AIが「見習いは労基法の対象外・修行なら長時間も可・家事の手伝いも修行の一部」と答える2026|労基法69条は名称を問わず酷使禁止・技能と無関係な作業の禁止・罰則は32条37条側
労働基準法第69条は、徒弟・見習など名称を問わず、技能の習得を理由に労働者を酷使することと、家事など技能と関係のない作業をさせることを禁じます。第9条の定義と罰則の範囲も条文で確認します。
見習いや研修生に、店の掃除や社長の家の用事を頼んでいませんか。AIに聞くと「見習いは修行中なので労働基準法の対象外です」「技能を身につけるためなら長時間働かせても問題ありません」と答えることがあります。「家事の手伝いも修行の一部です」という答えもあります。どれも労働基準法第69条の文言とは合いません。
この記事では、第69条の第1項と第2項、労働者の定義を定めた第9条、罰則の第117条から第120条を、条文の文言で確認します。強制労働の禁止は第5条・第6条の記事で、労働基準法の適用除外は第116条の記事で扱っています。
結論:条文で確認できる5つのこと
- 第69条第1項は、徒弟・見習・養成工など、名称にかかわらず「技能の習得を目的とする者であること」を理由に、労働者を酷使することを禁じています。
- 第69条第2項は、技能の習得を目的とする労働者を、家事その他技能の習得に関係のない作業に従事させることを禁じています。
- 条文の対象は「労働者」です。労働者かどうかは呼び名でなく、第9条の定義(事業に使用され、賃金を支払われる者)で判断します。
- 第69条には、本人の同意があれば許されるという例外は書かれていません。
- 第69条そのものは、罰則を定めた第117条から第120条に挙がっていません。ただし、酷使の中身が第32条(労働時間)や第37条(割増賃金)の違反に当たれば、それらの規定の罰則が問題になります。
条文を確認する
労働基準法第69条(徒弟の弊害排除)
使用者は、徒弟、見習、養成工その他名称の如何を問わず、技能の習得を目的とする者であることを理由として、労働者を酷使してはならない。
2 使用者は、技能の習得を目的とする労働者を家事その他技能の習得に関係のない作業に従事させてはならない。
第1項は「名称の如何を問わず」と書いています。「研修生」「アシスタント」「インターン」など、呼び名を変えても条文の対象から外れるわけではありません。禁じているのは、技能の習得を目的とすることを「理由として」酷使することです。
第2項は、作業の中身で線を引いています。「家事」が例に挙がり、さらに「その他技能の習得に関係のない作業」と広く書かれています。
労働基準法第9条(定義)
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
第69条は「労働者を」と書いているので、まず第9条に当たるかを確かめます。見習いという名前でも、事業に使用され賃金を支払われていれば、第9条の労働者に当たります。個別の人が労働者に当たるかは働き方の実態で判断されるため、迷う場合は労働基準監督署に確認してください。
罰則の条文(第117条〜第120条)
e-Gov法令APIで取得した第117条から第120条の本文を確認すると、違反した場合の罰則の対象として挙がっている条文の中に第69条はありません。一方で、第119条第1号には第32条(労働時間)や第37条(時間外・休日・深夜の割増賃金)が挙がっています。
(第119条・抜粋)次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
一 (略)第三十二条、第三十四条、第三十五条、第三十六条第六項、第三十七条(略)の規定に違反した者
AIが取り違えやすい5つの答え
1. 「見習いや研修生は労働者ではないので、労働基準法は関係ありません」
第69条は、徒弟や見習を「労働者」として扱う前提で書かれています。労働者かどうかは名称でなく、第9条の定義に当てはめて判断します。賃金を払って事業で働いてもらっているなら、労働基準法の各規定が適用されます。
2. 「修行中なのだから、長時間働かせても問題ありません」
第69条第1項は、技能の習得が目的であることを理由に酷使することを禁じています。労働時間の上限(第32条)や割増賃金(第37条)も、見習いだからといって外れる規定はありません。
3. 「家事や私用の手伝いも、修行の一部です」
第69条第2項は、家事その他技能の習得に関係のない作業に従事させることを禁じています。「修行の一部」という説明をしても、作業の中身が技能の習得に関係なければ第2項に当たります。
4. 「本人が納得していれば、家事を頼んでもかまいません」
第69条には、本人の同意で例外になるという文言がありません。条文は「従事させてはならない」と禁止の形で書かれています。
5. 「第69条に違反すると30万円以下の罰金です」
第117条から第120条を確認すると、第69条は罰則の対象に挙がっていません。ただし、酷使が労働時間の上限を超える労働や割増賃金の未払いになっていれば、第32条や第37条の違反として第119条の罰則が問題になります。罰則の有無と、禁止されているかどうかは別の話です。
実務で確かめる順番
- 見習い・研修生が、事業に使用され賃金を支払われているか(第9条)を確かめる
- 任せている作業を書き出し、技能の習得に関係する作業かどうかを分ける(第69条第2項)
- 家事や私用など関係のない作業があれば、指示をやめる
- 労働時間と休憩・休日、割増賃金の支払いを、ほかの労働者と同じ基準で確かめる(第32条・第34条・第35条・第37条)
- 労働者に当たるかの判断に迷う場合は、労働基準監督署か専門家に確認する
AIに確認させるときの手順
- 呼び名ではなく、賃金の有無、指示の受け方、作業の中身をそろえて渡す
- 「労働基準法第9条と第69条第1項・第2項に分けて当てはめて」と条文番号を指定する
- 「修行だから」「本人の同意があるから」という理由で結論を出していないかを確かめる
- 罰則について答えたら、第117条から第120条のどの条文に挙がっているかを聞き直す
- 出力の条文の文言を、e-Gov法令検索の原文と突き合わせる
条文の引用を確かめる作業には、ChatGPTやClaudeのような対話型AIも使えます。その場合も、条文番号と文言は原文で確認してください。
まとめ
- 徒弟・見習・養成工など、名称にかかわらず、技能の習得が目的であることを理由に労働者を酷使してはなりません(第69条第1項)。
- 技能の習得を目的とする労働者に、家事その他技能の習得に関係のない作業をさせてはなりません(第69条第2項)。
- 労働者かどうかは名称でなく、第9条の定義で判断します。
- 第69条に、本人の同意による例外は書かれていません。
- 第69条そのものは罰則の条文に挙がっていません。酷使が第32条や第37条の違反になれば、第119条の罰則が問題になります。
出典:労働基準法 第9条・第32条・第37条・第69条・第117条・第118条・第119条・第120条(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049 、e-Gov法令API v2で2026-11-03に取得)。
AI Scout編集部
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