AIがアドオン金利を実質年率のまま比べてしまう2026|「3%の方が安い」が実は5.68%になるのを防ぐ5つの手順
AIに分割払いとローンの見積を比べさせると、アドオン方式の3%と実質年率4.5%をそのまま比べがちです。実質5.68%で利息が約5.7万円多くなる例と防ぐ手順を解説します。
「A社の分割払いとB銀行のローン、どちらが安いですか」とAIに聞くと、見積書の金利の数字をそのまま比べて答えることがあります。A社は「金利3.0%」、B銀行は「年4.5%」です。AIは「A社の方が1.5ポイント低いので有利です」と返します。
ところが、A社の3.0%が「アドオン方式」の金利だった場合、この結論は逆になります。実質年率に直すと約5.68%で、B銀行の4.5%より高いのです。この記事では、この取り違えが起きる理由と、防ぐ5つの手順を説明します。
「3.0%」が実質年率では5.68%になる
アドオン方式とは、借りた元金に対して、返済期間の全体で利息を計算する方式です。返済が進んで元金が減っても、利息は最初の元金を基準に計算されます。一方、実質年率は、その時点で残っている元金に対する利息の割合です。
説明のための例として、次の条件を置きます。数字は計算のための仮の値で、特定の会社の条件ではありません。
- 借入額(分割払いの対象額): 300万円
- 返済期間: 3年(36回、毎月の元利均等返済)
- A社: 金利3.0%(アドオン方式)
- B銀行: 年4.5%(実質年率・元利均等返済)
- 手数料や保証料は、どちらもかからないものとします
支払総額で比べた結果
| 項目 | A社(アドオン3.0%) | B銀行(実質年率4.5%) |
|---|---|---|
| 利息の計算 | 300万円×3.0%×3年 | 残っている元金×4.5%÷12を毎月 |
| 毎月の返済額 | 約90,833円 | 約89,241円 |
| 利息の総額 | 270,000円 | 約212,668円 |
| 実質年率 | 約5.68% | 4.5% |
A社の利息は270,000円で、B銀行より約57,000円多くなります。表面の数字は1.5ポイント低いのに、実際の負担は重いということです。
アドオン方式では、返済の後半になっても最初の300万円に対して利息がかかり続けます。平均すると元金の約半分しか借りていないのに、全額分の利息を払う形になります。そのため実質年率は、アドオン金利のおよそ1.8〜1.9倍になります。例の条件では、期間を1年にすると約5.49%、5年にすると約5.64%でした。
「安い方を選んだ」つもりで逆を選ぶ
設備の購入や社用車の分割払いでは、この差が複数台・複数年で積み上がります。AIの答えをそのまま稟議書に貼ると、高い方の条件に「金利が低いため」という理由が付いて承認されます。後から気づいても、契約後に借り換えるには手間と費用がかかります。
AIが表面の金利をそのまま比べてしまう3つの理由
理由1: 見積書に計算方式が書かれていない
見積書や案内資料には「金利3.0%」「分割手数料率3.0%」とだけ書かれていることがあります。計算方式が書かれていなければ、AIはどちらの数字も同じ種類の年率だと考えて比べます。人が見ても区別がつかない書き方なので、AIだけの問題ではありません。
理由2: 「%同士は比べられる」という思い込み
単位がどちらも「%」なので、大小を比べれば答えが出るように見えます。しかし、アドオン金利と実質年率は分母が違います。前者は最初の元金、後者は残っている元金です。分母が違う割合を比べるのは、税込価格と税抜価格を比べるのと同じ種類の誤りです。
理由3: 事業者向けの取引では実質年率の表示が揃っていない
消費者向けの分割払いでは、割賦販売法により実質年率での表示が求められています。そのため、個人の買い物では比べやすい数字が並ぶことが多いです。一方、事業のための取引は同法の多くの規定の対象外で、会社ごとに表示の仕方が異なります。AIは消費者向けの常識で「表示された金利は実質年率だ」と考えがちです。
取り違えを防ぐ5つの手順
手順1: 金利を比べさせず、支払総額を比べさせる
最も確実なのは、比べる対象を金利から支払総額に変えることです。支払総額は、どの計算方式でも同じ意味を持つ数字です。次のように指示します。
2つの資金調達の条件を比べてください。
比較の基準は金利の数字ではなく「支払総額(元金+利息+手数料)」と「毎月の返済額」です。
金利の数字だけで有利・不利を判断しないでください。
