が、単純平均では25%、CAGRでは約18.9%です。5年後の予測は約6.10億円と約4.76億円で、1.35億円ほどずれます。
防ぐ方法は5つです。CAGRの式を書く、期間の年数を明示する、成長率で実績を再現させる、年ごとの推移も並べる、目標からの逆算も複利で行う。この5つをテンプレートに組み込めば、計画や投資判断の前に数字のずれに気づけます。
AI Scout編集部
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