AIが「労基署に申告すれば付加金が付く・未払い賃金はすべて倍額になる」と答える2026|労基法114条は裁判所が労働者の請求で命じる・対象は解雇予告手当・休業手当・割増賃金・年休賃金の4つ・額は未払金と同一・期限は違反時から5年(当分の間3年)
労基法114条の付加金は裁判所が労働者の請求で命じ、対象は解雇予告手当・休業手当・割増賃金・年休賃金の4つだけ。額は未払金と同一、期限は違反時から当分の間3年。AIの誤答5つを条文で正します。
「残業代を払ってもらえない」「解雇予告手当を払われないまま辞めさせられた」とAIに相談すると、「労働基準監督署に申告すれば、未払い額と同じ額の付加金も会社に払わせることができます。未払い賃金はすべて倍額になります」と返ってくることがあります。
この答えは条文と合いません。労働基準法第114条で付加金の支払を命じるのは裁判所で、労働者の請求が要件です。対象も、第20条の解雇予告手当、第26条の休業手当、第37条の割増賃金、第39条第9項の年次有給休暇の賃金の4つに限られます。請求は違反のあった時から5年以内で、第143条第2項により当分の間は3年です。
この記事では、e-Gov法令検索で取得した労働基準法第114条・第143条と、対象になる第20条・第26条・第37条・第39条第9項、平均賃金を定める第12条、時効を定める第115条の条文をもとに、AIが取り違えやすい5つの点と、AIに正しく答えさせる手順をまとめます。通達・裁判例・施行規則は確認していません。条文から当サイトが読み取った部分は、その都度「当サイトの読み」と書いています。
第114条の基本ルール
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 命じる主体 | 裁判所 | 第114条本文 |
| 手続の要件 | 労働者の請求 | 第114条本文 |
| 対象になる違反 | 第20条(解雇予告手当)、第26条(休業手当)、第37条(割増賃金)の違反と、第39条第9項の賃金(年次有給休暇の賃金)の不払い | 第114条本文 |
| 金額 | 未払金のほか、未払金と同一額の付加金 | 第114条本文 |
| 命令の性質 | 「命ずることができる」。命じなければならないとは書かれていない | 第114条本文 |
| 請求の期限 | 違反のあった時から5年以内。当分の間は3年 | 第114条ただし書・第143条第2項 |
条文の主語は裁判所です。労働基準監督署や都道府県労働局は、第114条には出てきません。付加金は、未払金そのものとは別に「これと同一額」が上乗せされるものです。
AIがよく間違える5つの答え
誤答1:「労働基準監督署に申告すれば付加金を払わせられる」
第114条の主語は「裁判所は」です。付加金を命じるのは裁判所で、労働基準監督署ではありません。さらに「労働者の請求により」と書かれているので、労働者が裁判所に請求しないかぎり付加金は生じません。
労働基準監督署への申告は、第104条が定める別の手続です。申告をきっかけに監督署が是正を求めることはあっても、第114条の付加金を命じる権限は条文上、監督署にはありません。これが当サイトの読みです。
AIが監督署を主語にするのは、「未払い賃金の相談先は労働基準監督署」という一般的な案内と、第114条の制度を混ぜているためと考えられます。回答に「裁判所」と「労働者の請求」の2語が無ければ、条文を確認していない可能性が高いです。
誤答2:「未払い賃金はすべて倍額になる」
第114条が挙げているのは、次の4つだけです。
- 第20条に違反した場合(解雇予告手当の不払い)
- 第26条に違反した場合(休業手当の不払い)
- 第37条に違反した場合(割増賃金の不払い)
- 第39条第9項の規定による賃金を支払わなかった場合(年次有給休暇の賃金の不払い)
基本給や手当の未払い、賞与の不払い、退職金の不払いは、この列挙に入っていません。たとえば月給20万円のうち5万円が未払いでも、その5万円は第114条の対象ではありません。残業をした時間の割増賃金が未払いなら、その割増賃金の部分が対象です。
「残業代」とまとめて言われる金額の中にも、所定労働時間内の賃金と、第37条の割増賃金が混ざっていることがあります。第114条の対象は、第37条の規定により支払わなければならない金額の未払分です。これは当サイトの読みです。
誤答3:「付加金は自動的に未払額と同じだけ付く」
第114条は「命ずることができる」と定めています。請求すれば必ず命じられるとは書かれていません。命じるかどうかは裁判所の判断です。
金額は「これと同一額の付加金」とあります。未払金と同じ額が条文上の付加金の額です。裁判所が同一額より少ない額を命じられるかどうかは、条文からは読めません。この点は裁判例を確認していないので、当サイトでは断定しません。
AIが「自動的に倍額」と答えるのは、「同一額」という語だけを拾い、「命ずることができる」という裁量の表現を落としているためと考えられます。
誤答4:「請求の期限は賃金と同じで、請求できる時から2年」
第114条ただし書は「この請求は、違反のあつた時から五年以内にしなければならない」と定めています。そして第143条第2項により、当分の間「五年」は「三年」と読み替えます。つまり現在の期限は、違反のあった時から3年以内です。
賃金の請求権の時効は第115条が定めています。こちらは「行使することができる時から五年間」で、第143条第3項により当分の間は3年間です(退職手当は5年間のまま)。期間はどちらも3年ですが、起算点の文言が違います。付加金は「違反のあった時」、賃金は「行使することができる時」です。