見積書に毎月の返済額と回数が書かれていれば、それを掛けるだけで支払総額が出ます。計算方式が分からなくても比べられるのが、この方法の利点です。
手順2: 計算方式が分からない金利は「不明」として止めさせる
見積書に「アドオン」「実質年率」「元利均等」などの記載がない場合、AIに推測させてはいけません。「計算方式の記載がない金利は比較に使わず、不明として報告すること」と指示します。
不明と報告されたら、人が販売会社や金融機関に確認します。「この金利は実質年率ですか、アドオン方式ですか。毎月の返済額と支払総額を教えてください」と聞けば、比べるための数字がそろいます。
手順3: 毎月の返済額から実質年率を逆算させる
支払総額に加えて実質年率も知りたい場合は、毎月の返済額・回数・借入額から逆算させます。表計算ソフトのRATE関数を使うと、月あたりの利率が出ます。
=RATE(36, -90833, 3000000) * 12
例の数字では約5.68%になります。AIには「暗算せず、RATE関数の式と結果を示すこと」と指示します。式が見えていれば、借入額や回数の入れ間違いを人が確認できます。
手順4: 手数料・保証料を利息と同じ表に入れる
金利が低く見えても、事務手数料や保証料が別にかかる場合があります。たとえば例のB銀行に、借入時の手数料が5万円かかるとします。すると差は約57,000円から約7,000円まで縮まります。
指示には「利息以外に支払う費用(事務手数料・保証料・印紙代など)をすべて列挙し、支払総額に含めること。見積書に記載がない費用は『記載なし』と書くこと」と入れます。記載なしの項目が、確認すべき質問のリストになります。
手順5: 検算として「アドオン金利×2」と比べさせる
最後に、ざっくりした目安で結果を確かめます。アドオン金利の実質年率は、おおよそ2倍弱になります。3.0%なら5〜6%程度が目安です。
AIの答えで、アドオン方式の実質年率が表面の金利とほとんど同じなら、換算していない可能性が高いです。逆に2倍を大きく超えていれば、回数や借入額の入れ間違いを疑います。この検算は正確な値を出すためではなく、桁や方式の取り違えに気づくためのものです。
コピーして使えるプロンプト例
添付の2つの見積書(分割払い・ローン)を比べて、どちらが有利か判断してください。
# ルール
1. 比較の基準は「支払総額」と「毎月の返済額」。金利の数字だけで判断しない。
2. 各金利について、計算方式(実質年率/アドオン方式/その他)を見積書の記載から特定する。
記載がなければ「不明」とし、推測で決めない。
3. 実質年率は、毎月の返済額・回数・借入額から RATE 関数で逆算し、式と結果を示す。
4. 利息以外の費用(事務手数料・保証料・印紙代など)を列挙し、支払総額に含める。
記載がない費用は「記載なし」と書く。
5. 検算: アドオン方式の実質年率が、表面の金利の1.5〜2倍の範囲に入っているか確認する。
範囲外なら入力値を見直す。
# 出力
- 比較表(借入額・回数・毎月の返済額・利息総額・その他費用・支払総額・実質年率)
- 有利な方と、その差額
- 販売会社・金融機関に確認すべき質問のリスト
会計ソフトやAIアシスタントと組み合わせる
見積書のPDFから数字を読み取る作業は、ChatGPTやClaudeなどのAIアシスタントが得意です。ただし、読み取った数字で計算する部分は、表計算ソフトの関数に任せる方が確実です。AIには「数字の抜き出し」と「式の組み立て」を担当させ、計算結果は関数で出すと分担がはっきりします。
支払いの予定を資金繰りに反映させるなら、経理向けのツールも役立ちます。比べたい場合はAI会計・財務ツールの比較を参考にしてください。
お金の数字をAIに扱わせるときは、ほかにも似た取り違えが起きます。見積の税込・税抜の取り違えや、%とポイントの取り違えもあわせて確認しておくと安心です。
まとめ
AIに分割払いとローンの条件を比べさせると、アドオン方式の金利と実質年率をそのまま比べてしまうことがあります。本記事の例では、アドオン3.0%は実質年率で約5.68%になり、実質年率4.5%のローンより利息が約57,000円多くなりました。
防ぐ方法は5つです。金利でなく支払総額で比べる、計算方式が不明な金利は止めさせる、RATE関数で実質年率を逆算させる、手数料も同じ表に入れる、2倍弱の目安で検算させる、の5つです。見積書の「%」は、分母が何かを確かめてから比べるようにしましょう。
AI Scout編集部
AIツール・SaaS専門のレビューチーム。最新のAI技術動向を追い、実際にツールを使用した上で、正確で信頼性の高い情報を提供しています。