「2年」という答えは、改正前の数字です。取得した2026年7月17日施行版の第115条と第143条に、2年という数字はありません(災害補償その他の請求権の2年間は別の話です)。
誤答5:「有給休暇を取らせなかった場合も付加金の対象」
第114条が挙げているのは、「第三十九条第九項の規定による賃金を支払わなかつた使用者」です。対象は年次有給休暇を取った期間の賃金の不払いであって、年次有給休暇を与えなかったこと自体ではありません。
第39条第9項の賃金は、就業規則などの定めにより、平均賃金か、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金か、これらを基準に厚生労働省令で算定した額です。過半数労働組合または過半数代表者との書面による協定があれば、健康保険法の標準報酬月額の30分の1に相当する金額などにできます。この賃金が払われなかったときが、第114条の対象です。
年次有給休暇を与えない行為そのものの扱いは、第114条とは別の条文の問題です。この記事では罰則の条文を取得していないので、ここでは扱いません。
対象になる4つの金額の中身
| 対象 | 条文が定める金額 | 根拠 |
|---|---|---|
| 解雇予告手当 | 30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払う。1日分の平均賃金を支払った日数だけ予告日数を短縮できる | 第20条第1項・第2項 |
| 休業手当 | 使用者の責めに帰すべき事由による休業の期間中、平均賃金の100分の60以上の手当を支払う | 第26条 |
| 割増賃金 | 時間外労働・休日労働について、2割5分以上5割以下の範囲で政令が定める率以上。1か月60時間を超えた時間外労働は5割以上 | 第37条第1項 |
| 年次有給休暇の賃金 | 平均賃金、通常の賃金、または省令で算定した額。協定があれば標準報酬月額の30分の1相当額など | 第39条第9項 |
平均賃金は第12条第1項の定義によります。算定事由の発生した日以前3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割った金額です。日給や時間給の場合は、労働した日数で割った金額の100分の60を下回ってはなりません。
金額の例(当サイトの計算)
条文の数字だけを使った例です。実際の額は事案によります。
- 第37条の割増賃金の未払いが30万円あり、裁判所が同一額の付加金を命じた場合、使用者が支払う額は未払金30万円と付加金30万円の合計60万円です。
- 平均賃金が1万円の労働者を、予告なしで即日解雇し、解雇予告手当を払わなかった場合、第20条第1項の手当は30日分以上の平均賃金なので30万円以上です。裁判所が付加金を命じれば、さらに同一額が加わります。
- 平均賃金が1万円の労働者を、使用者の責めに帰すべき事由で10日間休業させ、休業手当を払わなかった場合、第26条の手当は1日あたり6,000円以上、10日で6万円以上です。付加金を命じられれば、その同一額が加わります。
どの例も、付加金が付くのは労働者が裁判所に請求し、裁判所が命じた場合だけです。期限は違反のあった時から3年以内(当分の間)です。
AIに正しく答えさせる手順
付加金についてAIに質問するときは、次の3点を指示すると条文に沿った答えになりやすくなります。
- 条文を貼る。第114条と第143条第2項の全文を質問に含めます。「誰が」「誰の請求で」「何に対して」「いくら」「いつまで」の5点を、条文の語で答えるよう求めます。
- 対象の限定を確認させる。「次の未払いのうち、第114条の対象になるものだけを選んでください」として、基本給・割増賃金・解雇予告手当・休業手当・年次有給休暇の賃金・退職金を並べます。4つだけを選べなければ、条文を読んでいません。
- 日付を入れる。「違反があったのは2026年4月1日です。第114条ただし書と第143条第2項を使って、請求の期限を日付で答えてください」と聞きます。2年と答えたら、改正前の知識です。
監督署への申告と裁判所への請求は別の手続です。AIが2つを混ぜたら、「第114条の主語は何ですか」と聞き直してください。
まとめ
- 付加金を命じるのは裁判所で、労働者の請求が要件です(第114条本文)。
- 対象は第20条の解雇予告手当、第26条の休業手当、第37条の割増賃金、第39条第9項の年次有給休暇の賃金の4つだけです(第114条本文)。
- 額は未払金と同一額で、裁判所が「命ずることができる」ものです(第114条本文)。
- 請求は違反のあった時から5年以内で、当分の間は3年以内です(第114条ただし書・第143条第2項)。
- 賃金の請求権の時効は行使できる時から5年間、当分の間は3年間で、起算点の文言が付加金と異なります(第115条・第143条第3項)。
出典:労働基準法 第12条・第20条・第26条・第37条・第39条・第114条・第115条・第143条(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049、2026年7月17日施行版)。2026年10月19日に取得しました。通達・裁判例・施行規則は確認していません。具体的な運用は、弁護士や所轄の労働基準監督署にご確認ください。
AI Scout編集部
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